イタリアやメキシコの死者の祭り
当然ながら世界にも、お盆に似た意味合いを持つ行事は行くつもあります。
例えばメキシコやイタリアなどで行われる「死者の祭り」。毎年11月1日~2日(10月31日も)に行われる行事で、この日に亡くなった家族の霊(魂)が戻ってくると言われています。
特にメキシコの場合は、昔から(アステカ文明のころから)先祖の骸骨(がいこつ)を身の回りに置く習慣があったとかで、後にキリスト教が入ってくると、キリスト教の死者の日とその習慣が組み合わさって、現在の死者の日になったのですね。
本来は祭壇をつくり、骸骨の形をした砂糖菓子やマリーゴールドの花などを飾って、静かで敬虔(けいけん)な気持ちで行う行事です。しかし一方で、メキシコの首都メキシコ・シティなどでは、骸骨の仮装をした人たちの路上パレードのような華やかなイベントも行われます。
世界中からその様子を見ようと、100万人程度の見学者が集まるくらいですから、その人気ぶりがわかりますよね。この3000年以上受け継がれる文化は、2008年(平成20年)にはユネスコの世界無形文化遺産にも登録されました。
シンガポールやマレーシアのハングリーゴースト
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シンガポールやマレーシアには、中華系の人が多く暮らしています。実際に現地に訪れると中華街がそこかしこにあることがすぐにわかります。
例えば、TABIZINEでも過去に紹介したマレーシアの「Play! Klang」などは、中華系の人たちが営むマレーシアのホステルでした。
そうした東南アジアに暮らす中華系の人たちの間で行われる行事が「ハングリーゴースト」です。その名の通り、おなかを空かした幽霊が現れるので、食べ物などを路上にささげて満足してもらおうという行事です。
旧暦の7番目の月、つまり旧暦の7月になると地獄の門が開き、浮かばれない幽霊がこの世に戻ってきます。
そのため中華系の人たちは身を慎み、食べ物をささげ、幽霊たちにダミーの紙幣や金品を用意して、悪さをされないように配慮するのですね。
シンガポールのメディア「Must Share News」では、その期間のタブーとして、
- ドアを開けたままで眠らない
- 背後から自分の名前を呼ばれたら振り返ってはいけない
- 夜に泳がない
- 結婚や引っ越しを避ける
- 樹木に立小便をしない
- 外で使った傘を室内で開かない
- ごはんにはしを刺さない
- 部屋に現れた珍しい生き物を絶対に殺さない
などが挙げられています。浮かばれない幽霊に悪さをされないための心構えです。後ろから名前を呼ばれても振り返らないなんて、ちょっと怖いですね。
中国や台湾、沖縄の清明節
最後は中国や台湾、さらには日本の沖縄でも行われている「清明節」です。春分(太陽暦では3月20日ごろ)から15日目を清明節と呼びます。その日に墓参りをして、先祖のお墓を奇麗に掃除する習慣が中国や台湾、さらには日本でも沖縄の人たちに共通して伝わっているのですね。
家族でそろってお墓に行き、草むしり、掃除、必要に応じてお墓の修繕を行う理由は、雨期に備えてお墓を整えておく意味もあるそう。
さらにお墓を奇麗にしたら、春の陽気の中でピクニックを開きます。実際に沖縄でも、ほかの都道府県の人たちからすれば信じがたいほど大きなお墓の前で、家族がそろって食事を楽しんでいる光景が見られます。
中国、台湾、さらにわずかな海峡を挟んで連続する琉球諸島で同じ文化を共有しているのですから、地球規模のつながりが感じられて、すてきです。
以上、世界のお盆に似た行事を紹介しましたが、いかがでしたか?もちろんこれ以外にも、お盆に似た行事は世界にあります。
例えば西アフリカにあるマリのドゴンの民族に伝わる、60年に一度の「シギの祭り」なども祖先の霊を祭る行事。先祖に対する自然な感謝と敬意は、世界共通なのですね。
[参考]
Mexico’s Intangible Cultural Heritage of Humanity
「それ日本と逆!? 文化のちがい 習慣のちがい 第2期5」(学研プラス)
「世界の文化と衣食住 アジア」(小峰書店)
「世界の文化と衣食住 南北アメリカ・オセアニア」(小峰書店)
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