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連載旅小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第3話/人間も愛しかたも一色じゃない

Posted by: 青山 沙羅
掲載日: Aug 17th, 2016. 更新日: Sep 12th, 2016
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私はニューヨークなんか、興味がなかった。

なのに、私はニューヨークを歩き回っている。そして、ニューヨーカー(男性)とお茶なんかしちゃっている。自分でも信じられないけど。

私の名前は、白雪ひとみ(しらゆきひとみ)。通称「ヒメ」。


代官山にあるようなカフェで、ニューヨーカーとデート

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第3話
(C) Hideyuki Tatebayashi

私はクイーンズ区のアストリアというエリアに来ているの。ここはマンハッタンのミッドタウンからイーストリバーを越えて、地下鉄で5分くらいの場所。元々は、ギリシャ人が多かったみたい。治安の良さから、今は日本人も多くここに住んでいるんですって。このアストリアのあたりは、ショップやレストランもずらっと並んでいるし、クイーンズ区で一番の都会。雰囲気は東京の代官山に似ているかしら。ここで何をしているのかというと、ニューヨーカーとお茶しているの。

繊細なフレンチ・トーストとクールジャパンな彼

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第3話
(C) Hideyuki Tatebayashi

あなたは私が前回地下鉄構内でマッチメイカー(恋人紹介業)に声をかけられたのを覚えているかしら? ニューヨークは中国系アメリカ人や日系アメリカ人が増加、アジア人の恋人依頼が多くなっていて、私が恋人候補としてお目に留まったらしい。それで今日は日本人女性を希望しているアメリカ人の彼とマッチング(デート)しているわけ。

「ヒメさんは、温泉旅行が好きなんですね、ナイスだなあ」私が英語に堪能なわけではなく、彼が日本語に堪能なの。さっきから、会話は日本語。

彼の名前はジェイ。髪は金髪じゃないけど、茶色でクリクリの巻き毛。身長は170㎝くらい。アメリカ人男性にしては小柄かもね。

「僕は日本が好きで。食べ物は美味しいし、景色は美しいし」
「趣味はカラオケ、得意なのは日本のアニメソング。好きな食べものはラーメン。最近ニューヨークにラーメン屋が増えたので、食べ歩きしているんです。今度一緒に行きましょう」
「日本のアニメは素晴らしい。宮崎駿のアニメは最高、全部持っています。日本で行きたいのは、渋谷の交差点と秋葉原」

日本へ一度も行ったことがないらしいのに、流暢な日本語を話すのは、大学で日本語を習ったらしい。分厚いレンズの眼鏡をかけた彼は、まさに日本的な「オタク」だ。彼の会話に頷きながら、日本の代官山にあるようなカフェの、日本的なフレンチ・トーストをつついていた。

ニューヨークで一番アツい日

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第3話
(C) Hideyuki Tatebayashi

「・・・・というワケなのよ」

鈴子と私はフラットアイアン地区を歩いていた。薄べったい三角形のビル、フラットアイアン・ビルディング(Flatiron Building)がランドマークだ。

「へええ、紹介されたのはそっち系だったのね。そういえばニューヨークでもコスプレ大会ってあるらしくて、コスプレ集団を見かけたことがある」
「そう、彼も毎回出ているみたい。でも私、オタク系は苦手なのよね」
「得意な人は限られるかもねえ」

クールジャパンな彼の話をしていると、通りの方からワーッと叫ぶような声がした。向かい側から、虹色の旗を持った人が走ってくる。

「あ、今日はゲイパレードの日ね。6月の最終日曜日だもの。5番街へ行ってみましょう」

愛する自由を守るために

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第3話
(C) Hideyuki Tatebayashi

鈴子によると、毎年6月の最終日曜日は、通称ゲイパレード正式にはニューヨーク市プライド(NYC Pride)。LGBT(同性愛者、バイセクシャル、トランスジェンダー)が、愛する自由に誇り(プライド)を持って、5番街を行進する日。レインボーフラッグ(虹色の旗)は、LGBTのシンボル。

「ニューヨークって、ハロウィンやら、聖パトリックディやら、コロンバスディやら一年中色々なパレードがあるけれど、一番派手で盛り上がるのはこのゲイパレードよ」

確かにこんなパレード見たことない。老若男女、犬まで、虹色のファッションで、登場している。しかも、皆音楽に合わせて踊っている。パレード見物している側もノリノリで、パレードに手を振り、知人を見かけると飛び出していく人もいる。

山車の上では、裸に近い格好のマッチョな男性たちが、嬉しそうに踊りまくっている。今日は、自分たちが主役なのだと胸を張って。テンションはマックスだ。

「あれ?」

その中で目に留まったのは、もしかして・・・。

人間も愛しかたも一色じゃない。七色の虹のように、バリエーションがあるもの

連載小説「私はニューヨークなんか、興味がなかった」第3話
(C) Hideyuki Tatebayashi

山車の上でマイケル・ジャクソンの曲に合わせて、アジア系の男性がノリノリで踊っていた。
目を凝らして見ていると、鈴子も気がついた。
二人で、顔を見合わせた。「もしかして彼は・・・?」

相手がこちらに気がついて、手を振った。つられて、鈴子と私も手を振り返した。
彼は嬉しそうに、隣の男性と抱き合い、レインボーフラッグを頭上に掲げた。

その彼は、先日鈴子に紹介された、鈴木亮平似の商社マンだった。

なるほど、いろいろあるから、ニューヨークも人生も面白いってことね。

[Photo by Hideyuki Tatebayashi]

※無断で画像を転載・使用することを固くお断りします。Do not use images without permission.

(注)この物語は、フィクションです。

青山 沙羅

sara-aoyama ライター
はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。


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