帰国子女でもないし、ハーフでもない。生まれは日本、育ちも(殆ど)日本。そんな生粋の日本人だけれど、何の因果か海外に住むようになって十余年。
外国人目線の「ここがヘンだよ日本人」観に、髪をかきあげながら「わかるぅ~」と言えるほどではない、でもやっぱりたまに日本に戻ると、日常のあらゆるシーンで自分が「噛み合わなくなってしまった」ことに気付かされる・・・。
そんな一時帰国者の悲哀を、「あるある」形式で紹介します(筆者はオーストラリア在住のため、主にオーストラリアとの比較になりますことご了承ください)。
1.開封の仕方が雑になる
ご存じの方も多いと思いますが、海外製品のパッケージは非常に不親切です。以前よりは気が利くようになっているものの、「あけ口」の無いものは未だ多く、そんな環境に長年身を置くと、何でも力ずくで開けることが普通になります。
そんな人間が日本に帰って、コンビニでフィルム包装されたお菓子などを買います。いつもの要領で、側面からカリッカリッ・・・と爪を立ててひっぺがし、開封、実食。
お菓子も半分くらい消費したところで、ふと視界の隅のフィルムに目をやると・・・
なんということでしょう!!「ここを持って一周させると簡単に開けられます」という「ベロ」が、手付かずのまま残っているではありませんか!!
「あああ、そうだったーーー!!」
側面からカリカリした己の浅はかさ、便利機能「ベロ」を使えなかった無念などがこみ上げ、「次こそは・・・必ずっ・・・!!」と拳を握り誓うのです。
ちなみに、ガムシロップ等の「パキッ」とやるあけ口や、ドレッシングのミシン目にも、その心遣いに感激しながら開けます。
2.ドアを支えてくれない事に傷つく
すぐ後ろから人が来ている事が分かっている場合、オーストラリアでは自分がドアを開けたら後続者のためにそれを支えてあげることが、ほぼ当然のマナー。
一時帰国中デパートに行ったのですが、明らかに出入りの激しい場所であるのに、筆者の目の前にいた数名の若者グループは、ガラスのドアを、自分たちが通れる最小限の幅だけ開けたらパッとドアから手を離し、後ろを見ることもなくスタスタと歩き去っていきました。
背後にいた筆者は、「冷たいなぁ」と思いながら、閉まりかけている重いドアをよいしょっと開けたのでした(閉まりかけはもっと重いんですよね)。ちょっと振り返るくらいしてくれたっていいのに。
・・・とはいえ。自分が海外で暮らす前は彼らと全く同じようにしていた事を覚えているのです。悪意はなく、単に習慣がないだけ。それでも長年の海外生活による「癖」で、前にいる人はドアを支えてくれるだろうと勝手に期待して、そして目の前で閉まってゆくドアを見て勝手に傷ついてしまう。本当に勝手なことです。
逆に筆者の後ろに人がいた時、開けたドアはもちろん支えたのですが、オーストラリアより数倍丁寧にお礼を言われました。
「あっ、日本ではこれはすごく親切な事なのか」、と思い出したのでした。
3.ティッシュ配り大好き
ポケットティッシュ・・・海外在住者にとっては、必携品ではないけれど、気が向いた時、あくまでも「お金を払って」買うアイテム。それがなんと、日本では街を歩くだけでもらえるのです!
ティッシュ配りのお兄さんお姉さんを見つけるや、「ティッシュ配りだ!!」と、まるで獲物を見つけた豹の如くそちらへ素早く方向転換し、勢いよく手を差し出します。本当は3往復くらいしたいところなのですが、それは恥ずかしいのでぐっと我慢です。
ティッシュ配り(による宣伝)は、「かさばらない、買うほどでもない、でもあれば便利」というポケットティッシュの特質を突いた見事なアイデアだと思うのですが、最近は配っても受け取る人が少ないという衝撃の事実を耳にしました。
日本の各家庭でポケットティッシュが飽和状態に達したとでもいうでしょうか・・・。なんという贅沢!
4.食べ物の誘惑が多すぎて辛い
デパ地下、コンビニのレジ横、駅、路地裏、ガード下・・・というかもう、全部! 目を閉じて石を投げれば食べ物に当たるのではないかというほど、食の誘惑にあふれている国、日本。
特にデパ地下は有数のデンジャーゾーン。
洋菓子、和菓子、お惣菜、お酒、生鮮食品、どこに行っても筆者はよだれの分泌が止まらず、「なんでこの国はこんなにおいしそうなものが沢山あるのだろう、なんで人間の胃袋は有限で、食べたら太るのだろう」と、感嘆とも絶望ともつかない深い溜め息をつきながら、お寿司、コロッケ、チーズケーキ、おはぎ、日本酒を買い、ご満悦でデパートを後にするのです。
5.フレンドリーになる
レジに向かう時は微笑み、会計後は「ありがとうございます」と言わないと落ち着かない、ショップの店員さんの指先を見て「ネイル綺麗ですね」と突如感想を述べてしまう、知らない人との些細なコミュニケーションでも笑顔を作るようになる・・・。
オーストラリアではよくある日常風景ですが、日本で実践していると自分がやたら愛想の良い人間であるような気がしてきます。少なくとも筆者は、海外に住むまでは店員さんに「ありがとう」もあまり言っていませんでした。何も言わずどうやってレジから去っていったのか、実のところもう思い出せません。
お礼を言われること、笑顔を向けられる事を嫌う人はそういないと思うので、これは良い「外国かぶれ」なのではないかと思うのですが、フレンドリーも裏を返せば無遠慮。
「なんだコイツ馴れ馴れしい」と思われない程度の距離感は忘れないようにしよう、と時折自分の態度を点検するも、無表情な出国ゲートの審査官にも、やはり「ありがとうございます」と言ってしまうのでした。
いかがだったでしょうか? 「三つ子の魂百まで」とは言いますが、住む場所が変われば、所作も多少は変わるというもの。生まれ故郷に自分が溶け込めていない感じがするのはちょっと寂しくもありますが、帰る度に新たな発見があるのも面白いものです。
次回帰国時、ティッシュ配りが絶滅していませんように。
[All photos by Shutterstock.com]
tamagawatoki ライター
音楽とお酒をこよなく愛す広島出身の根暗。留学先のオックスフォードでスペインとオーストラリアのハーフに出会い、数年後結婚、メルボルンに永住する。現在はソロモン諸島に中期滞在中。座右の銘は行雲流水。筋トレを少々たしなむ。
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