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【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー /第4回「ゲイカップルのデザイナー・ベイビー」

Posted by: 青山 沙羅
掲載日: Apr 25th, 2016. 更新日: May 11th, 2016
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ニューヨーク在住、TABIZINEライターの青山沙羅です。あらゆる国から人が集まっている、ニューヨーク。この街には集まった人の数だけ、異なる人生があります。世界の大都会を輝かせているのは、この街を目指した人々の希望、絶望、涙、吐息。筆者の心に残る、忘れられないニューヨーカーたちとの出逢いを語ってみましょう。絵空事ではない、あなたが知らないリアルなニューヨーカーとは。

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【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー
第1回「グアテマラから歩いてきた彼」
第2回「子どもとはスカイプで繋がっている」
第3回「出逢いと別れを繰り返す街」
第5回「NYCの食は僕たちが支えている」
第6回「僕はテロリストじゃない」

NYで生きていければ、世界中のどこででも生きていける

ニューヨークでは今まで自分が見ることがない、別世界の出来事に巡り合うことがあります。

それはマンハッタンの超高級コンドミニアム(日本でいう億ション)のラウンジで、コーヒーを飲んでいた時のことでした。コンドミニアムの住居者用ラウンジには、香り高いコーヒーや、色々な種類の紅茶やハーブティー、フレッシュジュースが用意されています。

すべて無料で頂けるので「この次は何を飲もうかな」などと考えていました。このコンドミニアムに住むのに、どれだけの費用が必要なのかは知る由もありません。筆者が住んでいるのはクイーンズ地区の安アパートで、ここには知人の引越しのお手伝いに来ただけなのですから。

【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー /ゲイカップルのデザイナー・ベイビー
(C) Hideyuki Tatebayashi
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高級コンドにリッチなヤッピーのファミリー

マンハッタンビューのラウンジには、子供を連れたヤッピー(都市部に住む、若い知的職業の高給取りの男性)二人が思い思いにソファで寛いでいました。

カジュアルなスタイルであっても、彼らの着ている服が高級ブランドのものであることは見て取れました。筆者とは関わることのない、全く別世界の人間です。しきりに父親に話しかけている女の子は、お人形のようなドレスを着ていました。

母親らしい女性は見当たりませんでしたが、「お母さんがお出かけなので、お父さんが子供の面倒を見ているのね」くらいにしか感じなかったのです。知人は、知り合いらしいその白人のヤッピーと話していました。

【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー /ゲイカップルのデザイナー・ベイビー

現実離れした、お人形のような女の子

男性は二人とも、知的で人当たりの良い、洗練された30代くらいの白人。女の子は6〜7歳だったでしょうか。透き通るような白い肌に、吸い込まれそうな青い瞳が印象的。美しいドレスを着たその姿は、お人形さんそのものでした。

ラウンジを離れた後、「あの人たちをどう思った?」という知人の質問に、意味が分からずポカンとしました。

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ここはニューヨーク。ゲイカップルのファミリー

「彼らはゲイなのよ」という言葉に、すぐには状況が呑み込めませんでした。ここが自由の国アメリカ、ニューヨークという現実をまだ実感していなかった頃のことです。2組のヤッピーファミリーと思い込んでいたのは、実は1組のゲイカップルのファミリーなのでした。イメージしていたゲイと違ったので、全く結びつかなかったのです。女の子は、ゲイカップルの血が繋がった子供だというのです。でも、ゲイカップルでどうやって?

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遺伝子操作のデザイナー・ベイビー

知人から聞いたことは、信じられないような話でした。

賢い、美形、青い目、金髪、痩せ型、程よい身長の高さ、白い肌(白人)の優良遺伝子の卵子を選び、後々親権問題などでトラブルにならないよう、さらに他の女性のお腹で人工授精させて授かった子供だというのです。まるでSF小説のような話ですが、ニューヨークでは医学技術がそこまで進んでいました。ニーズがあるから、成り立っているのでしょう。

性別を超えて愛し合うカップルが、自分たちの子供を欲しいと思う気持ちは理解できます。が、ブティックで買い物をするように好みの遺伝子を選び、見た目も頭脳も優れた子供を作ってしまうとは驚きでした。その費用は莫大と思われ、彼らの人生の中で最も高い買い物だったはずです。

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私のお母さんはどこ?

女の子はすでに学校へ通っている年齢でした。クラスメートの大半は、異性のお父さんとお母さんでファミリーが構成されていたでしょう。

「ウチはどうしてお母さんがいないのか」、「他のファミリーとどうして違うのか」、「私はどうやって生まれてきたのか」など、色々な疑問が湧いたはずです。子供に母親のことはどう説明したのでしょうか。そして、彼女は納得できたのでしょうか。出自を説明したら、子供の心は壊れてしまわないのでしょうか。

思い出す限り、子供の美しく大きい瞳はただひたすら青く、陰りは映ってないようでした。

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命とはなんなのだろう

彼らと出会ったのは、5〜6年前のことなので、あの時の彼女も成長したと思います。

金髪と青い目の美しい少女は、成人して、恋をし、いつか結婚するかもしれません。彼女が子供を持つ時、次世代に影響はないのでしょうか。美しく作られた子供は、精神的には健全に育ったのでしょうか。

ここはニューヨークなのだと思いながらも、人間が自然に背いて物事を進めることに、何か仕返しは来ないのかとふと怖れを感じます。そして、あの時の生活感のない豪華なラウンジと女の子の瞳の青さを思い出すのです。

【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー /ゲイカップルのデザイナー・ベイビー

[Photos by shutterstock.com]

青山 沙羅

sara-aoyama ライター
はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。


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