フランス東部、ドイツとの国境に近いアルザス地方は、カラフルな木組みの建物が並ぶ絵本の世界のような街の宝庫。
ドイツ南西部に住んでいる筆者はときどきアルザスの街に出かけますが、行くたびに「やっぱりアルザスはいいなぁ」と、もっと好きになって帰ってきます。
素朴であたたかいフランスの魅力に触れられる、アルザス地方の6つの街をご紹介しましょう。
ストラスブール
アルザス地方の中心都市・ストラスブール。その歴史的な街並みは「ストラスブールのグランディル」として世界遺産に登録されています。
ストラスブールのシンボルといえば、なんといってもノートルダム大聖堂。レースのように精緻な彫刻でびっしりと覆われたファサードは、かのゲーテが「荘厳な神の木」とたたえたほどです。大聖堂内部にある世界最大級の天文時計も必見。
ストラスブールで最もフォトジェニックなスポットが、「プティ・フランス」と呼ばれる運河沿いの地区。可愛らしい木組みの建物が集中するエリアで、歩くだけで心が弾みます。
欧州議会や欧州人権委員会が置かれ、「ヨーロッパの首都」とも呼ばれる国際都市でありながら、どこか田舎っぽいのんびりとした空気や人情味が感じられるのがストラスブールの魅力です。
オベルネ
ストラスブール近郊の小さな街・オベルネは、アルザス地方の守護聖人である聖オディールの生誕地。街の中心をなすマルシェ広場には、聖オディールの像が立っています。
13世紀からワインの生産や手工芸によって繁栄したオベルネには、今も中世からルネッサンス時代にかけての見事な建築物が数多く残っています。
アルザス地方の小さな街にしては珍しく、天を貫くような尖塔や鐘楼のある風景が印象的。カラフルな木組みの家々と、凛とした塔が織り成す風景は夢のような美しさです。
サン・オディール修道院が建つ丘、サン・オディール山は、近郊の街をはじめ、晴れた日にはストラスブールの大聖堂やドイツの黒い森までをも見渡せる絶好のビュースポット。
次は、「ハウルの動く城」に登場する建物にそっくりの家もあるコルマールをご紹介。
コルマール
(C) Haruna Akamatsu
「ハウルの動く城」のモデルと噂され、日本でも一躍有名になったコルマール。かつてフランスとドイツが熾烈な領有権争いを繰り広げたアルザス地方にありながら、ほとんど戦災を受けなかったため、中世からルネッサンス時代にかけての街並みがそのまま保存されています。
運河が走るこぢんまりとした街は、色とりどりの木組みの家々で埋め尽くされ、博物館さながら。鮮やかな色の花々やオーナメントで彩られた木組みの家々を目にすれば、素朴さ、華やかさ、可愛らしさを同時に実現するアルザスの人々の美意識に感服せずにはいられません。
「ハウルの動く城」の冒頭シーンに登場する建物にそっくりな「プフィスタの家」周辺や、「プティ・ベニス」と呼ばれるロマンティックな一画で、非日常感にどっぷりと浸かってみて。
リクヴィル
アルザス地方は村だって魅力が満載です。アルザス地方に点在する可愛らしい村のなかでも、とりわけ人気が高いのがリクヴィル。その美しさは「ブドウ畑の真珠」ともうたわれています。
「フランスの最も美しい村」にも認定された、村全体が絵本から飛び出してきたような街並みはあまりにも美しく、どこから写真を撮り始めたらいいか迷ってしまうほど。
ここが「村」だなんて信じられないほど、おしゃれで洗練されたメインストリートに、時間が止まったようなひっそりとした路地・・・その多彩な表情に会いに何度でも訪れたくなります。
ただ歩くだけなら1時間足らずの小さな村ですが、リクヴィルはおいしいレストランが多い美食の村として知られています。すっきりとした飲み口のアルザスワインとともに、タルトフランベやシュクルートといったアルザス料理を楽しみましょう。
エギスハイム
エギスハイムも「フランスの最も美しい村」のひとつ。花々に彩られた美しい街並みで知られるアルザスのなかでも、とりわけ花いっぱいの楽園のような風景が広がっています。その実力は、2006年に「ヨーロッパ花の町コンクール」で金賞を受賞したほど。
エギスハイム城を中心に、同心円状に連なる木組みの家々を眺めながら歩いていると、ここに暮らす人々の丁寧で、心豊かな生活ぶりが伝わってきます。
エギスハイムは、アルザスワイン発祥の地としても有名。世界的にも高く評価されているアルザスワインは、4世紀にローマ人がここにブドウの苗を植えたことからはじまりました。小さな村でありながら、40軒ほどのワイナリーがあるエギスハイムで、お気に入りのアルザスワインを探してみては。
ユナヴィル
(C) Haruna Akamatsu
やはり「フランスの最も美しい村」のひとつが、ユナヴィル。7世紀ごろ、村の貧しい人々のために尽くしたユノンとユナにちなんで、この名前がつきました。
ユナヴィルはリクヴィルよりも、エギスハイムよりも、ずっと静か。最もにぎわうはずの土曜日でさえ、観光客はちらほら見かける程度で、どこまでもゆったりとした平和な空気が流れています。
観光地化されきっていない、のどかなたたずまいに、おばあちゃんの家にやってきたような安らぎとなつかしさを覚えるはず。
村の代名詞的存在が、ブドウ畑の真ん中にひっそりとたたずむ要塞教会。ここから眺める村の景色は、心癒す優しい風景です。
「ヨーロッパの首都」から、人口数百人の小さな村まで、多彩な顔ぶれの美しい街をかかえるアルザス地方。素朴で、可愛らしくて、あたたかい、また帰ってきたくなる風景が待っています。
[Photos by shutterstock.com]
Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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