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【インタビュー】身体の織りなすドラマを楽しんでほしい/コンドルズ 石渕聡

Posted by: sweetsholic
掲載日: Dec 1st, 2014. 更新日: Oct 27th, 2015
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【インタビュー】「身体の織りなすドラマを楽しんでほしい」/コンドルズ 石渕聡
©HARU

トレードマークの学ラン姿で、華麗なパフォーマンスを繰り広げるダンスカンパニー「コンドルズ」。踊りや芝居に始まり「楽しいことならなんでもあり」の舞台は、スピード感と面白さに溢れている。芸術的でありながら、お笑いにも似た雰囲気を感じるのは、なぜだろう?

コンドルズの活動は舞台にとどまらず、NHK連続テレビ小説「てっぱん」を始め、テレビ番組やコマーシャルの振り付け、NHK総合「サラリーマンNEO」内のユニークな「サラリーマン体操」等でもお馴染だ。結成から18年を迎えた今年、1年間という期間限定でフランスに長期滞在中のメンバー・石渕聡さんにお話を伺った。


フランスでの活動

ーなぜフランスに滞在しようと思われたのですか?

実は2足のわらじを履いていて、コンドルズのほかに大学の准教授として教鞭をとっています。所属大学からの海外研究員という形で今年の4月にフランスへやってきました。現在は南西部トゥールーズにあるダンスの総合機関「CDC(Centre de Développement Chorégraphique)」で、ダンスの研究をしています。フランスには13年前に留学経験があり、今回は研究のために来ました。現在はコンドルズ休暇期間。来年4月に復帰します!

【インタビュー】「身体の織りなすドラマを楽しんでほしい」/コンドルズ 石渕聡

ーダンスの研究対象として、フランスを選んだ理由は?

現象学の発展に貢献した哲学者メルロ・ポンティなど、身体の現象学はフランスを発祥とするものです。哲学を始め、記号論に映画など、フランスには学ぶべきものが溢れている。と、まぁ真面目な理由でこの国を研究対象として選びました。

ーフランス滞在してみて、現地の生活はいかがですか?

パリと違ってトゥールーズには日本人が少ないせいか、日本人同士の交流がとても盛んです。現地で活躍する「日本人ダンサーの会」や、さまざまな分野の人が集まる「日本人男性の会」なんていうのもあったりして、意見交換を楽しんでいますよ。

また、夫婦で日本人会にも参加しています。日本人会では、日本に興味のあるフランス人を対象に、それぞれの専門家が「着付け」「お茶」「書道」「日本語教室」などの日本文化を教えています。国内に住んでいたら伝統文化を意識することは少ないかもしれないけれど、日本を離れたからこそ自分たちのアイデンティティを大切にしたい、という気持ちが強くなるのかもしれませんね。

珍しさと勢いだけ!? コンドルズ誕生秘話

ーコンドルズ結成のきっかけを教えてください。

あるとき、主宰の近藤良平が、神楽坂にある「セッションハウス」という劇場から企画をもらいました。その企画というのが「男の子だけで踊ってみよう!」というもの。近藤も僕も、ほかのメンバーもその当時はまだ学生だったこともあり、※メンバー6人で文化祭的なノリで映像とダンスの舞台を仕立てたんです。※この6人は今もコンドルズのコアメンバーとして活躍。

1回だけだと思ったら、追加公演がその日に決まったというからビックリだったよね。評判を呼び、セッションハウス基盤でダンスをやり始めた。それから2〜3年間はカンパニー名もないまま、活動していました。

学ランを衣装に決めたのも「揃いの衣装がないから学ランとももひきでいいか!」という、ノリですよ。当時はメンバーのほとんどが20代だったから、まだ青春が抜けきれていないようなものもあって。今思えば、学ランは青春時代の象徴でもあったのかも。

【インタビュー】「身体の織りなすドラマを楽しんでほしい」/コンドルズ 石渕聡
©HARU

「なんでもあり」が楽しい、コンドルズの舞台

ーコンドルズは独自性のある喜劇的なパフォーマンスが魅力ですよね。どのような経緯で、今のスタイルを確立されたのですか?

当時は芸術としてのダンスというと敷居が高かったのですが、コンドルズは一番最初の舞台から「笑い」にフォーカスを当てていました。そう、文化祭に近いイメージです。僕らの舞台は、身体を使って人を笑わせるという、いわばダンス界のお笑いですね。「身体の織りなすドラマを楽しんでもらいたい」という結成当時のスタイルは今もブレていませんよ。

ー海外公演をするようになった経緯は?

