海外旅行などで外国に行って、「国際共通語」とも言える英語をカタコトで話そうとするとき、都市名を表す英単語の発音に戸惑ってしまう場面はありませんか? 自分の知っているカタカナ読みと、英語読みが全く違ってよく分からない、といったような・・・。
そこで今回は世界の有名都市の中から、英語の発音と日本語のカタカナ表記が大きく異なる場所をピックアップしてみました。
(カタカナ)ウィーン→(英語)ヴィエナ
最初はオーストリアの首都ウィーン。「音楽の都」としても世界的に知られていますが、英語での表記は「Vienna」で、発音は「ヴィエ ナ」と言った感じ。太字にした部分にアクセント(強く発音する)が来ます。どうしてウィーンとヴィエナ、こんなに違うのでしょうか。
そもそもオーストリアの国語であるドイツ語では、首都を「Wien」と表現しています。ドイツ語「Wien」の発音記号を調べると「viːn」、カタカナで書くと「ヴィーン」といった感じです。当たり前と言えば当たり前ですが、ウィーンというカタカナ読みは、ドイツ語の発音をそのまま音写して表現しているのですね。
では、どうして英語では「Wien」のつづりが「Vienna」になり、発音も変わるのでしょうか。
ドイツ語に詳しい知人に聞くと、ドイツ語では子音の「W」の発音がなく、「W」を「V」のように発音するといいます。「ウィーンの」という意味のドイツ語「Wiener」が英語化して「Viener」→「Vienna」となり、いつの間にか首都そのものを指すようになったのかもしれませんね。
(カタカナ)アテネ→(英語)エァスィンズ
次はギリシアの首都アテネ。英語表記だと「Athens」で、発音は「エァ スィンズ」となります。われわれの知る「アテネ」とはほど遠いですよね・・・。この違いは何なのでしょうか。
手元にある『記者ハンドブック』(共同通信社)の外国地名一覧を見ると、一部の新聞では「アテネ」と表記するように書かれています。その横には「Athinai」という謎の表記も。これがヒントになりそうですね。
調べてみると「Athinai」はギリシア語「Αθηναι」のローマ字表記で、音をそのままカタカナ表記すると「アスィナイ」になるのだとか。
一方で『Oxford English Dictionary』のウェブ版によると、「Athinai」を英語流に発音すれば「アスィ ネ(aˈθine)」になると書かれています。ギリシア語「θ」と英語「th」の音は日本語にはないので「t」に変えてしまうと「アティナイ」「アティネ」になります。なんとなく「アテナイ」「アテネ」という感じですね。
やはりウィーンと同じで、アテネに関しても現地の単語の音を直接、カタカナ表記しているみたいですね。
(カタカナ)ジュネーブ→(英語)ジェニーヴァ
(C)Roman Babakin / Shutterstock.com
フランスとの国境も近い、スイスの湖畔の町ジュネーブ。英語では「Geneva」と書いて、「ジェニー ヴァ」といった感じで発音します。こちらも現地の読みがそのまま日本語にカタカナで入ってきているのでしょうか。外務省の情報によるとスイスの国語は、
<独語(64%),仏語(23%),伊語(8%)>(外務省のホームページ より引用)
とあります。『Oxford English Dictionary』のウェブ版で調べると「Geneva」は英語表記で、スイスでは母国語の1つであるフランス語表記「Geneve」で通じていると分かります。
フランス語「Geneve」の発音は「ジャネ ヴ(ʒənɛv)」といった感じ。発音記号の「ə」は「ア」にも「イ」にも「ウ」にも「エ」にも「オ」にも聞こえる、あいまい母音と言われる音になります。
そう言われると「ウ」にも聞き取れますから、「ジャネブ」→「ジュネヴ」→「ジュネーブ」と、日本語のカタカナが作られたのかもしれませんね。
(カタカナ)ミュンヘン→(英語)ミューニック
次はドイツのミュンヘン。サッカーの強豪チームであるバイエルン・ミュンヘンの本拠地がある都市ですね。英語では「Munich」と書き、発音では「ミュ ーニク」といった感じになります。
今までと同じく、母国語のドイツ語表記を見てみると「München」とあります。『Oxford English Dictionary』のウェブ版で調べると、ドイツ語「München」の発音は「ミュン ヒン(ˈmʏnçn)」だと分かります。ミュンヘンというカタカナ表記はやはり、母国語の音から来ているようですね。
(カタカナ読み)エルサレム→(英語)ジェル―サラム
最後はエルサレム。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地として国際的な知名度を誇る都市ですね。英語だと「Jerusalem」と書き、発音は「ジェル― サラム」と言った感じになります。
日本の外務省によると、現地の母国語はヘブライ語とアラビア語。英語「Jerusalem」に関しては、現地の言葉から何段階も変化をして、形を成していると分かります。
ヘブライ語「יְרוּשָׁלַיִם」(イェルサライム)の音をそのままギリシア文字で音写した「Ἱεροσόλυμα」(イェロウソリマ)があり、そのギリシア語からローマ字で「Hierosolyma」(ヒェロソリュマ)が生まれ、英語で「Jerusalem」となり、英語風に発音して「ジェル― サラム」になったと、信ぴょう性は定かではありませんが、一部のインターネット情報にありました。
いずれにせよ「エルサレム」というカタカナ表記も、シンプルに現地の発音「イェルサライム」から直接音写したみたいですね。
以上、英語の発音とカタカナの読みが大きく異なる世界の都市の代表例を取り上げましたが、いかがでしたか? カタカナの地名は当然と言えば当然ですが、現地語の音をベースに音写されているみたいです。
しかし英語の場合は、元となる言語のローマ字(ラテン文字)表記をベースにつづりを変えたり英語読みにしたりしているため、結果としてオリジナルと大きく発音の異なる言葉が出来上がってくるのかもしれませんね。
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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