絶景と秘湯に出会う山旅【1】那須岳と三斗小屋温泉

Posted by: 阿部 真人

掲載日: Jun 15th, 2019

美しい風景はたくさんありますが、山で出会う光景と秘湯は格別なものです。たどり着いた頂きからの絶景はあなたの足で歩いたからこそ得られたもの。そして秘湯はあなただけのご褒美。山ガールはもちろん、みなさんが気軽に訪ねることのできる山旅の提案です。五感を刺激し、心と体をリフレッシュしてくれる体験になるはずです。

大黒屋お風呂

那須塩原駅から那須岳へ

TABIZINE還暦特派員の阿部真人です。

初回となる今回、ご紹介するのは栃木県那須塩原の那須岳と三斗小屋温泉。那須岳は標高1915mですが、ロープウェイで1684mまで行くことができ、初心者でも気軽に登ることができる山です。そして三斗小屋温泉はそこから徒歩でしか行けない秘湯なのです。

那須岳ロング

東北新幹線那須塩原駅から路線バスに乗って那須岳に向かいます。山旅は初めてという方も大丈夫。もちろん登山靴や水筒、帽子や昼食、また雨が降った時の雨具など山の準備は怠りなく。バス料金は片道1400円ですが、2日有効で乗り降り自由の那須高原フリーパス2600円がお得です。

那須ロープウェイ行バス

那須塩原駅から1時間20分ほどで那須ロープウェイ山麓駅へ。この日は近隣の小学生たちの遠足のようでした。ちなみにここから登山道を歩いて山頂まで登る方もたくさんいます。

ロープウェイ山麓駅

ロープウェイは片道950円、往復で1800円。20分間隔で運行しています。日帰りの場合は山麓駅で那須高原フリーパス券を提示すると、ロープウェイの大人往復乗車券(1800円)が1割引きの1820円で購入できます。

ロープウェイ

5分ほどで標高1684mの9合目にある山頂駅に到着しました。那須岳にはトイレは山頂駅以外にはありませんのでご注意を。ここから那須連山が始まります。まずはここからまっすぐに上に進み那須岳(茶臼岳)を目指します。

ロープウェイ山頂駅

那須岳をめぐる

この日は天気が良く、那須高原はもちろん、遠く筑波山まで関東平野が広々と見渡せました。
とはいえ山頂駅付近では足元は砂地のようにざらざらして滑ります。山頂に近づくにつれて小さな岩から大きな岩へと変わっていきます。くれぐれも足元に気を付けて登ってください。

下を見ると

40分ほどで那須岳(茶臼岳)山頂に到着です。標高は1915m。とはいえ、この日は気温が高く、山頂でも20度ありました。

那須岳山頂

眺望がきき360度見渡せます。北西の方角は越後の山々でしょうか、まだ雪に覆われた峰々が連なっています。風もありません。至福の時間です。

越後の山々

那須岳というと、一般的には茶臼岳を指しますが、広い意味では那須連山を指すこともあります。茶臼岳のすぐ隣にある朝日岳、その向こうの三本槍岳も那須岳のひとつ。山ガールならば朝日岳もチャレンジしてみてはいかがでしょう。

朝日岳ロング

朝日岳は岩山らしく多少急峻な山で、ジグザグに岩場を登っていきます。

朝日岳へ

那須岳から1時間ほどで朝日岳山頂に到着。ここから見る那須岳の光景は灰褐色に包まれ、火山らしいこんもりと盛り上がった奇怪な姿をしています。また周囲の那須連山も、さらに遠い山並みも新緑と光に満ちあふれていました。

朝日岳から那須岳ロング

秘湯・三斗小屋温泉へ

そろそろ那須岳を後にして三斗小屋温泉に向かいます。
峰の茶屋跡避難小屋と呼ばれる中間地点から、ロープウェイとは反対側の山の西側に降りていきます。

標識

秘湯はこの谷に降りた先、ひとつ山を回りこんで3キロの地点にあります。

西側の谷あい

途中出会った歩荷さん。ごくろうさまです。
戦前は那須岳の噴気孔から硫黄を採取していたそうです。そのため硫黄の精錬に使う木材を背中に乗せて運ぶ牛がこの道を通ったそうです。
途中「延命水」と呼ばれる湧水がこんこんと流れています。ぜひ飲んでみてください。

山道の歩荷さん

1時間ほどで三斗小屋温泉に到着します。山あいにありますが、三斗小屋温泉の歴史はたいへん古く、平安末期の1142年に発見されたといいます。江戸時代には会津に向かう人々や那須の山岳信仰の行者でにぎわったそうです。明治の初めには5軒あったという宿、今は2軒の温泉旅館がひっそりと佇んでいました。

