
政府の対応
ドイツでは、感染力の強い伝染病対策として、感染が懸念されるケースでは隔離する方針が打ち出されています。空港ではこのような事態を想定して定期的に訓練が実施されてきたそうです。加えて、似通ったケースであるSARSも拡大を防ぐ事ができた実績があるので、政府は、ドイツ国内での感染拡大は阻止できると考えているようです。
出典:
ドイツ連邦保険省:https://www.bundesgesundheitsministerium.de/
ドイツ政府HP:https://www.bundesregierung.de/
拡大阻止の方策
現在、ルフトハンザは中国への運行を中止しています。また、中国の武漢市に滞在していたドイツ人は特別機で帰国しています。搭乗機からの下車の際には健康状態をチェックされ、感染の有無が明らかにされているそうです。そして現在、症状が現れていないケースでも、現在潜伏期間と考えられている14〜15日間は隔離された施設での滞在が強制されています。
出典:
ドイツ連邦保険省:https://www.bundesgesundheitsministerium.de/
Tagesschau:https://www.tagesschau.de/
ドイツでの感染の実際
ドイツでの感染が初めて確認されたのはミュンヘンでした。感染者は即時、ミュンヘン市内の病院へ隔離収容されました。感染者は中国との取引がある、一企業の会社員でした。その後、同企業では7人の感染者が確認されています。この緊急事態に、同企業は自社の建物を潜伏期間が過ぎるまでの間、閉鎖することとし、ホームオフィスでの就労に切り替えています。このような迅速な対応からは、経済的な視点だけではなく、社会的配慮をも窺い知ることができます。
出典:当企業HPより。尚、不当な企業への偏見を回避するために、当企業の名前は本稿では明らかにしないこととします。
これは常々感じる事ですが、風邪をひいたときの就労にたいするドイツと日本との考え方の違いをここでもみることができます。ドイツでは風邪をひいた場合、同僚に風邪をうつしてしまうことを心配し、風邪が完治するまで欠勤するというケースが多く見られます。欠勤期間が一週間に及ぶ場合もあります。自分の体のケアよりも仕事の遂行を重視する風潮の強い日本とは大きく異なる点です。風邪の場合、日本的態度で勤務に望むと、同僚から口頭で注意されることもあります。ただし、筆者がみたことがあるのは、風邪にも関わらず出勤したドイツ人の同僚に対するドイツ人同僚からの叱責ですが。
アジア人に対する偏見は発生するのか?
こういったケースの場合、アジア人であることから、おもむろに偏見の目にさらされる、という事態が危惧されます。実際、パリやアメリカなどではすいったケースが報告されていますよね。筆者の住むミュンヘンでは、こういった差別的対応というのは今のところ感じることはありません。ただ、公共放送局ZDFのニュースでは、ケルンの中華食材店が取材され、ドイツで育ったという経営者が、今回の疫病に関して不愉快な経験をしたというレポが放送されていました。
また、上記の感染者の家族などは、症状がない、もしくは病気から回復した後にもかかわらず、幼稚園や学校に来るな、と言われたり、当該企業の仕事の契約がキャンセルされたりといった支障が生じているようです。
出典:
ZDF:https://www.zdf.de/politik-gesellschaft/seuchen-und-viren-100.html
心ない人が、アジア人一般をひとくくりにして、心ない言葉を浴びせるということは、ありえることだと思います。そういった偏見に甘んじる事はできませんが、しかし、確固とした情報がない中で、この疫病に対する個人の予防策として中国人の在住者、旅行者やアジア人一般との接触をさけようとしてしまうのも仕方がないことなのかもしれません。危うきには近寄らず、というのが危機回避の一番の方策でもあるのですから。
今後の動向
もし、空港などで感染が疑われるような症状が現れた場合には、迷う事なく空港関係者に申告してください。旅行中も同様に、大使館または領事館へ連絡をし、指示に従う事をお願いいたします。また、海外での診察は高額になる可能性があるため、海外旅行保険には加入していただくことをお勧めします。

今後、日本で新型コロナウィルスの感染が拡大することになれば、日本からの渡航が制限されることもありうるか、と思います。間もなくドイツではファストナハト(ファシング、カーニバル)が始まるので、街中は多くの人で賑わいます。そういった場所ではコロナウイルスに限らず、風邪に感染する可能性も高まります。せっかくの旅行を快適なものにするためにも、うがい、手洗いなどの予防策の励行を怠らないようにしてくださいね。
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Eisuke Kawai
ドイツ、ミュンヘンで設計事務所に勤務。 週末と休暇を利用して旅に出る。海にいくと一緒に来る妻はケーキマイスター(ドイツでマイスター号を取得)。彼女はシティートリップには乗り気ではないので、イヤイヤついて来る二人の息子と男三人でヨーロッパと日本を駆け巡る。
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