【世界遺産】大切な何かを教えてくれる町「平和の橋」が見守るモスタル

Posted by: 小坂井 真美

掲載日: Mar 29th, 2015

イスラムとカトリックが共存する世界遺産の町 「平和の橋」が見守るモスタル
バルカン半島に位置するボスニア・ヘルツェゴヴィナの小さな町「モスタル」。ヨーロッパとは思えないようなオリエンタルな雰囲気が漂うこの町は歴史的、地理的背景より古くからイスラム教徒とカトリック教徒が共存してきました。

エキゾチックな雰囲気が漂う旧市街

世界遺産にも登録されているモスタルの旧市街には、エキゾチックで美しい景色が広がります。

イスラムとカトリックが共存する世界遺産の町 「平和の橋」が見守るモスタル

イスラムとカトリックが共存する世界遺産の町 「平和の橋」が見守るモスタル
町にはカトリック教会の他にイスラム教のモスクも建つ (C)Mami Kosakai

イスラムとカトリックが共存する世界遺産の町 「平和の橋」が見守るモスタル
(C)Mami Kosakai

どこか中東的な雰囲気に包まれた町を歩いていると、ヨーロッパにいることを忘れそうになります。

イスラムとカトリック、両民族を繋ぐ橋

モスタルのシンボルである石橋「スターリ・モスト橋」。

現地の言葉で「古い橋」という意味のこの橋は、町がオスマン・トルコ帝国に支配されていた16世紀に建設されました。橋の西側にはクロアチア系(カトリック教徒)住民が、東側にはイスラム系の住民が生活をしており、長い間橋を行き来し平和に共存をしてきました。しかし、この町を悲しみのどん底に突き落とす悲劇が襲います。

民族を引き裂いた内戦

イスラムとカトリックが共存する世界遺産の町 「平和の橋」が見守るモスタル
「93年を忘れるな」と刻まれた、橋の近くに安置された石

1991年に勃発した旧ユーゴスラビア内戦。「民族紛争」とも呼ばれるこの内戦では、領土内に住むクロアチア系住民、イスラム系住民、セルビア系住民により血を血で洗う抗争が繰り広げられました。民族が入り混じるこの町は泥沼の戦いに巻き込まれ、多くの住人が命を落し、両民族の平和を見守り続けてきたスターリ・モスト橋も爆破されたのです。

橋は再び平和の象徴に

イスラムとカトリックが共存する世界遺産の町 「平和の橋」が見守るモスタル

そんな悲しい過去を持つスターリ・モスト橋ですが、戦後、両民族の努力により2004年に再建され、町ももとの平和で美しい姿を取り戻しました。

一方で、町はずれの至る所に破壊されたまま放置された建物や、銃弾の跡が残る民家などが残されています。観光客で賑わう平和で美しい町の様子が、その影の部分を一層浮き立たせます。

町の人々も陽気で明るく、つい最近ここで言葉で表せないくらい悲惨な出来事が起きたとは想像しがたいことでしょう。モスタルは美しい街並みを楽しめるだけではなく、私たちにとって大切な何かを教えてくれる町なのです。

※ボスニア・ヘルツェゴヴィナへの渡航に関しては外務省より「十分注意してください」との注意喚起が出されています。渡航をご検討される際は「外務省 海外安全ホームページ」をご参照ください。

[Photo by Shutterstock.com]

PROFILE

小坂井 真美

小坂井 真美 ライター

クロアチアの首都ザグレブ在住。現地での色々な仕事の傍ら、フリーライターとしてクロアチアを中心とした南東欧諸国について執筆。趣味は街歩き、食べ歩き、寺歩き、そぞろ歩き。仲間、明るい太陽とおいしいごはんがあれば幸せ。人生は旅。たくさんのモノ・人・土地と出逢いをエネルギーに、日々心の赴くままに邁進中。

クロアチアの首都ザグレブ在住。現地での色々な仕事の傍ら、フリーライターとしてクロアチアを中心とした南東欧諸国について執筆。趣味は街歩き、食べ歩き、寺歩き、そぞろ歩き。仲間、明るい太陽とおいしいごはんがあれば幸せ。人生は旅。たくさんのモノ・人・土地と出逢いをエネルギーに、日々心の赴くままに邁進中。

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