しんしんと降る雪—というように、雪は音もなく降り積もり、静寂の世界を創り上げます。
一面の銀世界は周囲の音だけでなく、もやもやした気持ちさえも吸い取ってくれそう。
朝靄の中の雪景色はやわらかな光が加わり、ほっとする優しさを感じます。
雪でコーティングされた木々は、生き生きとした緑のときとはまた別の安らぎを与えてくれます。生命力を秘めた厳かさ、でしょうか。距離をおきながらも、その美しさで癒してくれるという感じです。
手つかずのふかふか雪を見ると、思わず足跡をつけたり落書きをしたりしたくなります。浮かない気分のときでも、忘れていた真っ新な子供心を、雪は誘い出してくれます。
世界の雪景色、さまざまなその表情を紹介します。
ホーエンシュヴァンガウ城(ドイツ)
城を取り囲むこの地一帯は、オペラ「ローエングリン」で有名な白鳥伝説が残ります。雪に包まれた静かな谷は、白鳥が舞い降りるにふさわしい美しさです。
ドリンメレン(オランダ)
川沿いの並木が雪の白と対照的に映え、遠くへ行くほど朝焼けの中に溶けてゆくのがなんとも美しい、オランダ南部の風景。朝の気配は、雪景色の凛々しさに優しさをのせてくれます。
オグデンバレー(アメリカ)
ユタ州最大のスキーリゾートでもあるオグデンバレー。雪は冷たいものなのに、なぜかふんわり真綿のような感触を思い起こさせ、ざわざわした心を包んでくれるよう。
パリ(フランス)
雪と霧に包まれたパリの街。白い世界は、見慣れたにぎやかな街並さえも、静かに眠るような、落ち着いた空気で満たしてくれます。
アルプス山脈(スイス)
雲海から頭を出すアルプスは、まるで天空の温泉につかっているよう。何とも気持ちよさげな光景に、こちらまで癒されてしまいます。
オーロラ(ノルウェー)
雪山の上に舞い踊る光のカーテン。疲れた心を夢の世界へ誘ってくれる、格別の雪景色です。
白川郷(日本)
日本の昔ばなしの世界がそのまま生き続けてきたような合掌造りの家々。深い雪の谷に明かりを灯したたずむその姿は、見る人に懐かしさと安心感を与えてくれます。
冷たいのに温かく感じる雪、厳しいのに優しく感じる雪景色、不思議な雪の魅力は、母の愛のようです。明日への活力とまでいかなくとも、ほっと一息つけるひとときを届けられることを願って。
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