瀬戸内海とそこに浮かぶ小さな島々の魅力にはまり、昨年5月に初めて瀬戸内海を訪れてから毎月のように足を運んでいる。海外ばかりの旅から、日本の旅の面白さを覚えたともいえる。
海というオブラートに包まれた離島は、ちょっとやそっとでは外界の刺激にさらされない、独自の風習や伝統があるのかもしれない。それらは何百年と伝承してきて、今に残っている。島に流れている空気の匂い、時間の早さというのも、明らかに都会とは違う。島民も島犬も島猫も島を旅する人も、島の中では何か独特のペースに身を委ねているような非日常感があるように思う。
普段ではめったに使うことのない船に乗る。風が気持ちよいので甲板にでて周囲を眺める。視界をぐるりと移しても、幾つもの島が点在し、遠くに浮かぶように見える島は船が進むにつれ、別の島が重なり合っているのだとわかる。船で向かう先は佐栁島。俗称、猫島というのだ。定期船は香川県多度津を出て、高見島を経由して到着する。人口100人の小さな島は本浦と長崎のふたつの集落に分かれている。
本浦で船を下りると、迎えてくれたのは住人ではなくて住猫だった。
「ニャーン」
猫の視線の高さに近づけるようにしゃがみ込むと、その前方からさらに猫、猫、猫が走ってやってくる。
この島の猫は、えらく人間に懐いている。という話を聞いたことがあったけれど、島の中を歩くほど後をついてくる猫の数は増え、気付くと私はすっかり猫軍団長となって島を闊歩しているのだった。
ベンチに座ると、猫もベンチに座る。膝に乗ってくる猫もいる。「そんな近づいたらキミたちの写真が撮れない」と、カメラのファインダーを覗きながら小言をいうのだけど、ネコはお構いなしで、カメラのレンズにまで顔をぐいと近づけてくる始末。もーう、と、けっして嫌ではないため息がもれてしまう。
佐栁島には宿と食事処はないけれど、山路商店という店が一軒だけあり、どうも店のお母さんが佐栁島の猫母らしい。店の前でぐでっと寛ぐ猫たち。こういう光景は、そうだ、海外の田舎町でよく見た。猫を通して、その街の穏やかさを何度と感じてきただろう。そうして、日本は瀬戸内海の離島で人に愛される猫たちと出会い、幸福を覚えたのだった。
[instagram/nozokoneko]
Nozomi Kobayashi
1982年東京都出身。2005年立教大学文学部心理学科卒業。大学在学中から海外をバックパッカーとして旅をする。写真部に所属。
2005年サイバーエージェント入社。子会社のアメーバブックス新社で多くの書籍を編集した後、2011年末に退社、その日の夜から一眼レフを相棒に旅に出る。1年後帰国して、その旅を綴った『恋する旅女、世界をゆくーー29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎)でデビュー。
既に45カ国をめぐり、現在も世界を旅しながら執筆活動をする。傍ら、ネットやラジオ、雑誌などで旅や世界のネコなどをテーマにした取材をうけたりしている。また、瀬戸内海の秘境の無名の離島「讃岐広島」で、古民家を宿として再生する島プロジェクトを立ち上げ、「ひるねこ」をオープン(ボランティア)。近著に『女ふたり、台湾行ってきた。』(ダイヤモンド社)、世界25カ国54の街で出会ったネコのフォトブック『世界の美しい街の美しいネコ』(エクスナレッジ)、長期旅でオス化した著者が女を取り戻す挑戦の旅を綴った『恋する旅女、美容大国タイ・バンコクにいく!』(幻冬舎)がある。
今年夏以降、2度目のキューバをはじめ、中米数カ国を旅する予定。スペインに長期滞在するのが夢。ラテン人の楽観的な生き方に惹かれるのが理由。
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「瀬戸内のアートの島」として知られる、香川県の直島。フリーランスライターの筆者は、夫の仕事の都合で思いがけず直島で暮らすことに。人気の観光地でもある離島での生活とは、いったいどのようなものなのでしょう。直島の魅力や離島ならではの苦労話など、住んでみたからこそわかった「離島生活のリアル」を連載形式で綴ります。9回目の今回は、島に住んで変わったことについて。