【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

Posted by: 藤原亮子

掲載日: Jan 16th, 2016

中世ルネッサンス文化花開いた、歴史深い街フィレンツェには、長い歴史の中に隠れた秘密がたくさんあります。そのうちのひとつが、ウフィッツィ美術館から川向こうのピッティ宮殿を結ぶ秘密の通路「ヴァザーリの回廊」。この回廊のお話は、隠れスポットとして、今はガイドブックにも載っていますので、お好きな方ならご存知かもしれません。ですが、その秘密の回廊には、秘密の礼拝室があるのは、実際にこの回廊を歩いた人以外に知る人は少ないでしょう。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

そんなフィレンツェの秘密の中にあるもうひとつの秘密、バヴァザーリの回廊の礼拝室をご紹介します。

秘密の通路「ヴァザーリの回廊」

ヴァザーリの回廊は、16世紀、当時は政務を行うオフィスとして使われていた現在のウフィッツィ美術館と、フィレンツェを支配していたメディチ家が住んでいたピッティ宮殿を結ぶ、メディチ家専用の通路として造られました。

専用通路なんて豪華な話ですが、そういう優越感よりは、町を歩く危険を恐れてといったところがあったようです。なにぶん、栄華を誇ったフィレンツェのほとんどの財を牛耳っていたのですから、その財産を狙って襲われる危険性が多いにあったのだと思われます。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

こちらはウフィッツィ美術館からみた回廊。右手の建物からのびた廊下が、ずっと橋の上を渡り、その向こうまで伸びているのが分かりますね。これがヴァザーリの回廊です。下から見ると、アーケードや橋、周囲の建物とつながってよく分かりませんが、実はこの中は通路になっているのです。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

回廊の窓から見たベッキオ橋はこんな感じ。近代になって回廊の真ん中に大きな窓がもうけられましたが、造られた当時はこのような小さな丸窓のみ、しかも下からは見えず、回廊からそっと町の様子を伺うことができるように造られています。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

現在、期間と人数を限定して、予約制で公開されているヴァザーリの回廊には、メディチ家の所蔵していた肖像画が飾られています。

秘密の回廊にある秘密の礼拝堂

さて、この秘密の回廊にある、さらなる秘密、回廊の途中にある礼拝室のお話。下の写真の右手にある窓の向こうがその礼拝室です。ですが、なぜ廊下に礼拝室があるのでしょう?

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

その理由はこのように伝えられています。ベッキオ橋を渡ったすぐ先には、サンタ・フェリチタ教会があります。回廊はちょうどこの教会の前を通ってピッティ宮殿へとつながっているのですが、教会の前を通るのに、お祈りをしないのは良くないと、わざわざ教会に面する所に礼拝室をもうけたのです。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

こちらがそのサンタ・フェリチタ教会。フィレンツェで最も古い教会とされており、基となる建物はローマ時代に建てられ、その後何世紀もかけて、何度も再建、改装されてきた、深い歴史を持つ教会です。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

回廊の礼拝室からはこの教会を臨むことができ、メディチ家の人々は、一般の人に混じることなくこの専用の礼拝室からミサをうけることができたそうです。

【フィレンツェの秘密の秘密】ヴァザーリの回廊にある秘密の礼拝室

中央扉の上のバルコニー部分が礼拝室、その奥の窓の向こうが回廊となっています。バルコニーの位置はかなり高く、下からではバルコニーにいる人は見えないようになっています。

一見優雅に思う専用回廊は実は町歩きの危険を恐れていたから、廊下にわざわざ造った礼拝室はお祈りせずに教会を通り過ぎることができなかったためなんて、なんだか今の感覚ではすぐに思いつかない話です。歴史に隠れた秘密をのぞけば、その当時のことがより見えてくる気がしておもしろいですよね。

[All photos by Ryoko Fujihara]

PROFILE

藤原亮子

Ryoko Fujihara フォトグラファー&ライター

イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、’09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、イタリアで撮影・執筆活動をしつつ、更なる美しい景色を求めてカメラ片手に旅を続けている。

イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、’09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、イタリアで撮影・執筆活動をしつつ、更なる美しい景色を求めてカメラ片手に旅を続けている。

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