「バルト三国」と呼ばれるエストニア・ラトビア・リトアニアのうち、最も南に位置するのがリトアニア。
ここに、世界的に有名な聖地があります。それが、シャウレイの近郊にある「十字架の丘」。2001年には、「リトアニアの十字架の手工芸とその象徴」としてユネスコの無形文遺産に登録されました。
どこか不気味ささえ漂う、おびただしい数の十字架が並ぶ神秘的な光景から目が離せません。
5万本を超える十字架が並ぶ聖地「十字架の丘」
リトアニアを象徴する聖地、十字架の丘。地方都市・シャウレイのバスターミナルからローカルバスで「ドマンタイ」のバス停までおよそ15分。さらにそこからおよそ2キロ歩くという不便な場所ながら、訪れる人が後を絶たないリトアニアきっての観光地です。
十字架の丘がこれほどまでに世界中の人々を惹きつけるのは、5万本を超える十字架が並ぶ、一度見たら忘れられないインパクト抜群の風景。1993年にはローマ教皇が訪れたことで、この地はリトアニア人の聖地から、世界中のカトリック教徒にとっての聖地となりました。
虐げられた人々の想いが詰まった十字架
十字架の丘の起源についてははっきりしていませんが、初めてここに大きな十字架が立てられたのは、1831年のロシアに対する蜂起の後であったと考えられています。
当時のリトアニアはロシアの支配下にあり、ロシアはリトアニアの人々が信仰するカトリックではなく、ロシア正教のもとでリトアニア人のロシア化を進めていました。「リトアニア」という国名は使われなくなり、リトアニア文字も禁止されるなど、リトアニアの人々は次々に「リトアニア的なもの」を奪われていったのです。
1831年に起こったロシア支配に対する11月蜂起の後、この戦いで犠牲となった反乱兵の家族がここに十字架を持ち寄って死者を悼みました。それから、この十字架の丘は、リトアニア人の愛国心と独立心を象徴する存在となったのです。
度重なる破壊にも負けなかった十字架の丘
リトアニアがソ連の統治下にあった1944年から1990年にかけて、ソ連は複数回にわたって十字架の丘の破壊を試みました。この地はリトアニア人のアイデンティティの象徴であり、ソ連の支配に対する非暴力の抵抗を表していたからです。
ソ連は3度にわたりブルドーザーで十字架の丘を破壊しようとしただけでなく、ダム建設によってこの丘を水中に沈めようとしているという噂まであったほど。
それでも、リトアニアの人々は十字架がなぎ倒された丘に、再び新しい十字架を置いたのです。リトアニア人の不屈の精神を物語る十字架は、なくなるどころか増え続ける結果となりました。巡礼者たちの手によって、現在もここにある十字架の数は日々増えています。
「魂の叫び」を表す無数の十字架に鳥肌が
大小無数の十字架が並ぶ丘には、思わず気圧されてしまうほどの異様なエネルギーが漂っています。数えきれないほどの十字架を目の前に、全身に鳥肌が立ち、無数の十字架が並ぶ光景への感動や希望、悲しみ・・・言葉では言い表せない、さまざまな感情が混ざった複雑な感覚に圧倒されます。
それはここに置かれているおびただしい十字架が、単なるモノではなくて、人々の愛国心や独立心、圧政の犠牲となった家族や同胞を悼む気持ちが込められた「魂の叫び」の象徴だからなのでしょう。
今では、「世界的にも珍しい光景をひと目みたい」という好奇心からやってくる観光客も多い十字架の丘。この丘がリトアニアの人々にとってどんな意味をもつのかを知っておけば、無数の十字架が語りかけてくるメッセージを受け取ることができるはずです。
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Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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