結成から4年後に、初めての海外公演「ジャパニーズ・コンテンポラリーダンス・ショウケース」のオファーをいただきました。舞台は米ニューヨーク、2000年1月のことです。終演前に多くの会社から、なんと二桁に近いオファーをいただくことができました。この経験から「コンドルズは海外でも受ける!」と確信、これをきっかけに海外ツアーが毎年組まれるようになりました。

国内では毎年、北から南まで同じ場所で公演を行うことが多いのですが、海外は毎年違う国に行くことが多いですね。南米、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、東南アジア、アフリカの国々を合わせると30カ国以上は行っているような気がします。

ー海外のお客さんの反応はいかがですか?

どこの国もカーテンコール時の大歓声に始まり、お祭りみたいな感じです。でもイギリスだけはお客さんの反応が違いました。観客はクスクス笑いでアンコールもない。「ウケなかったのかな」「微妙だったかな」と思いきや、すごくウケていたみたい! イギリス人は礼儀正しいんですかね?

ー日本独特の衣装に、海外のお客さんはビックリしませんか?

「学ラン」という日本的な衣装に関しては、マンガやアニメが「ジャパニーズカルチャー」として世界に知られていることもあり、すんなり受け入れてもらえますよ。学ラン姿は「ジャパニーズ・スクール・ユニフォーム」ですもんね。

「カラダを動かすことの楽しさ」を知ってもらいたい

ーコンドルズの活動のほかに、大東文化大学で教鞭をとられているそうですね。やはりダンスに関する授業を担当されているのですか?

文学部教育学科の「身体表現」という分野を担当しています。小学校や幼稚園の先生、保育士を養成する学科で、ダンス一般を教えています。普段の生活のなかでは、踊ることってあまりないですよね? 学生には身体の表現性や動かすことの楽しさを知ってもらうため、振り付けを渡して、授業時間を目一杯使って踊ってもらったりしていますよ。

顔も体もみんな生まれ持ったものは変えられない、そこがコンプレックスだったりもしますよね。でも、さまざまなアプローチを通して身体のコンプレックスが喜びに変わったりもする。そういった意味でも、身体表現は面白い研究テーマだと思います。

【インタビュー】「身体の織りなすドラマを楽しんでほしい」/コンドルズ 石渕聡
インタビューに答えながら、身体表現(ダンス)を披露してくれた石渕さん

ー思い出に残る授業はありますか?

ある年の授業で、車いすの学生が僕の授業を履修したことがあったんです。その年は非常に濃い1年でしたね。身体を動かすことに恥ずかしさを感じる学生が多い中、その学生は「自分に出来ないことに挑戦するつもりでこの授業を受けた」と、4月の初めからやるき満々。

彼の影響で、ほかの学生たちの意識が変わったんです。車いすの彼が踊りやすい振り付けをみんなで考えたり、全員がダンスに慣れてきた後期の授業になると、周囲の学生が(車いすを降りた)彼を抱える振り付けなんかにも積極的に挑戦してくれて、連帯感を感じましたね。体をもつことは自由不自由関係ないという、精神的なバリアフリーがみんなに訪れた。印象に残っている授業のひとつです。

ー作曲や振り付けのインスピレーションになっているものは?

振りを考えたり、曲を書いたり、論文を書いたりするのって、僕のなかでは同じ感覚なんですよね。いくつかの情報を集めて作業を進めていくうちに、「自分の納得いくような形にできた!」となる瞬間があるんです。パズルを組み立てる感覚とでも言いましょうか。パズルやトランプタワーが完成したときの達成感、まさにそんな感じです。

作曲のときのインスピレーションは楽器。例えばギターで作曲する場合、自分が作るものは全部このギターの中に入っている気がします。もちろん、日常の出来事も潜在的にはインスピレーションになっているのかもしれませんが。

【インタビュー】「身体の織りなすドラマを楽しんでほしい」/コンドルズ 石渕聡

コンドルズのバンドプロジェクト「ストライク」。石渕さんはギタリスト兼バンドマスターとして活躍 ©HARU

「個性」を培うのに必要な経験

ーコンドルズはひとりひとりが個性の塊のように見えるのですが、もともとみなさん個性的な方々だったのですか?

