天に轟くゼウスの雷がごとき巨人の冠、モンテリジョーニ
中世ルネッサンス期の偉大な詩人ダンテ・アリギエーリが作品「神曲」の中で、“天に轟くゼウスの雷がごとき巨人の冠”と詠った町がイタリア・トスカーナ州にあります。小高い丘の上にあるその町は、周囲をぐるりと壁に囲まれており、その姿はまるで丘の上に大きな王冠をのせたよう。
思わず詩に詠みたくなるほど印象的な町、モンテリジョーニをご紹介します。
町を守り続けた壁
時は中世、ルネッサンス文化が花開いた頃、当時絶大な勢力を誇っていたフィレンツェ。そのフィレンツェに並ぶ勢いで力を持っていたのが、キャンティの大地を隔ててあるシエナでした。この2つの都市は常に勢力を競い合い、戦争をしていました。
モンテリジョーニの町は、シエナからフィレンツェ方面に少し進んだ、キャンティの丘陵地帯にあり、シエナの最前線を守る町として機能していました。そのため、町ごとぐるりと壁で囲った、要塞のような形をしているのです。
その壁の上には見張り用の塔が並んで建っており、それが遠くから見るとまるで王冠の飾りの様に見え、独特の美しさとなっているのです。
その壁に守られ時を止めた、美しき中世の町
壁に囲まれた町の直径は約170メートルととても小さな町。壁の中の町は中世に建てられた教会や建物など、そのままに残されており、訪れた人々はまるで中世にタイムスリップしたような気分になります。
かつて、町を、人々を敵から守った壁は、時代の激しい流れからも守ってくれたのでしょうか。大切に守られた町並みは、今も活き活きと当時の様子を知らせてくれます。
強固な壁に守られた町は、やさしく穏やかな空気に包まれています。何かに守られている安心感、それはきっとこういうものなのかもしれないと、ここを訪れて思いました。
中世の町に立って、その当時のものに触れつつ、その頃を思うと色々なことがよりよく見えてきます。そうして過去に立ってみてから、さらに今の自分を見てみたりと、そんな風に色々と思いを馳せることができるのも旅の醍醐味ですよね。
みなさんもこの町で中世へタイムスリップしてみませんか?
[All Photos by Ryoko Fujihara]