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連載旅小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話/人生のレールを外れると、何が始まる?

Aug 3rd, 2016



私はニューヨークなんか、興味がなかった。

なのに、私は今ニューヨーク行きの機上の人。成田から飛び立って、ニューヨークへ向かっているのよね。

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話
(C) Hideyuki Tatebayashi

私のこと

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話

私のことを紹介させてもらおうかしら。
私の名前は、白雪ひとみ(しらゆきひとみ)。まるで、漫画の主人公みたいな名前よね。友人や周りの人は、私は「ヒメ」と呼ぶ。苗字がなんたって白雪でしょ。名前についてからかわれるのは、もう慣れた。だって、32年間もこの名前をやっているわけだしね。

趣味は国内の温泉巡り。日本の温泉って最高。旅行先のB級グルメは必ずチェックしてから、出かけるわよ。だって、旅の楽しみは、未知の美味しいものが大きな要素だもの。TABIZINEも、よくチェックしているわね。

身長は159㎝。体重は内緒。最近ヨガのクラスをサボリがちだから、ウエスト周りが気になっているのよね。え、あなたもそうですって? フフ。

ニューヨークへ行くきっかけは、10年間勤務した会社を希望退職したから。所属部署の担当取引先が、ライバル会社と吸収合併してしまい、私の部署がなくなってしまったの。ショックだった。希望退職または子会社への配置転換を持ちかけられて、希望退職を取った。

そんな時、学生時代の友人鈴子から、「時間があるなら、すぐ来て」 とニューヨークから連絡が来たの。彼女は商社マンと結婚して、ニューヨークで駐在妻。

まあ、退職金ももらったし、ちょっと人生の休暇をとっても良いかなと思ったのがいきさつ。

ニューヨークと東京ってどう違うのよ?

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話
西新宿高層ビル

皆はニューヨーク、ニューヨークっていうけど、私は特に魅力を感じなかった。摩天楼って、高層ビルが並んでいることでしょ。
丸の内や西新宿のオフィス街とどう違うのかしらね。しかも、エンパイア・ステート・ビルディング(The Empire State Building)って、ドコモビルとそっくりじゃない? 

ニューヨークに到着

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話

そんなことを考えていたら、飛行機はニューヨークに着陸。やれやれ、14時間も飛行機に乗ったのは初めて。というより、日本から出たことがないし。ニューヨークって、いったいどんなところかしらね。

飛行機から降りた途端感じたのは、日本では嗅いだことがない洗剤の匂い。そして、日本人がつけるのとは違った種類の香水の匂い。世界各国から集まっているさまざまな国の人たち。ザワザワした雰囲気が、何故かホッとする。日本って何もかも整然としすぎて、息苦しい時があるのよね。部屋だって片付き過ぎていると、落ち着かないじゃない?

ニューヨークひとり暮らし


連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話
【庶民のNY生活 並みの下 クイーンズ区】 (C) Hideyuki Tatebayashi

JFK空港からタクシーに乗って、荷物を下ろす。

友人の鈴子は、彼女のアパートに泊まるように勧めてくれたのだけれど、今回は1か月の予定だから居候でもなく、ホテルでもなく、部屋を借りたの。鈴子から教わって、日本のNY情報掲示板で探して。貸してくれる人が夏の間日本に一時帰国するので、1か月間ここが私のニューヨークのお城。予算の都合上、クイーンズという田舎になったけど、鈴子の住むマンハッタンまでは、30分ほどで行けるらしい。

私が部屋を探したのは、NYの代表的な掲示板 MixB, Add 7, Info Freshの3つ。あなたもNYに行く予定があるなら、見てみてね。

短いけれど、はじめての海外生活。いつもの人生のレールを外れると、何が始まるかしら? 窓を開けたら、音楽が聞こえてきた。
今の私の気持ちにピッタリだった。

Welcome to New York” テイラー・スウィフト 

荷物をアパートの床にはじめて下ろした時、
忘れたい過去は、引き出しの奥に仕舞いこんだわ
ここにいる誰もが、昔の自分とは違う人生を歩んでいる
なりたい自分になれる街
男の子も、女の子も、誰でもよ

NYへようこそ
ずっとあなたを待っていたのよ
NYへようこそ
NYへようこそ
NYへようこそ
ずっとあなたを待っていたのよ
NYへようこそ
NYへようこそ

(意訳 青山沙羅)

When we first dropped our bags on apartment floors 

Took our broken hearts,
 put them in a drawer 

Everybody here was someone else before 

And you can want who you want 

Boys and boys and girls and girls

Welcome to New York 

It’s been waiting for you 

Welcome to New York
Welcome to New York 

Welcome to New York 

It’s been waiting for you 

Welcome to New York 

Welcome to New York


地下鉄に乗ってみる

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話
(C) Hideyuki Tatebayashi

地下鉄(MTA)で鈴子の住むミッドタウンまで、向かった。何もかもが新鮮で、ちょっとドキドキ。路線は色分けされていて、アップタウンかダウンタウンかを気をつければ良いので、結構分かりやすいかも。この地下鉄の車両に、世界中の人種を詰め込んだように、色んな国の人が母国語を話している。東京じゃ見られない光景ね。車両内の広告を見たり、「あの人はどこの国の人かしら」なんて考えていたら、うっかり乗り過ごすところだった。

降りようとした時、若い男性に切り取ったスケッチブックの紙を手渡されたの。「これ、君だよ」って。

これが私?

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話

その紙には、なんと私らしき女性の顔が描かれていたの。ビックリした。いつの間に描いていたの? アートスクールの学生かアーティストで、地下鉄の乗客をスケッチしていたのね。はじめての地下鉄に興味津々で、全然気がつかなかった。

降りたホームでしみじみ見てみたら、そのスケッチは、本物の私よりキレイめに、生き生きと描かれていたの。嬉しかった。まだまだ私も、捨てたもんじゃないわって感じ。東京では、通勤電車の窓ガラスに映る自分の疲れた顔を見て、自己嫌悪を感じることが多かったのに。

彼はそのまま地下鉄に乗って行ってしまい、顔もよく覚えていないけど、ニューヨーカーってなんとも粋なことをするものね。

サイン入りのスケッチの代金を請求するわけでもなく、ナンパ目的でもなく、「大事にしてね」とアッサリしていたし。

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第1話
(C) Hideyuki Tatebayashi

今までは、ニューヨークに興味がなかったけど、なんだかもっと面白いことが始まりそうな予感がする。




[Photo by Hideyuki Tatebayashi]

※無断で画像を転載・使用することを固くお断りします。Do not use images without permission.

(注)この物語は、フィクションです。

青山 沙羅

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