こだわりのセレクトショップ Out To Lunch
西海さんのお店の名前は、Out To Lunch。1960年代前半まで活躍した、先鋭ジャズの管楽器なら何でもこなすプレーヤー、エリック ドルフィーの作品名の一つです。「お昼ご飯休憩中」という意味でもあるので、そんな店名って面白いですよね。
ポルトの中心部にある商業ビルの1階の10坪ほどのスペースにこの店があります。「おいてある商品は自分が好きなものだけ。祖母が作った半纏や巾着も置いてあるし、日本の鎌もあるよ」という西海さんが扱う商品は、ストリート系のアパレルに、こだわりの雑貨。
特にスニーカーのコレクションが目を引きます。ヨーロッパ各国、日本、オーストラリアなど15カ国以上から商品を買い付けているそうですが、全体的に、日常にちょっとこだわって身に着けることができるアイテムというイメージでした。
その西海さん自身が着ているものもいい意味で力の抜けたファッションで、入ってくるお客さんも、若い男女だったり、家族連れもふらっと入ってきて、ぶらっと見ていくという自由な雰囲気。東京なら青山じゃなくて下北といった感じです。
世界一周をすると言って脱サラ
西海さんは大学を卒業した後に、一般企業に就職しました。しかし、当時の仕事の環境に満足できず「不自由だ」と8年務めた会社を退職します。そして、結婚したての最初の奥さんと旅に出たんです。そして、「旅をすると言って辞めたから、頑張って旅したんだよ」と笑います。
世界中からヒッピーが集まるラオスのバンビエンはほんの10年前頃まではドラッグも蔓延していたラフな街。当時は、旅する人によって最高だったり最悪だったりと評価が分かれるようです。西海さんにとっては最悪の体験だったといいます。そしてそこを旅の最後にして、それまでの旅で出会った知人が多いベルリンに向かうことにしました。
パーティーのオーガナイズでベルリンを盛り上げる
2000年頃のベルリンには何しろ自由な空気がいっぱいで、「ここまで自由でいいんだ」と西海さんの心を躍らせました。やりたいことがあれば何でもやってみようというメンタリティが当たり前だったそうです。
まずは、好きなスニーカーをウェブ販売するようになります。そしてこれがなかなかのヒット。
そして、西海さんがベルリンでオーガナイズしたパーティーの一つに、マンスリーのクラブイベント「Koi Klub」がありました。そのイベントでは、某スニーカーメーカーとコラボレーションして成功をおさめます。
「そのころはとても自由だった。それにアーティスティックで、ベルリンのファッションウィークの年2回のショウケースでのエキシビションも楽しかった」と振り返ります。「不自由だ」と感じたサラリーマン時代とは、全く異なる世界で自己実現できたんですね。
ふとやってきたポルトでここだと感じた
さて、ポルトに最初にたどり着いたのは、現在の奥さんの仕事の関係。アパレルのブランドを経営する奥さんが、縫製の工場を探していたからでした。ポルトの駅を出たとたんに「ここだ」と西海さんに直感が走ります。
その後再訪した際に、ランチをとったビルに出ていた空き店舗が、今は Out to Lunch です。即決だったそうです。店名の由来は、実際にランチを食べた時に見つけた店舗だったから。そして3年がたちました。
「努力するのは嫌なんだよね。スムーズにいくこと、興味あることだけしかやらないんだよ。ドキドキできるかどうかが大事だよね」
西海さんはそう言ってにっこり。リスボンにも支店をオープン。ポルトガルに行ったら、ぜひ立ち寄ってみてください。この笑顔が迎えてくれますよ。そうして、ちょっと話してみたら、自分自身の旅がちょっと変わるかもしれません。
https://www.facebook.com/OTLSTOREOut To Lunch Porto
住所:Galerias Lumiére, Rua José Falcão, 157 Loja 5, Porto, Portugal
営業時間:月‐土 11:00‐19:00
Out To Lunch Lisbon
住所:Rua de São Bento 106B, 1200-820 Lisboa, Portugal
営業時間:月‐土 11:00‐19:00
[All photos by Atsushi Ishiguro]