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連載小説「迷える女子に、幸せ行きの切符を」第4話/幸せ行きの切符

Feb 9th, 2017

連載小説「迷える女子に、幸せ行きの切符を」第4話/幸せ行きの切符

<過去のお話はこちらから>
第1話/一人旅ってありかも?
第2話/人生への挑戦、してる?
第3話/幸せを共有したい人

連載小説「迷える女子に、幸せ行きの切符を」第4話/幸せ行きの切符

台湾2日目。AM11:00


「こんにちはー」と元気よくドアを開けてここが日本ではなかったことに気づき少し恥ずかしくなったが、そこには誰もいなかったので千晴は少しほっとした。声が聞こえたのか、奥から少し太った背の低い40代後半ほどに見えるおばさんが出てきた。

「ニホンジン? マッサージ? プランは?」と質問を投げかけられ、たじろいでいると「エランデネ」とメニュー表を渡された。ここも真由のおすすめのお店の1つ。真由に頼りっぱなしなようで気が引けるけれど、「地元の人が愛するお店で日本語もわかるおばちゃんがいるから」と勧められたら断る理由はなかった。

迷った末に「1時間750元、足マッサージ」を選ぶと、そのまま更衣室に案内され短パンに履き替えさせられた。フロントのある部屋に戻ると、壁に沿って並んだ大きな椅子の1つに案内され、座ると同時に足元に、暖かい足湯が用意されていた。どうやらマッサージの前に足湯をしてもらえるらしい。

連載小説「迷える女子に、幸せ行きの切符を」第4話/幸せ行きの切符
初めての一人旅に緊張しているせいもあり、昨夜は九份の世界に包まれたまま本当によく眠った。思ったよりも早く眼が覚めたので、「台湾の朝ごはんは美味しくて格安! ぜひ一度試してみて」とガイドブックで読んでいたのを思い出し、”鹹豆漿(シェントウジャン)”という豆乳にパンが入ったような見た目の朝ごはんを一度試しておきたくなった。まだ眠れそうだったけれど、せっかくなのでホテルのスタッフに朝ごはんにおすすめの、最寄りのお店を聞いて食べに出かけた後、このマッサージ店にやってきた。

真由が言っていた「日本語がわかるおばちゃん」は正しくは「一方的なすごく限られた日本語が話せるおばちゃん」だったけれど、「アシ、ココ」と促されてお湯に足を浸けるとお湯がとても気持ち良くて、なんだかイイ香がするし、起きてごはんを食べたばかりなのにまた眠ってしまいそうになった。

10分ほど経ったあたりで足湯から出すように言われ、いよいよマッサージが始まった。日本にいてもマッサージに行くのは年に数えるほどで、場所によっては痛いながらもこんなに気持ちいいなら日本でも行きたい・・・と、うとうとしている間にお店に一人の女性が入ってきた。

年は60を過ぎている頃だろうか。白髪に少し黒が混ざった髪はきちんと整えられていて気品のある女性だった。どうやら彼女と、限られた日本語が話せるおばちゃんとは知り合いらしく、台湾語でいくつか会話をした後、メニュー表を見る間もなく今度は奥からおじさんが顔を出した。千晴はぼんやりとその様子を見ながら「常連さんなのかな? 台湾の方かな?」と考えていた時、その女性と目が合ってしまい思わず軽く頭を下げた。

女性はにこっと微笑み、おじさんに連れられて千晴の隣を1つ空けて座り、千晴と同じように同じように足湯を始めた。さぁまた夢に戻るか・・・と思っていた千晴だったが「・・・ですか?」との声が隣から聞こえて我に返った。

台湾2日目。AM11:20

連載小説「迷える女子に、幸せ行きの切符を」第4話/幸せ行きの切符
思わず女性の方を見ると「日本人の方ですか?」とゆっくりと聞かれて、その女性が日本人だとわかった。異国の地で日本人に話しかけられるとは思っていなかったので、「はい、そうです。初めての台湾なんです」と聞かれてもないことまで口にしてしまった。

「そう。ここはステキな街よ。楽しんで行ってね」と言われ、初の一人旅に選んだ街に満足していた千晴は嬉しくなった。「そうですよね、本当にステキな街だと思います」と答えながら、初対面の相手に根掘り葉掘り聞くのは失礼な気がしたけれど興味が湧いた。

「ここに住んでいらっしゃるんですか?」

「そうね。もう40年近くになるかしら」
「そんなに?! どうして台湾へ?」
退職後のシニア世代の海外移住はよく聞くけれど、40年も前となるとそういう事情ではなさそうだ。少し間があった。

「好きな人を追ってきたの」

上品さを保ちながらも女性は顔をしわくちゃにさせて子供のような笑顔を見せた。

「えっ・・・」
驚いた表情を隠せない千晴を見ながらも女性は続けた。
「そうよね、いつも驚かれるわ。日本で出会った台湾人の男性をすごくすごく好きになって彼が台湾に帰国する時に、家族も友達も全部捨てて付いてきたの。20歳そこそこだったから、もう40年以上にもなるのね」
昔を懐かしがりながらいたずらっぽく笑う女性の話に付いていけない千晴であったが、マッサージをしているおじさんは既にこの話を知っていたのか日本語が通じているのかわからないけれど、うんうんと何度も首を縦に振っているので、驚きながらも信じることにした。

「それで、あなたはどうして台湾へ?」

今度は千晴が答える番だった。

(次のページへ続く)

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栢原 陽子

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