先日、筆者の仕事場の外を流れる小さな川で、灯籠(とうろう)流しがありました。規模こそ大きくはありませんが、川べりでは胡弓や三味線を演奏する人が居たりして、幻想的な雰囲気を楽しませてくれました。
この灯籠流し、辞書を引くと
<盆の終わりの日に、小さい灯籠に火を転じて川や海に流す魂たま送りの風俗>(広辞苑より引用)
とあります。
「魂送り」とは精霊(しょうりょう)を送り返す行事で、「精霊」とは仏教用語で“死者の魂”を意味するそう。この場合の死者とは祖先の霊や葬られて間もない新仏(あらぼとけ)、無縁仏にあたるみたいですね。
この灯籠流し、全国で7月や8月に行われていますが、北陸の福井県では参加者2万5千人近く、1万基の灯籠が流される日本最大規模の行事が行われているとご存知でしたか?
(C) facebook/永平寺大燈籠ながし
そこで今回は北陸に在住する筆者が、福井県吉田郡永平寺町で行われる「永平寺大燈籠ながし」を紹介したいと思います。
永平寺大燈籠ながしとは
(C) facebook/永平寺大燈籠ながし
開催地である福井県の吉田郡永平寺町は、曹洞宗の大本山・永平寺のある場所です。
TABIZINEの過去記事でも紹介した、200人近くの僧侶が修行する有名な禅寺。
この永平寺のある永平寺町には、九頭竜川という福井を代表する川が流れています。その河川敷の公園で2016年8月21日に第29回「永平寺大燈籠ながし」が行われます。
昼ごろから川べりではゴムボートの川下り体験や各種のバザー、盆踊り、コンサートなどが開かれ、お祭り気分を楽しめます。日が暮れる時間に向かって駐車場には続々と観光バスが到着し、時間とともに人でいっぱいになっていきます。早くから現地に入っておきたいですね。
1万基の灯籠は幻想的
(C) facebook/永平寺大燈籠ながし
日暮れごろになると、オープニングセレモニーの後、永平寺の禅僧とその指導者たち約120人が経典を読み、祖先の霊など先人の冥福を祈ります。
響きあう僧侶の読経はとても神秘的で、それまでのお祭り騒ぎはどこかに消え、訪れた人は息をのむようにじっと聞き入り始めます。手を合わせる人、頭を下げる人、読経をする人、祖先に思いをはせる人など、さまざまな人の横顔が見えて、熱心な仏教徒でなくても厳粛な気持ちになっていきます。
各人が焼香を終え、法要も終わると、永平寺の事実上のトップ(監院)が流し場から最初の灯籠を流れに投じます。福井県知事、町長などが続いた後に、有料席の桟敷席の人が流して、最後に一般の人が続々と放流します。その数は合計でなんと1万基。
灯籠は事前予約もできますし、当日にも手に入れられます。主に2種類あり、供養のための灯籠(1,500円)と、自分の願いや想いをかなえるための灯籠(1,000円)ですね。後者の願い灯籠は自分の手で川に流せます。それぞれに願いを託してみてください。
ちなみに灯籠を流すとき、ぬれるのを嫌って放り投げたり傾けたりしてしまうと、周りの紙に火が移って、燃えてしまう恐れもあります。自分の願いを込めた灯籠が燃えてしまうと、なんだかとても残念な気分に・・・。
子どもたちは思い切って足まで川に入って、神妙な顔で流しています。彼ら、彼女らを見習って、足がぬれてもいいくらいの覚悟で踏み込み、灯籠を静かに浮かべたいですね。
以上、福井県で行われる日本最大の灯籠流しについて紹介ました。
肝心のアクセスになりますが、自動車と電車の2パターンがあります。自動車であれば、北陸自動車道の福井北I.Cを降りて、国道416号線を会場の方に進んでください。電車の場合はJR福井駅まで行き、えちぜん鉄道勝山永平寺線に乗り換え。永平寺口で降りてシャトルバスに乗り換えます。
『永平寺大燈籠ながし』は日本夜景遺産の「歴史文化夜景遺産」にも選ばれたイベント。夏の終わりにゆっくりと自分の人生を見詰め直したいという方は、今年の夏に福井に訪れてみては?
(C) facebook/永平寺大燈籠ながし
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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