ルーマニアのトランシルヴァニア地方にあるシギショアラは中世の面影を色濃く残す城塞都市。「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなったヴラド3世の生地としても知られています。中世にタイムスリップしたかのような気分が味わえる旧市街を歩いてみましょう。
トランシルヴァニアの宝石・シギショアラ
多くの国と国境を接するルーマニアにはさまざまな民族が流入してきました。シギショアラも12世紀に東ドイツのザクセン地方からやってきたドイツ人によって築かれた街です。
旧市街は中東欧でもっとも中世の面影を色濃く残す街のひとつで、シギショアラ歴史地区として世界遺産にも登録されています。旧市街は城壁に囲まれた丘の上にあり、要塞や家、店などの中世の建造物がそのままの姿で残っています。オレンジ色の三角屋根が連なる街並みは、その美しさから「トランシルヴァニアの宝石」とも称されるほど。
見張りの塔
シギショアラを築いたドイツ系のザクセン人たちはギルド(職人組合)を結成し商工業を発展させただけでなく、自ら街の防衛や行政も担っていました。
他民族の侵入を防ぐため、各ギルドは14基の見張りの塔を建てました。そのうち現存するのは9基で、「仕立屋の塔」、「皮革加工職人の塔」、「肉屋の塔」、などギルドの名前を冠したユニークな名称がついています。
シギショアラのシンボル・時計塔
街のシンボルとなっているのが高さ64メートルの時計塔。シギショアラがギルドによる自治都市になったことを記念して14世紀に建てられたもので、街で最も親しまれている塔です。時間になると塔の中から7つの人形が現れダンスを披露するしかけも当時のまま。
数百年もの時を経てもなお変わらず時を刻み、人々を楽しませ続けている時計。なんてロマンチックなんでしょう。時計塔内は歴史博物館になっており、塔にのぼると緑に囲まれた美しい中世の街並みが見渡せます。
ヴラド3世の生家
ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとして有名なヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)はシギショアラの出身。敵を串刺しにするなどの残忍な処刑方法と、スラブ人のあいだにあった吸血鬼伝説とが結びつけられ小説の題材となりました。
鮮やかな黄色をしたヴラド3世の生家は現在レストランとして利用されています。血をイメージしたドラキュラにちなんだメニューもあり、シギショアラに行くなら一度は入ってみたいお店です。
パステルカラーの可愛らしい家々を眺めながら石畳の路地を歩けば数百年もの間ほとんど変わらない街並みに感激することでしょう。この飾らない素朴さがシギショアラの魅力。世界遺産の街となった今でも地元の人々の暮らしがすぐそこにあり、ぬくもりに溢れています。
中世のまま時をとどめたかのようなゆったりとした空気に身をまかれば、安らぎで心も満たされるはずです。
[ルーマニア政府観光局]
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