数多く残る偉人の名言
世界には、偉人が残したさまざまな言葉があります。例えば福沢諭吉の「天は人の上に人をつくらず 人の下に人をつくらず」や、ナポレオンの「我が辞書に、“不可能”の文字はない」、エジソンの「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」など、挙げだしたらキリがありません。
名言には、立派な志や叡智を表現しているものが多く、私たちはそこから生きるヒントを得たり、励まされたりしています。
しかし、なかにはマイナス思考な名言もあります。それらは一見あまり参考にならなそうですが、よく読むと味わい深く、落ち込んでいるときにはそっと心に寄り添ってくれる、なんとも言えないよさがあります。そこで今回は、珠玉の後ろ向き名言をご紹介します。
古今東西、後ろ向き名言7選
■「花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき」
作家林芙美子が色紙などに好んで書いていた言葉です。若く美しい時期はあっという間に過ぎ去るうえに、苦しいことばかり。恋人の婚約破棄、何人かの男性との同棲・・・波乱に満ちた自らの半生を歌っているようです。
■「はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る」
歌人石川啄木の有名な言葉。働いても働いても、稼いだお金は家賃や税金、最低限の生活費に消えていく。今でいうワーキングプアの苦しみを代弁するような詩とも言えます。当時の石川啄木も、家族を養うために働きづめでした。
■「これが一生か、一生がこれか、ああ嫌だ嫌だ」
樋口一葉の『にごりえ』より。売春婦である主人公が、将来の展望もない、つまらぬ我が身を嘆いて発した言葉。女性の悲哀がにじみ出ています。
■「弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我するんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。」
太宰治の自伝的代表作『人間失格』より。太宰治は、その繊細な性格ゆえ、今の言葉でいうと、完全にこじらせています。太宰にとって、幸福よりも不幸の方が心地よかったのかもしれません。
■「阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている」
芥川龍之介が社会を痛烈に風刺した小説『河童』より。こう言われると人のことを馬鹿にできなくなりますね。
■「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」
夏目漱石の『草枕』の冒頭シーンで、主人公の画家がこう独白します。どのように生きても、結局この世界は住みにくい?
■「あすは、あすはッて、みんなあすを待ってるけれど、そんなあすはいつまで待っても来やしません」
島崎藤村の歴史小説『夜明け前』より。幕末維新の動乱の時代、抑圧からの解放を求める人々の苦悩を描いています。「何かが変わるかもしれない」という希望が感じられる「明日」という言葉ですが、実際は・・・?
名言を読んでいると、どんなに偉大な人物でも、ときには落ち込んだり、失望したりしていたことがわかります。「つらいのは自分だけじゃない」と元気が出てくる気がしませんか?
プラス思考に疲れてしまったときは、ぜひ後ろ向きな名言を思い出してみてください。
[All Photo by Shutterstock.com]