アメリ(2001)
やはり最初に思い浮かぶのはロマンチックな恋に憧れる女子必見、フランスをはじめアメリカや日本など世界各地で大ヒットした「アメリ」です。監督は独自の世界観を作り上げるジャン=ピエール・ジュネ、そしてキュートな主人公アメリを演じたのはオドレイ・トトゥ。
舞台はパリ。アメリの働くカフェがモンマルトルにある設定です。そのためサクレ・クール寺院がしばしば登場するほか、(火災に遭う前の)ノートルダム大聖堂や東駅・北駅など、パリの観光地や美しい風景が全編にわたって登場します。
「アメリの好きなことはクレーム・ブリュレの硬い表面を割ること」といった具合に、登場人物の描写に好きなもの、苦手なものを紹介するなど、細やかでキュートな演出で夢見る乙女の恋愛大作戦を描いています。
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実はアメリが働く設定の「カフェ・デ・ドゥ・ムーラン」はモンマルトルに実在し、「アメリ」と名付けられたクレーム・ブリュレは、訪れる多くの観光客の大人気を博しているそうです。一度は訪ねてみたいものですね。
巴里のアメリカ人(1951)
「アメリ」はフランス女性の視点でパリと恋愛を描いていますが、「巴里のアメリカ人」はアメリカ男性からの視点で、華やかで陽気なパリと恋を描いたミュージカル映画。
監督はハリウッド・ミュージカル全盛期を代表するヴィンセント・ミネリ、画家を目指す主人公に、躍動感にあふれたダンスを見せるジーン・ケリー。お相手役はバレリーナとしても活躍したレスリー・キャロン、名ピアニストのオスカー・レヴァントも見事なピアノ演奏を披露しています。そして作品賞、作曲賞などアカデミー賞6部門を受賞した名作です。
音楽や歌、ピアノ演奏、ダンス、タップ、バレエなどどれをとっても一流で本物の技を見せてくれます。「パリのアメリカ人」といえば作曲家ガーシュインを思い出しますが、もともとこの映画はガーシュインの曲を映画化するところから始まりました。特にエンディング前のシーンで、ジーン・ケリーとレスリー・キャロンが名曲「パリのアメリカ人」で踊り続けるシーンは迫力満点。「ラ・ラ・ランド」(2016)にも影響を与えたといいます。ともかくパリを舞台にダンスと歌、音楽を楽しむことのできる楽しい名作なのです。
ポンヌフの恋人(1991)
3作目は異色の恋愛映画です。たくさんある恋愛映画の中で迷ったのですが、パリ・セーヌ川に架かる名所のひとつ、ポンヌフ橋を舞台にしていること、そしてフランス映画らしい複雑な愛の感情を描いていることで選んでみました。監督はゴダールの再来とも評されたレオス・カラックス。若きジュリエット・ビノシュが主演しています。
物語は改修工事で通行止めのポンヌフ橋で暮らすホームレスの男アレックス(ドニ・ラヴァン)と、失明の恐れで自暴自棄になった画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)の究極の愛の物語。夜のシーンを多用して華やかなパリとは正反対の裏側を描きます。とはいえ、フランス革命200年祭の花火をバックに橋の上で踊るふたりやセーヌ川での水上スキー、地下鉄通路のポスターに放火するシーンなど、映像はたいへん斬新で迫力があります。
ちなみにポンヌフ橋での多くのシーンは、パリからはるか遠い地中海沿いの村に巨大オープンセットを作って撮影され、資金難などで完成まで3年かかったといいます。
パリを舞台にした映画は、このほかにも古典的名作「天井桟敷の人々」(1945)や「勝手にしやがれ」(1959)、「地下鉄のザジ」(1960)から、ウッディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」(2011)、社会派作品の「レ・ミゼラブル」(2019)などなどたくさんあります。機会がありましたら続編をお届けします。
そしてフランスでは3月17日から厳しい外出制限が継続中で、5月11日からは段階的に解除されていく予定ですが、いまもパリの人びとは自宅で新型コロナウイルス感染防止に取り組んでいます。みなさんもいましばらく旅行は控えて、感染を防ぎましょう。
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Masato Abe 還暦特派員
大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。
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