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【連載】海外の嘘のような本当の話/第1回「オランダではキスマークが切手の代わりになる!?」

Posted by: 倉田直子
掲載日: Apr 27th, 2016. 更新日: Jan 19th, 2017
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オランダ在住、TABIZINEライターの倉田直子です。子どものころから、日本の常識では考えられないような、外国の面白いハナシが大好きでした! この連載で、筆者が直接または間接的に見聞きした「まさかそんなことがあるなんて!?」というお話を、みなさんとシェアしていきたいと思います。

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第一回目は、筆者在住オランダのお話です。

良くも悪くも、国民性のイメージってありますよね。例えば「日本人=まじめ」、「イタリア人=おしゃれ」「フランス人=恋愛至上主義」というような。

もちろん個人差はありますが、他国に比べると全体的に強い要素が国民性のイメージになっているのだと思います。そんな中、欧州オランダのイメージは、なんと「ケチ」。

【連載】海外の嘘のような本当の話/オランダ人はケチじゃない?オランダで無料になった3つのモノ

英語の口語表現で「割り勘」が「オランダ式でいこう」(Going Dutch)と表現するように、余計なお金は一切出さないイメージを持たれています。それはある意味本当なのですが、意外なところで太っ腹な面を見せてくれる人々でもあります。そんなオランダで無料になったモノを3つご紹介したいと思います。


バレンタインデーには、切手の代わりにキスマーク

【連載】海外の嘘のような本当の話/オランダ人はケチじゃない?オランダで無料になった3つのモノ

最初にお伝えしたいのは、オランダの郵便局を統括するPost NLが2015年にスタートした「切手の代わりにキスマーク」(Niet Plakken Maar Kussen)というサービス。バレンタインデー前日、2月13日の午後5時までに投函されたバレンタインカードは、切手を貼らなくてもキスマークを付けてあれば翌14日にはちゃんと配送してくれるという粋な計らいです(ただしオランダ国内のみ)。

【連載】海外の嘘のような本当の話/オランダ人はケチじゃない?オランダで無料になった3つのモノ

特に注釈がないので、男性がつけたキスマークでも送ってくれるのだと思います。この切手のいらないサービスは好評だったようで、引き続き2016年も実施されました。

このサービスそのものも面白いですが、筆者が好きなのは「切手読み取り機がキスマークにも上手く作動するかテストするために、職員が口紅を塗って500枚のカードにキスマークをつけた」というエピソード。男性なのか女性なのか、はたまた何人がかりで行ったのか不明ですが、もし男性職員もテストに参加していたら面白いなと思います。

「本の週」には本を持って無料の電車旅

【連載】海外の嘘のような本当の話/オランダ人はケチじゃない?オランダで無料になった3つのモノ

こちらは、オランダの鉄道会社NSが実施している「無料の電車の旅」(Reis gratis met de trein)というサービス。オランダには「本の日」ならぬ「本の週」(Boekenweek)があり、通常は3月上旬あたりの10日ほどがその期間に設定されます。

2016年は3月12日(土)から20日(日)までが本の週でした。その最終日20日に、NSがスポンサーとして出版しているエスター・ヘリッツェン(Esther Gerritsen)さん著「Broer」という本を持参して乗車すれば、電車賃が無料になるというサービスを実施したのです。本自体が12.5ユーロ(2016年3月現在1ユーロ約126円)かかりますが、オランダも電車賃は決して安くはなく、例えばアムステルダムからオランダ南部のマーストリヒト(Maastricht)という街まで行こうと思ったら日曜日のオフピークでも定価で25.5ユーロもかかります。その差額は魅力ですよね!

この「本の週の最終日曜日に無料乗車」できるサービスは毎年恒例なようで、昨年2015年は20万人が利用したのだとか。やはり、オランダ人はお得情報に目がない様子?

アムステルダム国立美術館が所蔵作品の画像を著作権フリーに

【連載】海外の嘘のような本当の話/オランダ人はケチじゃない?オランダで無料になった3つのモノ

最後は、国際的にも有名なアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)が開始した驚きの無料サービスのお話です。

アムステルダム国立美術館といえば主に中世以降のオランダ絵画を扱うオランダの主要美術館のひとつですが、2004年より改修工事に入り休館。9年にもわたる休館を経て、2013年4月に新たな建物で再オープンしました。その再開前の2012年10月、リニューアル開館に先立ち美術館が公開した公式ホームページが世界中を驚かせたのです。

公式ホームページの1コーナーに「Rijksstudio」というコンテンツがあるのですが、なんとその中で美術館の所蔵作品12万5000点の高精細画像を著作権フリーで公開するというのだから誰もが耳を疑いました。この「Rijksstudio」でアカウントを作成すると、作品の画像を自由にダウンロードしたり加工ができるようになったのです。その画像をTシャツなどにプリントして再利用できるだけでなく、サイト上の自分の「スタジオ」に保存し、SNSでシェアすることもできるのだとか。美術館の公式アカウントが「Rijksstudio」でできることを動画で公開しているのですが、簡単で面白そう!

【Wat kun je met je Rijksstudio? 】
(Rijksstudioで何ができるの?)

アートの著作権を放棄するにあたって美術館は、このようなコメントを残しています。「このデジタル全盛期に、出回る粗悪な画像で粗悪な模造品が作られることは避けられない」「それならば、我々が高画質な本物の画像を公開したほうが良い」。

なるほど、一理あります。そして明記はされていないものの、「Rijkstudio」で人々が美術品に触れることで愛着を持つようになることも狙っているようです。確かにレンブラントの「夜警」Tシャツを作ったら、作品自体に思い入れができて実物を見たくなるかもしれません。

しかし、こんな大胆なことをしてしまうなんて、オランダは芸術界も太っ腹ですね!

【連載】海外の嘘のような本当の話/オランダ人はケチじゃない?オランダで無料になった3つのモノ

オランダで無料になった3つのモノ、いかがでしたでしょうか。どのサービスもお得なだけでなく、思わず微笑んでしまうようなユニークな魅力がありますね。「ケチ」という不名誉なイメージではなく、この自由でユーモアにあふれた国民性が、もっと世の中に伝わってほしいなと思います。

[Dutch Valentine cards sent with a kiss, not a stamp]
[Boekenweek 2016 12-20 Maart]
[Boekenweek 2016]
[Masterworks for One and All]
[All photos by shutterstock.com]

倉田直子

Naoko Kurata ライター
オランダ在住ライター。元バックパッカーの旅行愛好家。2004年に映画ライターとしてデビュー。2008年、北アフリカのリビアへ移住後に海外在住ライターとして活動スタート。2011年から4年間のUKスコットランド生活を経て、2015年夏にオランダへ再移住。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/


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