フランスのブルターニュにはフジェールという小さな街があります。日本ではあまり聞きなれないこのフジェールはかつて独立王国であったブルターニュの国境の街。外敵の侵入を防ぐ目的のためフジェール城が建設されました。現在はほぼ破壊されてしまった廃墟のフジェール城には、不思議な魅力があります。そんなフジェール城を紹介します。
歴史の長いお城
フジェール城は11世紀に建設が始まりました。日本の11世紀というと、平安時代後期頃に当たりますね。そんな遠い昔に建てられたお城がここフジェールには残っているのです。フジェール城は16世紀にブルターニュ王国がフランスに合併されるまで、国境を守りました。数々の戦争の中で、フジェール城の内部は破壊されてしまいましたが、壁や塔などは当時のまま現在まで存在し続けています。
圧倒される外壁
フジェール城の外壁は石で造られています。歴史を感じさせられる煤けた外壁は、当時のような戦のない現代でも、訪れるものを圧倒する存在感。少し足がすくんでしまいそうになります。このような外壁を前に、敵はどのような思いで戦に挑んだのでしょうか。
外壁の上に登ると
城の敷地内に入ると、直ぐに外壁の上に登ることができます。印象的だったのが、至る所にある、敵を観察する穴やくり抜かれたようなスペース。これは外敵を観察するためのものです。ここから外を見てみると、今の喉かな田舎の景色が広がります。当時は、緊張が張り詰めた中で、ここから外敵が来るのを見張っていたのでしょう。
塔から眺める風景
城内にいると、破壊されていた部分が目に入り、どこか廃墟特有の寂しさが感じられますが、塔に登ると、街並みが目の前に広がり、また違った印象をもたらせてくれます。中世以降変わらないこのフジェール城ですが、ここから眺める景色は変わっていきました。時が止まった廃墟と変わり続ける外の世界のギャップが感じられます。
廃墟の中で感じる中世
フランスの城といえば華やかですが、フジェール城は質素。破壊されてしまった部分のお城にはもっと華やかな世界があったのかもしれませんが、現在ここに残るのは、がっしりとした石造りの機能的なお城。そしてこの城内では、中世の騎士の姿が自然と思い描かれます。勿論、当時のような戦の中に身を置くような緊張感は全くありません。しかし、何かの拍子に中世の騎士が見えてしまうのではないかというほど、時の流れは昔のままのような気がするのです。
フジェール城は、廃墟になってしまったせいで、人の手は加わらず、時が止まったまま。数あるフランスの中世のスポットの中でも、中世という時代が身近に肌で感じられる場所です。
[All photos by Nanako Kitagawa]
[france.fr]
参照文献
[地球の歩き方 フランス 2016~2017]
Nanako Kitagawa ライター
2007年よりフランス在住。パリ第八大学大学院を卒業。専攻は文化コミュニケーション。趣味は映画、読書、写真、雑貨、料理、街歩き、カフェ巡り。初めて訪れたその日からすっかりパリの街に魅了され、今日も旅をするようにパリの街を歩き回る。
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