ダブリンを旅する気分に 「ONCE ダブリンの街角で」(2007)
アイルランドの首都ダブリンのストリートミュージシャンの物語で、ダブリンの街を旅する気分になる作品です。監督は音楽映画が得意なジョン・カーニー。アイルランドのシンガーソングライターのグレン・ハンサード、そしてこれがデビューとなったチェコ人のシンガー、マルケタ・イルグロヴァが主役を務めます。
当初アメリカでの上映は2館でしたが、口コミで評判が広がり、アカデミー賞歌曲賞まで受賞した作品です。ちなみにカーニー監督作品にはニューヨークのストリートミュージシャンを描いた「はじまりのうた」(2013)もあり、こちらもおススメです。
ダブリンの街角 (C)Albert Pego / Shutterstock.com
ダブリンの街角で歌う男性ミュージシャンがチェコからの移民女性と知り合い、さらに仲間を集め、プロを目指すというシンプルなストーリー。音楽が素晴らしいのはもちろんですが、主人公ふたりが背負う複雑な家庭環境や質素な暮らしが描かれていて、リアリティがありました。そしてプラトニックな関係だったことも爽やかな印象を残します。
曇りがちなダブリンの空気感もリアルに伝わり、ふたりに寄り添うハンディカメラが、私たちも近くで立ち会っているような気分にさせてくれます。ちょっぴり切ないけれども、彼らの歌う美しい曲に心が洗われ、爽やかな気持ちになります。
YouTubeムービー
DVD https://www.amazon.co.jp/ONCE-ダブリンの街角で-デラックス版-DVD-グレン・ハンサード/dp/B0016XF4OW
笑いと涙の物語 「オーケストラ!」(2009)
にわか仕立ての楽団員たちが、モスクワからパリに乗り込み演奏会を開くという笑いと涙の物語。フランス映画で、監督はルーマニアからパリに亡命してきたユダヤ系のラデュ・ミヘイレアニュ。フランスのセザール賞で音楽賞を受賞しています。前半は、かつてのソ連の共産主義やブレジネフ書記長などに対するシニカルなジョークが散りばめられています。が、後半になると一転、素晴らしい演奏シーンにさまざまな思いがカットバックで挿入され、思わず泣けて感動します。
主人公アンドレイは、かつて天才指揮者としてモスクワのボリショイ交響楽団で指揮者として活躍していましたが、ソ連時代の粛清で今は清掃員として働いています。清掃中に彼が目にしたFAXで、パリの劇場がキャンセルされた楽団の代わりに演奏会を依頼してきたと知ります。チャンスと思った彼は、追放されていたかつての楽団仲間を呼び集めて、パリでの演奏会を目指すという展開。
モスクワのボリショイ劇場 (c)AndreyFilippov.com / Shutterstock.com
赤の広場やロシア外務省(重厚なのっぽのビル)など、いまのモスクワの美しい風景、またセーヌ川やサクレクール寺院などパリ観光も織り込まれて旅の気分も味わえます。そしてハートウォーミングなエンドで清々しくなれる作品なのです。
夢を追い続ける人たちに 「ラ・ラ・ランド」(2016)
3作目は迷いましたが、アカデミー賞で監督賞、主演女優賞、撮影賞、美術賞、そして作曲賞と劇中歌「シティ・オブ・スターズ」で主題歌賞(歌曲賞)の6部門を受賞したミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」です。ロサンゼルスの渋滞するハイウェイで車から降りた若者たちが歌い踊りだす見事な冒頭シーンが、物語の期待感を高めてくれます。
エマ・ストーン(左)とライアン・ゴズリング (c)Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com
監督は映画「セッション」で一躍注目されたデイミアン・チャゼル。幅広い役柄を演じ分けるライアン・ゴズリングが今回は見事なピアノ演奏を披露、共演のエマ・ストーンとともに素敵な歌と踊りも見せます。物語は恋の出会いから別れ、そしてそれぞれの旅立ちを描くのですが、「夢をあきらめないで」というメッセージが込められています。
ハリウッド (c)Marek Musil / Shutterstock.com
「ラ・ラ・ランド」はさまざまな名作ミュージカルへのオマージュでもありました。有名な「雨に唄えば」や「バンド・ワゴン」「パリの恋人」「踊るニューヨーク」、そして前回ご紹介した「巴里のアメリカ人」などなど、多くの作品からインスピレーションをもらっているそうです。時間がありましたら、これらもぜひご覧ください。
今回もみなさんが元気になるよう、名作たちの中から個人的な好みで選ばせていただきました。とはいえ、まだまだ美しい旋律が心に染みる作品はたくさんあります。機会がありましたら続編をお届けします。
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