映画『ホビット』のロケ地として知られるニュージーランド。その中でも南島にある「ミルフォードサウンド」は、世界中のトラベラーを魅了する景勝地です。フィヨルドランド国立公園(テ・ワヒポウナム)にあり、ユネスコの世界自然遺産にも登録されている世界屈指のフィヨルドです。
このミルフォードサウンドの美しさが存分に楽しめると、秘かに人気を集めているクルーズツアーが「ミルフォードサウンド オーバーナイトクルーズ」。世界遺産のフィヨルドで過ごす特別な一夜。人数限定・憧れの人気ツアーの様子をこっそりとお伝えしましょう。
ニュージーランドの絶景を巡る、一泊二日の弾丸クルーズツアー
この人気クルーズツアーにはいくつかのプランが用意されていますが、今回体験したのは「Milford Wanderer Overnight Cruises(Leaving from Queenstown)」。観光バスで景勝地を巡り、世界遺産のフィヨルド「ミルフォードサウンド」にクルーズ船で停泊するという、観光バス+クルーズがセットになった一泊二日の弾丸ツアーです。ツアーで巡る場所は、『ホビット』の世界を彷彿とさせるような景色ばかり!
・クイーンズタウン
ワカティプ湖に面するクイーンズタウンの街並(C)Loco Yoneda
ツアーの起点はニュージーランドで最も美しい街と呼ばれる、南島屈指のリゾート地「クイーンズタウン」。小さくてオシャレな街には、絶景・アクティビティ・グルメ・カジノなど、休暇を存分に楽しめる全てが揃っています。クイーンズタウン周辺は『ホビット』のロケ地が点在しています。ここから観光バスで5〜6時間かけてミルフォードサウンドを目指します。
クイーンズタウンの近くを流れる、ターコイズブルーの水面が幻想的なカワラウ川。カワラウ川も『ホビット』のロケ地となった場所だとか
・テ・アナウ湖
クイーンズタウンから約3時間でテ・アナウ湖に到着。余談ですが、テ・アナウ一帯は『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のロケ地になったところです。
さあ、ここから景色が少しずつ変わり始めます。
テ・アナウからミルフォードサウンドまで続く道は「ミルフォード・ロード」と呼ばれ、ニュージーランドで最も美しいドライブルートだそう!
ミルフォード・ロード上には景勝地が点在し、観光バスはそのポイントを巡りミルフォードサウンドへ向かいます。ここからは、ミルフォード・ロード上にある名勝を紹介しましょう。
・エグリントン・バレー
山岳地帯に広がる草原。かつては氷河の氷で埋め尽くされていたそう。
・ミラー湖
ミルフォード・ロード上で有名な絶景ポイントがミラー湖です。澄んだ湖面は、美しい山々や青空を映し出します。
・モンキークリーク
標高2000m級の渓谷に囲まれた小川。水の純度が99%、無菌の清流、飲むと若返る、などモンキークリークについては諸説あり、その真偽について疑問ですが(笑)、ただ、飲める水であることは間違いありません!透明度が高く、自然の恵みを感じられるとても美味しい水です。
・ホーマートンネル
このトンネルは、ミルフォードサウンドへアクセスする陸上唯一のルートとも言えます。1953年にホーマートンネルが完成するまでミルフォードサウンドへは、険しい峠を超えるか外洋から船で渡るしか手段がなかったそう。
ホーマートンネルの付近では、ゴツゴツとした岩が無数に広がる草原があります。
何だかこの雰囲気、『ホビット』のワンシーンを連想させられます(C)Loco Yoneda
世界遺産のフィヨルドでクルーズ体験
長いミルフォード・ロードの果てに辿り着いたミルフォードサウンド。船着き場に付くとチェックイン。そして、いよいよ乗船です。
ミルフォードサウンドの見どころは、断崖絶壁に囲まれた壮大な景色。氷河の侵食によってほぼ垂直に削られた険しい山々が外洋まで続いています。実際には分かりませんが、その距離は15kmも続くという話しも。
世界中を探してもこういった場所は珍しく、貴重な景観なんだそう。
このミルフォードサウンドではグリーンストーン(翡翠の一種)が産出されます。その昔、ニュージーランドの原住民マオリがグリーンストーンを求めてこの地を最初に訪れたのが始まりだとか。その後大航海時代以降にヨーロッパ人が入植・開拓、時代とともに世界屈指の観光地となり、今に至ります。
