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世界遺産の旧市街地で日本史が変わった!?日本人がケベックシティを訪れるべき理由【カナダ】

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Apr 9th, 2019.

美しい街並み、雄大な自然、おいしいグルメ、世界遺産など、さまざまな魅力を持つカナダ東部にあるケベック州の州都、ケベックシティ。今回は日本人旅行者にとって有力な旅先の1つ、ケベックシティ最大の見どころである旧市街地の魅力を紹介したいと思います。

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海外の旅先を選ぶとなったら、どのような基準で決めていますか? 町が美しい、雄大な自然がある、食べ物がおいしい、世界遺産に登録されている、歴史を感じさせてくれる、日本と深い関係にあるなど、さまざまな要素が挙げられますが、それらすべての条件を満たす場所がカナダにあります。カナダ東部にあるケベック州の州都、ケベックシティですね。

旧市街地のローワータウンにあるプチ・シャンプラン地区

そこで今回は日本人旅行者にとって有力な旅先の1つとなってくれるケベックシティ、中でも同市最大の見どころである旧市街地の魅力を紹介したいと思います。


世界文化遺産に登録された旧市街地と大河の取り合わせは見事

ケベックシティという都市名を、今までに聞いた覚えはありますか? カナダというと西部のバンクーバー、カナダ最大の都市であるトロント、首都のオタワなどが有名かと思います。中にはオーロラが見られるイエローナイフ、1988年に冬季オリンピックが開催されたカルガリーなどを知っている人も居るかもしれませんね。しかし1985年に世界文化遺産に登録された、ケベックシティも日本人にとって最高の旅先の1つになってくれるはず。

旧市街地のローワータウンとセントローレンス川

その理由はまず、チャーミングな旧市街の町歩きと、北米らしい雄大な自然を、1カ所で楽しめるから。ケベックシティは新市街と旧市街に分かれおり、旧市街はヨーロッパ人が、北米大陸(今で言うカナダ)を植民地化しようと定住し、町を築き始めた最初の土地になります。日本で言えば江戸時代のころの話ですね。ヨーロッパ人が北米大陸に進出してしのぎを削った歴史的な痕跡が都市ごと保存されており、その歴史的価値が1985年に世界遺産として評価されました。

セントローレンス川

旧市街の河川港は北米大陸で流域面積が3番目に広い、セントローレンス川に面しています。ケベックでガイドを務める高橋浩也さんによれば、セントローレンス川は源流をはるか遠くカナディアンロッキーに持ち、五大湖を経て大西洋に流れ下るのだとか。海に面した河口付近は、川幅がなんと100kmに達するそう。日本に帰国後、ケベック観光の経験がある日本人に会ったとき、「あの巨大な川があるところでしょ」と、目を輝かせて旅の景色を思い起こしている表情が印象的でした。

大西洋からそのセントローレンス川をさかのぼってきたフランス人たちが、4kmほどに川幅が狭くなる場所「ケベック」の川べりの低地(現在のローワータウン)に1608年、毛皮の取引所を造り、町を築いて、北米大陸進出に小さな「足掛かり」を築きます。

フェアモント・ル・シャトー・フロントナックの裏手にあるテラス・デュフラン

河岸段丘を挟んだ高台(現在のアッパータウン)にもやがて町が広がり、後に同地を奪おうと攻めてくるイギリス人に対抗するために、町には城壁が設けられました。その城塞都市は1759年、6回目の英仏戦争でイギリス人の手に落ちますが、イギリス人とフランス人の手で発展した町のチャーミングな雰囲気は、素敵な「ヨーロッパ」そのものです。

加えてケベックシティの場合、セントローレンス川が北米大陸の圧倒的な地理的スケールを肌で感じさせてくれます。冬は水深40mの川の表面が凍り付き、旧市街地の低地(ローワータウン)にある船乗り場から砕氷船に乗れば、氷を砕きながら対岸に渡る、ちょっとした「冒険」も楽しめます。船上から旧市街の方を振り返ると、歴史ある建築物が高低差のある町にひしめいていて、圧巻の景色を楽しませてくれますよ。

日本史にも大きな影響をもたらしたケベックシティ

船上から眺めるフェアモント・ル・シャトー・フロントナック

ケベックの旅行中に出会ったアメリカ人たちによれば、米国の東海岸に暮らす人たち(east coasters)から見て、ケベックシティはジェットラグ(時差ぼけ)もなく、国内旅行と同じような旅費でヨーロッパ気分を味わえるため、とても魅力的な旅先なのだとか。英語ではなくフランス語を公用語とする人々の存在も、異国情緒をかきたてると言います。

では、日本人にとって、ケベックシティを選んで旅行するメリットは何なのでしょう? 手元の地球儀を見ると、ケベックシティのある北米大陸の東側は、日本から見てほぼ地球の反対側。昼夜も真逆で、同州のモントリオールまでは日本から直行便があるものの、ケベックシティにはありません。

その意味でカナダの東側は、日本からとても遠い場所ですよね。ヨーロッパ気分を味わいたいだけなら、実際にヨーロッパに行った方が早いはずです。それでもケベックシティはぜひ、日本人が訪れておきたい観光地。その理由は、日本と日本人の歴史に、意外にもケベックシティが深く関係しているからなんです。

旧市街地のシンボルに、フェアモント・シャトー・フロントナックというホテルがあります。各国の王族はもちろん、レオナルド・ディカプリオのような映画スターも宿泊する名門ホテルで、中央の塔が1924年に増設されるなど、その威風堂々たる姿は時間をかけて磨かれてきました。1893年に作られていますから、2018年には125周年を迎えています。

このホテルは1943年、1944年に当時の米大統領フランクリン・ルーズベルトと英首相のウィンストン・チャーチル、さらにカナダ首相が会談した場所としても知られています。年号とメンバーから、ピンとくる歴史好きな方もいるかもしれません。

上述したケベックシティのガイド高橋浩也さんによれば、同ホテルはアメリカ人とイギリス人というアングロサクソン同士で、日本への原子爆弾投下の基礎合意を行った、まさに人類史に決定的な影響をもたらした舞台でもあるのだとか。

ケベックシティはセントローレンス川沿いにあると言いました。その雄大な流れを眺めながら風に吹かれていると、五大湖から大西洋へと通じる地理的な広がりが、実感として伝わってきます。

同時に自分が地球のほぼ反対側に立っていて、その日本から遠く離れたホテルの一室で、原子爆弾投下の基礎合意が行われたと思うと、歴史と地理の壮大なうねりのような何かを、しみじみと感じられます。その意味でケベックシティは日本人にとって、単にヨーロッパ気分を味わえるだけではない、つらいながらも見過ごせない歴史的な意味を持った場所でもあるのです。

もちろん、歴史と地理のような小難しい話を持ち出さなくても、ケベックシティでは世界最大のウィンターカーニバルの1つ、ケベック・ウィンターカーニバルも楽しめますし、北米最古の商店街散策や、レストラン・カフェ巡りも満喫できます。旧市街だけでなく新市街にも、カルティエ通り、マグワイア通りのようなおしゃれなショップの建ち並ぶエリアもあります。

国立公園を中心とした郊外では自然派が満足できるアクティビティも充実していて、イースタン・タウンシップやモンテレジ―地域など、フランス文化の濃厚なケベック州で作られるワイナリー巡りなども魅力的です。

北米大陸の中では、間違いなく唯一無二の体験ができる観光地。各種の観光地ランキングでも極めて高い評価を得ている古都です。北米旅行に深みと彩りを加えたいと思ったら、ケベックシティの旧市街は外せない選択肢となりそうですね。

[All photos by Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)]

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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