久米島の北西部、空港からそれほど遠くない場所に人目を拒むかのようにひっそりと口を開ける、大地の裂け目「ヤジャーガマ」。シダ類などのうっそうとした亜熱帯植物に包まれた鍾乳洞には、絶滅危惧種に指定される動植物のほか、沖縄独特の風葬の名残も垣間見ることができるという・・・。
全長800m コバルトブルーの海に続く真っ暗な地底世界
久米島には、全部で4つほどの鍾乳洞があるといわれ、この「ヤジャーガマ」は、その中でも最大規模。開口部は3カ所あり、全長は約800m。海までつながっているとの噂もあり冒険心をくすぐられます。
一応!? 観光洞窟ということで、看板や散策道などは設けられていますが、洞内は真っ暗。これは生態系を守るために施されている措置で、懐中電灯は必須。滑りやすくぬかるみもあるので、スニーカーや長靴をおすすめします。
風葬の名残があるコウモリ飛び交う鍾乳洞へ
サトウキビ畑が広がる地上と打って変わり、大地に口を開ける鍾乳洞付近は、亜熱帯植物に覆われ、じめっとした独特の雰囲気。暗闇を目指して、地底への階段を一歩ずつ下りていきます。
地底から上がってくるひんやりとした空気に包まれた入り口付近には、赤褐色の骨壺に入った無数の人骨が。ここ久米島では、2000年ごろまで風葬の慣習が残り、海の見える断崖絶壁などで死者を弔ったのち、骨を骨壺に入れこのようなガマに安置したのだとか。
久米島だけではなく、沖縄本島をはじめ南西諸島でも見ることができる風習ですが、心もとない人により骨壺は破壊され、白い人骨が散乱している光景を目の当たりにすると息が詰まります。
神聖なガマの前で手を合わせてから洞内へ。地上からの明かりが届かなくなると、洞内は本当に真っ暗。隣にいる人すらわかりません。懐中電灯だけが頼りです。そんな洞内の天井近くを飛ぶ黒い影!
まずはコウモリがお出迎え。レッドブックでも指定されるリュウキュウユビナガコウモリやオキナワコキクガシラコウモリです。この2種類のコウモリはどちらも沖縄の固有種なのですが、自然破壊や密猟などのために極端に数が減少し、近年ようやく回復傾向にあるのだとか。
つらら石・石筍・石柱・・・ 暗闇で体感する自然のパワー
天井からは無数の鍾乳石(つらら石)が垂れ下がり、地底からはそのつらら石を伝って落ちる水滴で成長する、アリ塚のような石筍がニョキニョキと行く手を塞ぐように伸びています。まるで真っ暗闇の人の体内を探検しているかのよう。1㎝成長するのに50~100年もの時間を要する鍾乳石に注意を払いながら、さらに奥を目指します。
ライオンが! 鍾乳石がそんな風に見えるんです。想像力をたくましくさせるんですよね、暗闇は・・・ほかにもゴジラや着物の女性、ライトを当てるとその成分がキラキラと輝く神秘的な鍾乳石など、地底世界がどこまでも続いています。
「ほら、ここにはカマドウマが」とガイド。素人には見つけられません。ライトひとつしかないこの暗闇の中で、気配すら感じさせない小さな昆虫を発見するとは何ともスゴイ!
「すべてのライトを消します!!」。 えッ! 「何も見えません・・・」。洞内を流れる風・したたり落ちる水滴・心臓の音・・・。
普段、暗闇に慣れてないからこそ、ダイレクトに感じる神秘的な自然の匂いや音。太古の昔から続く自然の懐に抱かれる貴重な体験です。
暗闇世界に60分間! 太陽を見られる幸せ
暗闇の先には一筋の光が。わずか60分ほど、こんなにも太陽の光に安心するとは。ぽっかりと天井に広がる大開口。その昔はここも鍾乳洞だったらしく、そこが空洞化して地上の重さに耐えられず陥没してできたのです。ここまでの道のり約200m。この先も続いているそうですが、これ以上は素人には無理なので断念し、暗闇の道を引き返します。
ヤジャーガマは、洞内に脇道はなく一本道なので個人でも探検することができますが、各種装備などは万全に。希少生物なども多く、動植物や生態系、島に関する風習などの話など、大変興味深いのでガイドと行くことをおすすめします。
「久米島ホタル館」では、ヤジャーガマ洞窟探検を実施。年間を通して開催されており、6~3月は夜間の探検も。大開口部までの往復で2時間弱の所要時間です。
ヤジャーガマ洞窟探検
【住所】沖縄県島尻郡久米島町大田420(久米島ホタル館)
【料金】2500円
【アクセス】久米島空港より車で約6分
【HP】
久米島ホタル館[All Photos by tawawa]
TAI WATANABE ライター・エディター・ディレクター
10代のころ、自転車でメキシコ・グアテマラを縦断し多くのことを学ぶ。それをきっかけに情報誌・旅行誌の取材を通じて、中南米・カリブ海を中心に世界各国で豊富な取材を経験。海外を見てきたからこそ日本は大好き! 紙とWEB、ふたつの媒体特性に精通した複眼的視点を持っている。
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