僕らは「すごい個性的な集団」と言われることが多いんだけど、最初はだれも自分の個性を知らなかったように思います。舞台など人前に出る仕事を通して、「個性を知る」経験をたくさんしてきた。こういった経験を通して、自分の魅せ方や役割がひとりひとり分かるようになってきたんじゃないかな。

ー自分の個性、どうすれば開花するのでしょう?

外国に住んでいる日本人って、個性的な人が多いような気がしませんか?日本では当たり前のことが海外では通じない。言語や習慣も違うでしょう。そうするとやっぱりみなさん、苦労するんですよね。こういった旅先(定住となると、すごく長い旅になってしまいますけど)での経験を積むことで、個性というか人間的な深さ、強さが生まれるのではないかと感じますね。

旅の醍醐味は観光だけじゃない

ー石渕さんにとっての「旅」とは?

そこに住んでいる人や祖国を同じくする人たちと触れ合うこと。外国に住んでいる日本人は面白い人が多いような気がするんですよ。「外国人として外国に住む」というのは魅力的に見えるけれど、結構大変なことも多いんだなと言うことに気づかされるというか。国際結婚などを機に外国に住むという決断をするのは、スケールのデカい、長い旅ですよね。

ー旅先でおすすめの過ごし方はありますか?

海外での釣りや自然体験は、さまざまな発見があって楽しいですよ!僕自身、それほど釣りに興味があったわけではないのだけれど、家の裏の湖で釣りをし始めたら楽しくて、※世界遺産のミディ運河で釣りをし始めた。フナみたいな魚が釣れるんだけど、日本のものとはなんか違う。フナの顔が外国人みたい!というような、面白い発見をしました。観光もいいけど、野山に住んでいる動物や魚とか、日本との違いを見てみるのも楽しいものですよ。

※17世紀に建設された地中海と大西洋を結ぶ全長240kmに渡る運河。トゥールーズを流れる世界遺産として親しまれている。

今後の活動について

ーフランスで「盆踊り」を企画されているそうですね。来年3月1日に開催予定の開催のトゥールーズ盆踊り大会について教えてください。

コンドルズでは、主宰の近藤良平が豊島区民ということもあり、池袋の盆踊り「にゅ〜盆踊り」を2010年よりお手伝いさせていただいています。トゥールーズ在住の日本人会の要望で、当地でも盆踊りをプロデュースしないかという話になり、日本人会のみなさんの協力のもと、和太鼓を日本から購入したり、トゥールーズ在住の日本人レコーディング技師と話を進めたりと、来年に向けて活動しています。

曲は僕が作曲、踊りはトゥールーズで活動する「日本人ダンサーの会」のメンバーが手伝ってくれるということで、ここでも祖国を同じくするもの同士、団結力を感じます。うれしいですね! 僕が帰ったあとも毎年、トゥールーズで盆踊りが行われるといいな。

ー来年以降、コンドルズメンバーとしての目標は?

充電期間中にインプットした情報を、舞台やそのほかの場面でアウトプットすることです。コンドルズへの復帰が今から楽しみです!

始終、笑顔を絶やさずにコンドルズや自身の活動内容について語ってくれた石渕さん。ダンスに対する理知的アプローチと惜しみない努力があるからこそ、観る人を惹き付ける舞台や作品が生まれるのだろう。充電期間を経てパワーアップした石渕さんのコンドルズでの活躍が楽しみだ。

【インタビュー】「身体の織りなすドラマを楽しんでほしい」/コンドルズ 石渕聡

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「石渕聡」プロフィール
大東文化大学准教授。文学博士。96年の立ち上げからコンドルズ参戦。コンドルズバンドプロジェクト「ストライク」のギタリスト兼バンマス。超濃厚なダンスで魅了する多彩なパフォーマー、作曲担当。著書「冒険する身体」は専門書としては異例のヒット。振付家としてマルハニチロ「ゼリーで0」TVCMなども手がける。NHK総合「サラリーマンNEO」内「テレビサラリーマン体操」のピアニスト。

[コンドルズ公式サイト]
[ストライク公式サイト]

sweetsholic

sweetsholic ライター
海外を放浪しながら気ままな人生を謳歌しているフリーライター、パティシエ。世界で経験した文化や学んだお料理などをみなさまと共有できればと思っています。 世界の文化とスイーツ、地中海料理が大好き。寄稿媒体:Pouch、ANGIEなど

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