ミルフォードサウンドで産出されるグリーンストーン。マオリは武器や魔除けとして加工し、身につけた(C) Loco Yoneda
ちなみに、『ホビット』3部作のいずれも、このミルフォードサウンドが映画のシーンに登場しています。
『ホビット 思いがけない冒険』では、巨大なワシの背中に乗って一行が山から脱出するという印象的なシーンが撮影された
さて、出航した船はフィヨルドをどんどん進み、外洋ギリギリのところで一度停泊。
ここから小さいボートに乗り換えて「ネイチャークルーズ」が始まります。「ネイチャークルーズ」では、小回りのきくボートでフィヨルドの見どころを巡りながら、ガイドがミルフォードサウンドの歴史や自然について解説してくれます。
また、ネイチャークルーズではなくカヤック体験を選ぶこともできますよ。
世界遺産のフィヨルドでカヤック体験!濡れるのは覚悟で(C)Loco Yoneda
アクティビティを楽しんで、サンセットを眺めると、夕食です。夕食後はダイニングでゆっくりと談笑したり、本を読んだりと自由に過ごします。
ミルフォードサウンドに沈む夕日(C) Loco Yoneda
フィヨルドの空一面に広がる、美しすぎる星空!
ミルフォードサウンドに夜が訪れると、辺りは静かな闇に包まれます。
そして、深夜0時、船の甲板に出てみると・・・・空一面に天の川が広がっていました!
無数に輝く星に、流れ星。その美しすぎる光景に、ただただ感動で立ち尽くしてしまいます。
この日は天候が良く新月だったこともあり、星空を眺めるには絶好の環境でした。
なぜ、ミルフォードサウンドでは星が美しく見えるのでしょうか?
それは、南極に近く空気が澄んでいること、断崖絶壁に囲まれており、また世界遺産であることから船の出入りも制限されているので、人工的な光が届きにくい環境ということが理由として考えられるそうです。
星空を堪能した後はゆっくりと就寝。そして朝を迎えると、クルーズ船は再びミルフォードサウンドを巡り、帰航します。
ミルフォードサウンドの清々しい朝(C)Loco Yoneda
険しい岩山から流れ落ちる滝を巡る場面も。滝のギリギリまで近づくクルーズ船(C)Loco Yoneda
ミルフォードサウンドを発った後は、クイーンズタウンまで再び絶景をバスで駆け抜けます。往路では巡れなかったポイントに立ち寄り、濃厚な一泊二日のツアーが終了です。
まるで別世界にきてしまったかのような、南島に広がる壮大な自然に、魂が揺さぶられた
印象深い旅でした。
ニュージーランドが『ホビット』のロケ地になった理由とは?
『ホビット』を撮影したピーター・ジャクソン監督がニュージーランドをロケ地として選んだ理由は何だったのでしょうか?監督は “ニュージーランドは中つ国として完璧だから『ホビット』のロケ地を他国で探すべき理由はない”と語っているそう。(※参照)
また、“原作者のJ・R・R・トールキンが本の中で描いている世界の様子は、ヨーロッパの先史時代に近い。だから、その世界を再現するには大昔のヨーロッパの風景が必要だった。ニュージーランドはそんな条件にピッタリ当てはまったんだ”と、あるインタビューでも答えています。(※参照)
ニュージーランドに残された、手つかずの豊かな自然。これが映画にロケ地として選ばれたポイントだったのではないでしょうか。ニュージーランドは世界で一番若い国ですが、世界でも数少ない太古の自然が息づく貴重な場所なのかもしれません。
日本からミルフォードサウンドへは、ニュージーランド航空でオークランド国際空港へ向い、国内線に乗り継ぎクイーンズタウン空港へ。その後はツアーで目的地まで行くのが楽ですよ。クイーンズタウンでの滞在プランはこちらを参考にどうぞ。
[Photo by shutterstock.com、Loco Yoneda]
[取材協力:オークランド国際空港(Auckland International Airport Limited)]
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