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ソロモン諸島駐在妻がこの国について学んだ、悟った、諦めたこと

Posted by: 玉川とき
掲載日: May 21st, 2017. 更新日: Jun 8th, 2017
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住み慣れた土地を離れ新たな場所で生活をすることは、それが日本国内の移動であってもカルチャーショックを経験するものです。まして海外、更に、いわゆる「発展途上国」となると、いよいよ日本との共通点を探すことのほうが難しくなります。

ソロモン諸島という南の島の途上国で暮らしてもうすぐ1年になる筆者が、この国での生活を通じて得た新たな人生訓を紹介しようと思います。
海外生活って楽しいことばかりじゃない。そんなの当たり前の事なんです。


「なんとかなるさ」にも限界があることを学んだ

ソロモン諸島駐在妻がこの国について学んだ、悟った、諦めたこと

夫の仕事の都合でソロモン諸島へ引っ越しが決まった時、筆者はわりと楽観的でした。この国へ来る前はオーストラリアで働いており、その前はイギリスで学生をしていたので、国レベルでの引っ越し自体に強烈な抵抗はなかったのです。「期間限定だし、全く新しい生活も悪くないだろう。ま、なんとかなるさ」。そう思って飛行機に乗ったのでした。

ソロモン諸島生活が始まった当初は、本当に全てが真新しいことの連続で大変刺激的でした。しかし人間の頭脳には、「慣れ」という偉大にして罪深きプログラムが組み込まれています。

例えば廃車一歩手前のような軽トラが走るのを見て「現役なんてすごい!」というリアクションを当初していたのが、いつの間にか「なんでそんな物走らせているの。いい加減にして」と思うようになったり、近所の家畜の豚が早朝鳴き始めると「豚さんは朝が早いなぁ」と思っていたのが、「また豚の鳴き声で叩き起こされた。いい加減にして」と思うようになったり。

「違い」を好意的に受け止める時期を過ぎ、慣れると頭が冷静になって「これは私にとって不快な事象である」と明確に認識するようになります。
「なんとかなるさ」なんて軽い気持ちでこの国にやって来たけれど、「あ、ならないな」と思う項目が毎週増えていくのです。

人を変えることはできないと諦めた

ソロモン諸島駐在妻がこの国について学んだ、悟った、諦めたこと

軽トラも豚も頭痛の種なのですが、筆者が一番心折れているのは、現地の人たちでしょう。ソロモン諸島には、日本や台湾、オーストラリアなどから沢山の人達がやって来て、ボランティア活動をしたり無償で土地開発をしたりしています。観光客を山のように乗せた豪華客船も定期的に就航しています。外国人は、多いのです。

しかし、なぜか現地の人達は外国人を穴が開くほど見る! 見る!! 見る!!! 敵意があって睨んでいるわけでは断じてなく、純粋な好奇心ゆえに目で追ってしまうのです。大人も、子供も。

ただでさえ「人」が苦手な筆者にとって、この視線の集中砲火はまるでフィールド全てがRPGで言うところの「ダメージ床」のようなもの。歩を進めるほど心身が疲弊していきます。しかし一人一人に「私を見ないでください」と頼んで回るわけにもいきません。

状況を少しでも改善するにはどうすれば良いか・・・。筆者の出した答えはズバリ、「外出しない」でした。他人に行動を改めさせるのではなく、自らを変えるしかないと気づいたのです。

おかげさまで一度の外出で最大の効率を上げる綿密な買い出しプランの作成、冷蔵庫の余り物でそこそこのものを作る能力が向上しました。せっかく南の島まで来ておいて情けない話なのですが、自分の心の中のお城を守れるのは最終的に自分だけなのです。

三つ子の魂百までだと悟った

海外で暮らしている日本人の中には、化粧品、日用品、調味料、何から何まで日本のもので揃える人がいます。筆者としてはそれは割高であるし、外国に居ながらにしてプチ鎖国をしているようで実のところあまり好感が持てずにいたのですが、とある日本人駐在員さんのお宅へ伺った時に振る舞われた、純米吟醸や天ぷら、色とりどりのふりかけのかかったおにぎりに舌鼓を打ちながら、自分がすっかりリラックスしていることに気づいた時、「あ、生活を限りなく日本のそれに近づけることって、心の平穏にすごく効くんだ」とついに得心が行ったのでした。

「私は環境の変化に耐えられる、別に日本のものに囲まれてなくても平気!」、そう自分に言い聞かせていましたが、生まれた時から親しんでいる言語が身の回りにあると、多大なる安心感を与えてくれるのだと気付かされました。それがたとえおにぎり用ふりかけのパッケージの文言であっても、です。

フェアに評価することを学んだ

ソロモン諸島駐在妻がこの国について学んだ、悟った、諦めたこと

車が酷い、家畜がうるさい、人がジロジロ見る・・・ソロモン諸島で暮らしていて嫌なこと、はっきり言って枚挙にいとまがありません。しかし、ヤシの葉が風に揺れてこすれ合う音、どこまで行っても真っ青な海、新鮮で激安な魚にフルーツ、凝視してくるけど笑顔を向けると(たまに向けるのです)もっと眩しい笑顔を返してくる現地の人たち・・・。魅力もまた同様に、いくらでも挙げられるのです。

人はとかく、ある1つのネガティブな経験で「もう二度と行かない!」「あの人は最低だ!」と、他の全ての可能性もシャットアウトしてしまいがちです。しかしそれは、「そうしたほうがラクだから」、という一種の思考停止なのではないかと筆者は考えています。

筆者はソロモン諸島に暮らし、「こういうところは本当ダメだけど、こういうところは素晴らしい」というふうに、物事をフェアに考える訓練を受けたような気がします。この国について不平不満を言う度、夫に「でもこういう長所もあるじゃない」とたしなめられ、「ぐぬぬ・・・それは確かにそうだわ」というやりとりを幾度となくやってきたせいかもしれません。

こんな人生訓を得たり、自分と向き合う機会を与えてくれたので、きっとこの半引きこもりにも等しい生活も無駄ではなかったのでしょう。

そんなことを考えながら、明日もいかにして外出しないか、冷蔵庫と相談する駐在妻なのでした。

[All Photos by shutterstock.com]

玉川とき

tamagawatoki ライター
音楽とお酒をこよなく愛す広島出身の根暗。留学先のオックスフォードでスペインとオーストラリアのハーフに出会い、数年後結婚、メルボルンに永住する。現在はソロモン諸島に中期滞在中。座右の銘は行雲流水。筋トレを少々たしなむ。

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