雄大な自然景観が広がる北アイルランドのコーズウェイ・コースト。ここに「巨人が造った」という伝説が残るジャイアンツ・コーズウェイがあります。
6角形の石柱が無数に連なる風景は、まるで異次元に迷い込んだかのよう。世界遺産にして、世界十指に入る奇景を訪ねてみましょう。
世界屈指の奇景が広がる世界遺産、ジャイアンツ・コーズウェイ
イギリス領北アイルランド北部の沿岸部、コーズウェイ・コーストは、北アイルランドを代表する観光地。なかでも、ジャイアンツ・コーズウェイは、世界でも十指に数えられる奇景として知られており、その類まれなる自然景観から世界遺産にも登録されています。
大小の6角形の石柱が並ぶ様子は、自然の造形というよりもむしろ現代アートのよう。わが目を疑いたくなるほどに不思議な光景に、ただただ圧倒されます。
マグマと氷河が生み出した自然の芸術
これほどまでに特異な景観を造り上げたのは、数千万年前に端を発する大自然の営みです。およそ6000万年前に起こった地殻変動により、この地に膨大なマグマが流出しました。しだいにその溶岩台地に堆積物の層ができ、約1万5000年前になると、この大地は氷河で覆われます。
その後、長い歳月をかけて氷河が大地を削り、古い溶岩台地の地肌が露出したのが現在のジャイアンツ・コーズウェイなのです。
一口に「石柱」といっても、黄みがかったものや黒みがかったもの、背の低いものや高いもの、あるいは表面が丸みを帯びたものなどさまざま。まったく同じ色、形をした石柱は存在していないかのようです。これらの石柱一本一本が、大自然が造り上げた作品なのです。
伝説の巨人、フィン・マックール
「ジャイアンツ・コーズウェイ」とは、「巨人の石道」の意味。この名前は、フィン・マックールという巨人がこれらの石柱群を造ったという伝説にちなんでいます。
高さおよそ12メートルの石柱が整然と並ぶ「巨人のオルガン」や、ブーツのような形に浸食された「巨人のブーツ」など、巨人伝説にちなんで名づけられた見どころも点在。
彼が石道を造った目的には諸説あり、対岸のスコットランドに住む巨人と戦いに行くためだとか、スコットランド北西のヘブリディーズ諸島に住む巨人の女性に恋をし、彼女がアイルランドに渡れるようにするためだとか、さまざまな説が語り継がれてきました。
「巨人が造った」というのはあくまでも伝説に過ぎませんが、ジャイアンツ・コーズウェイの驚異的な風景を見ていると、フィン・マックールが実在したのではないかという気さえしてきます。
ダイナミックな自然を楽しむハイキング
ジャイアンツ・コーズウェイは、およそ8キロにおよぶ海岸線に広がっており、高さ30~80メートルの断崖に沿って周遊路が整備されています。遊歩道から眺める雄大な景色は、魂へのご褒美。石柱が広がるエリアも自由に歩くことができ、心ゆくまで大自然の驚異に触れることができます。
自然が生み出した芸術、ジャイアンツ・コーズウェイは「巨人が造った」という伝説をつい信じたくなるほど、神秘とパワーに満ちています。
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