南フランスのコート・ダジュール地方。「紺碧海岸」の意味をもつこの地方は、文字通り碧い海と真っ青な空、パステルカラーの町並みが広がる色彩の楽園です。
その魅惑的な風景は、ピカソやマティス、シャガールといった数々の芸術家をも惹きつけました。
ただそこにいるだけで元気がわいてくるような癒しの土地、コート・ダジュールで訪れたい6つの美しい町をご紹介します。
ニース
「リヴィエラの女王」とも称される、コート・ダジュールの中心都市ニース。この町を抜きにしてコート・ダジュールは語れないといっても過言ではありません。
ビーチに面して豪華なホテルが建ち並ぶ大通り、「プロムナード・デザングレ」の華やかな光景は世界的にも有名。遊歩道のそばに植えられたシュロの木が南国ムードを醸し出し、高級リゾートらしいゴージャスな雰囲気を肌で感じることができます。
その一方で、ニースは思いがけず庶民的な表情も見せてくれる町。ニースはかつて、現在のイタリアを中心とするサルディーニャ王国の支配下にあったため、旧市街には今でもイタリア文化の名残が見られます。
黄色や赤のカラフルな建物のあいだを狭い路地や坂道が走り、民家には洗濯物がはためきます。ニースに「高級リゾート」のイメージしかもっていなかったとしたら、イタリアの下町のような風景に驚くかもしれません。
ニースを訪れたら、旧市街の東側にある城跡の丘からの眺めは必見。「天使の湾」と呼ばれる美しいカーブを描く海岸線と、赤茶屋根の建物が織り成す絶景が楽しめます。
カンヌ
カンヌ映画祭で世界的にその名を知られるカンヌ。ニースと並ぶコート・ダジュールの高級リゾート地でありながら、人口7万人とニースよりもこぢんまりとしていて、主要な見どころは徒歩で周れるのが魅力です。
海岸に沿って東西に走るクロワゼット通りには、世界に名だたる高級ブランドや5つ星ホテルが軒を連ね、歩いているだけでプチセレブ気分に。
カンヌもニース同様、華やかなリゾート地としての顔と昔ながらの下町の顔をあわせ持つ町。シュケの丘には旧市街が広がり、狭い坂道に漁師たちの家が建ち並ぶ庶民的な景色が広がっています。19世紀までは小さな漁村にすぎなかった、古き良きカンヌの面影を見つけてください。
シュケの丘を登りきったところにあるノートル・ダム・ド・レスペランス教会の塔は、カンヌ市街を一望する絶好のビュースポット。
カンヌからフェリーに乗って、サントノラ島への日帰り小旅行に繰り出すのもおすすめ。レランス大修道院を抱えるサントノラ島は、島全体がシトー修道会の所有となっている修道院の島。
荘厳な修道院と開放的な碧い海とのコントラストに、心が洗われるような気がするはずです。
サン・ポール・ド・ヴァンス
サン・ポール・ド・ヴァンスは、コート・ダジュール地方に数ある「鷲(わし)の巣村」のひとつ。外敵の侵入を防ぐため、断崖の頂上に築かれた村の風景が鷲の巣に似ていることからその名が付きました。
サン・ポール・ド・ヴァンスは、中世の面影を色濃く残す村でありながら、現代アートの村として有名。石造りの建物が並ぶ美しい村には無数の現代アートのオブジェやギャラリーがあり、歩くだけでアートなひとときが過ごせます。
アートな村だけあって、ショップやレストランもハイセンスなお店がいっぱい。フランス内外からおしゃれな女性たちが集まってきます。
散策するだけでもアートに触れられるサン・ポール・ド・ヴァンスですが、アート好きならシャガールやミロ、ジャコメッティの名作の数々に出会える「マーグ財団美術館」も見逃せません。
豊かな水と緑に囲まれた静かな環境で、巨匠の絵画や彫刻の数々に触れる時間は格別。情緒たっぷりの中世の村の風景と現代のアートを同時に楽しめるとは、なんて贅沢なんでしょう。
トゥレット・シュル・ルー
トゥレット・シュル・ルーは、深い谷を見下ろす山の上にひっそりとたたずむ鷲の巣村。村のなかに一歩足を踏み入れると、一瞬にして数百年もの時をさかのぼったかのような錯覚にとらわれます。
ざっくりと石を積み上げて造られたハチミツ色の家々が並ぶ小さな村。その風景は中世からほとんど変わっていないように見えますが、美しく手入れされた古い家々のなんと美しいこと。
あまり観光地化されておらず、ひっそりとした時間が流れるトゥレット・シュル・ルーですが、この村が多くの観光客でにぎわう時期があります。それが、毎年2月の最終週末に開かれるスミレ祭りの時期。
トゥレット・シュル・ルーは、「スミレの村」として名高く、11月から3月の花の時期には村じゅうがスミレの芳香でいっぱいになります。
トゥレット・シュル・ルーを訪れたら、スミレの石鹸やスミレのリキュール、スミレのお茶など、さまざまなスミレ製品をお土産にどうぞ。村の大通りにあるお店「TOM’S」で食べられる優雅なスミレのアイスクリームも必食です。
エズ
ニースとモナコの中間に位置するエズは、地中海を見下ろす絶景の村。「コート・ダジュールに数ある鷲の巣村のうち、どれかひとつだけ行くとしたらエズに行け」ともいわれるほど、特別な風景が待っています。
海から垂直に切り立った海抜420メートルの断崖の上に築かれたエズの異名は「海と空のあいだに浮かぶ村」。高台に設けられた熱帯植物園は、エズの家並みと地中海を同時に眺められるこの上なく贅沢な絶景スポットです。
山に隠れるようにして築かれた村には、今も中世そのままの優しい風景の数々が。海と村、両方の美しさを堪能できるエズは、素朴でありながらこの上なく豊かな場所なのです。
マントン
フランスとイタリアの国境の町、マントンは「レモンの町」として有名。毎年2~3月にかけて世界的に知られるレモン祭りが開催され、町じゅうがビタミンカラーと爽やかな香りに包まれます。
祭りの時期でなくても、地元の市場にはレモンが並び、町なかではレモン製品を売る土産物屋が軒を連ね、レモンがあしらわれた陶器が家々の外壁やベンチを飾ります。
高級リゾートのイメージが強いコート・ダジュールにありながら、マントンはどこか素朴で飾らない空気感が魅力。イタリア文化の影響を受けたカラフルな家々が、さんさんと降り注ぐ太陽の下で明るくあたたかい表情を見せてくれます。
マントンを語る上でかかせないのが、この地を愛したジャン・コクトーの存在。1900年代、、詩人や小説家、画家、脚本家などとして多方面で活躍し、「時代の寵児」と呼ばれた彼は、マントンの地に、自らの人生の集大成を収める美術館を造りました。それが、海辺にたたずむ17世紀の要塞を利用した要塞美術館。
さらに、2011年には新たなジャン・コクトー美術館もオープン。ふたつでひとつのコクトー美術館は、コクトーならではの幻想的な世界観で訪れる人々を魅了し続けています。
美しい自然風景と歴史的な町並みが調和したコート・ダジュール地方では、訪れる町ごとに異なる魅力に出会えます。あなたもハッピーを見つけに紺碧の海岸へ出かけませんか。
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