三斗小屋温泉

今日お世話になるのは大黒屋旅館。
本館は明治元年に戊辰戦争で焼失しましたが、翌年再建され築150年になるといいます。

大黒屋旅館

古い旅館ですが、内装は現代的に、きれいになっています。ちなみにここは携帯電話もメールも、もちろんネットも通じませんのでご注意を。衛星を使った公衆電話がこの居間にあります。

居間

チェックインは14時から。早速ぬるめだという岩風呂に入浴しました。確かにぬるめ。温度は37度ほどでしょうか。長湯できます。
那須高原にはたくさんの温泉がありますが、ほとんどは那須岳の東側にあります。三斗小屋温泉だけが西側にあり、わずかに硫化水素臭のする無色透明の単純泉です。

岩風呂

こちらは大風呂。この大風呂がとても素敵でした。新緑まぶしい谷あいに向かって窓が広く開け放たれ、開放感に満ちています。熱い湯です。湯口から離れたほうでも43度ほど、湯口に近いほうは45~46度はあるかもしれません。

大風呂

ちなみにお風呂の時間割は1時間ごとに男女が入れ替わる仕組みです。大風呂は女性の時間帯は14~15時、16~17時、18~19時、最終は20時~20時30分。その時間は男性が岩風呂の時間になります。1時間割で女性はちょっと忙しいかもしれません。

秘湯の夜

部屋はそれぞれ個室になります。空いていればひとりでも宿泊できます。料金は1泊2食で9500円。ちなみにコンセントはありません。自家発電の電球がひとつ。
旅館と同じようにお茶のセットが用意されています。

個室

窓は開け放たれています。板戸と障子があるだけで、板戸は戸袋に収められています。天気の良い日だったので気分爽快。夜になったら自分で板戸を取り出して障子を閉めます。

窓の外

夕食の時間は17時半。ひとりでも複数でもそれぞれの部屋にお膳を運んでくれます。
この日の夕食はサーモンフライ、ナスとそぼろのトマト煮込み、とろろ、ほうれん草のお浸し、そしてフルーツ。ご飯は十分にあります。

夕食のお膳

食事の後もまだ太陽は沈みません。宿の周囲を散歩するもよし、じっくりと本を読むもよし、温泉に入るのも良し。
持参した本がたっぷり読めました。

夕景

就寝前にもう一度大風呂に入ります。何度入っても気持ちのいいお風呂です。熱めの湯ですから長湯はできません。木の床に座り込んで、窓の外の虫の音を聞きながらボーっとしているだけです。
消灯は21時です。

夜の大風呂

帰路は噴気孔に寄り道

翌朝。朝食の時間は6時半ですが、少し早めに配膳です。朝は早くに目覚めるのでひと風呂浴びて、お腹がすいています。おかずは納豆に温泉たまご、かまぼこに焼きのりです。

朝食のお膳

帰り道はふたたび山に戻ってから。山道を上るので峰の茶屋跡避難小屋まで1時間20分程度かかるかもしれません。そこからロープウェイで帰る場合、活火山らしい景色も見ておきましょう。

無間地獄

いまも那須岳(茶臼岳)の西側斜面では噴気孔からガスが噴出しています。写真は無間地獄と呼ばれている箇所。周囲は硫化水素の臭いがします。
1時間ほどの散策でロープウェイ山頂駅に到着。ちなみに那須岳は活火山ですので火山情報をチェックして出かけることをおすすめします。

噴気孔

那須岳は初心者でも気軽に訪ねることのできる山です(もちろん山登りの装備は必要です)。
緑あふれる樹林帯から、火山ならではの荒々しい姿。そして遠く続く峰々。
そして三斗小屋温泉だけでなく、ふもとの那須湯本温泉をはじめとした多種多様な温泉もあります。ぜひ那須岳の絶景と秘湯に癒されてください。

頂上の子供たち

三斗小屋温泉 大黒屋旅館
栃木県那須塩原市三斗小屋温泉
現地090-1045-4933 事務所0287-74-2309
https://www.facebook.com/daikokuya.santokoyaonsen/
1泊2食9500円 チェックインは14時から チェックアウトは8時まで
泉質:単純温泉(低張性中性高温泉) 大風呂は無色透明で微硫化水素臭あり 50.9度
岩風呂は無色透明で微硫化水素臭あり 41.1度
PROFILE

阿部 真人

Masato Abe 還暦特派員

大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。

大学を卒業後、およそ30年間テレビ番組を作ってきました。57歳の時に、主夫となり、かつ自由人として旅に生きることを決意して早期定年退職。登山を始め、東京の街歩きガイドや温泉めぐり、豆大福探訪などなど60歳の還暦を迎えて好奇心が高まっています。

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