ローマの時代の水道橋が残る世界遺産の街として知られるスペインのセゴビア。ここに、「白雪姫」の城のモデルとなったと噂される美しく壮大な城があります。
それが世界遺産にも登録されている「アルカサル」。波乱万丈の歴史を歩み、時代とともにその姿を変えてきた古城は、時を超えて私たちを魅了し続けます。
世界遺産の街・セゴビア
セゴビアはスペインの首都・マドリードの北西約90メートルに位置する古都。その歴史は古く、古代から人が居住していたことがわかっています。イスラム勢力の支配を受けた後、11世紀以降はカスティーリャ王国の中心都市として栄えました。マドリードから日帰りできるアクセスのよさも手伝って、多くの観光客でにぎわっています。
セゴビアを象徴する建造物である、1世紀ごろに建設された水道橋は、最も優れたローマ時代の遺構のひとつ。この水道橋と、中世の面影を残す旧市街は、「セゴビア旧市街と水道橋」として世界遺産に登録されています。
「白雪姫」のモデル・アルカサル
世界遺産「セゴビア旧市街と水道橋」の一角をなすのが、エレスマ川とクラモレス川が合流する場所にある岩山にそびえるアルカサル。「アルカサル」はスペイン語で「城」や「砦」の意味で、セゴビアのアルカサルはディズニー映画「白雪姫」の城のモデルになったといわれています。
スペインに数ある城のなかでも、最もメルヘンチックな城として名高いセゴビアのアルカサル。実際に目にすると、その壮大さは圧巻。高さの異なる塔が折り重なるようにして複雑なシルエットを描く光景はなんとも幻想的です。
まさに「おとぎの国」を思わせるその姿を見れば、「白雪姫」の城のモデルになったというのもうなずけます。
900年の歴史をもつ堅固な城砦
そのメルヘンチックな外観とは裏腹に、セゴビアのアルカサルはもともと軍事目的で築かれた砦でした。その基礎はおよそ900年前、イベリア半島を支配していたイスラム勢力によって築かれたものです。
その後レコンキスタによって、キリスト教徒がイベリア半島を奪還。アルカサルは歴代カスティーリャ王の居城となりました。16世紀のフェリペ2世の時代には、フェリペ2世と4番目の王妃アナ・デ・アウストリアの婚礼の儀が執り行われるなど、アルカサルはスペイン王室にとってきわめて重要な存在でした。
また、フェリペ2世の統治下では大規模な改築も行われ、中央ヨーロッパを思わせる華やかな城へと生まれ変わりました。歴代の王たちによる増改築や拡張により、アルカサルは時代とともにしだいにその姿を変え、スペインきっての美しい城となったのです。
王宮としての役割を失い牢獄に
中世を通じて歴代カスティーリャ王たちの居城であったアルカサルでしたが、マドリードに新しい王宮が建設されると、王族たちは生活の拠点をマドリードに移転。
王宮としての役割を失ったアルカサルは、2世紀にわたって牢獄として使われたこともありました。アルカサルが再び脚光を浴びたのは、1762年に王立砲兵学校が創設され、アルカサルがその本拠となったときのこと。
しかし、その1世紀後には3日にわたって燃え続けた火事により、アルカサルは天井などに大きなダメージを受けてしまいます。可愛らしい外観とは裏腹に、アルカサルが歩んできた歴史は実に波乱万丈だったのです。
輝きを取り戻した現在のアルカサル
現在はかつての美しい姿を取り戻しているアルカサル。内部は博物館として公開されていて、城内では「玉座の間」「ガレー船の間」といった豪華な部屋の数々や牢獄跡などが見学できます。
とりわけ、壁や天井に施された精緻な装飾や色鮮やかなステンドグラスの美しさは格別。アルカサルが王族の居城であった当時の繁栄ぶりがしのばれます。
難航不落の城砦としての機能と、贅を尽くした王宮としての役割を併せ持っていたセゴビアのアルカサル。このスペイン屈指の名城は、あなたを歴史の舞台へといざなってくれます。
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