英語のクレーム表現を考える今回の連載。掲載された英文は全てネイティブスピーカーのチェックが入っています。いざとなったら、キーワードを取り出して、そのまま使ってみてくださいね。
連載の第4回目の今回はホテル編。まずは到着したところからのクレーム表現を考えてみましょう。
予約が取れていなかった場合は、何て苦情を言う?
最初は到着して、
「Hello. I like to check-in, please.」(こんにちは。チェックインしたいのですが)
などと話しかけます。そのとき、
「I’m afraid it seems that we do not have your reservation.」(申し訳あげにくいのですが、お客様の予約は入っていないようです)
などと返答が来ました。こちらはしっかりと予約をした証拠があります。さて、何と言いましょう。
基本的な考え方は連載の初回に示していますが、今回も同じように上述の表で状況を整理してみます。ホテルのフロント係は、初対面の相手ですね。こちらは確実に予約を入れているのですから、部屋を用意する責任や義務が相手にはあると言えます。よって関係はD。
次に迷惑の度合いを考えてみましょう。海外の旅先で予約していたホテルに予約が入っておらず、泊まる場所がなくなったとすれば一大事。負担は大きいと考えられますので、同じDでもD-で、「慎重にクレームと要求」から「普通にクレームと要求」に落としても問題ないと考えられます。
ただ、相手はこちらと対等の立場にあります。頭ごなしに改善命令を出したり、文句や苦情をぶつけたりするわけにはいきません。直接的な苦情を伝えるよりも、前後に言葉を尽くし、相手を思いやりながら相手の心を動かしていく戦略が求められます。
「I see.」
と、一度相手の言葉を受け入れた上で、
「But I’ve received a confirmed reservation by e-mail. Would you like to see it?」(でも、予約確認メールを受け取っています。見ますか?)
などと、下線で状況を説明し、こちらに不備がないむねを伝えます。受付を担当しているスタッフ本人のミスとも言えませんので、wouldなどを使って少し言葉の丁寧度を上げてもいいかもしれません。
隣の部屋の人がうるさいと苦情を言う場合はどうする?
筆者は友達と出かけたロサンゼルスのホテルで、はしゃぎすぎて隣の部屋のアメリカ人から扉をノックされ、苦情を言われた経験があります。ただ、相手は明らかに若輩の私たちに対しても、敬意を持って接してくれている雰囲気がありました。大いに反省した記憶があります。
では逆に自分たちの隣の部屋の人がうるさい場合、どうすればいいのでしょうか?
相手は初対面です。こちらの「静かにしてほしい」という要求に、相手は応じる義務と責任があるのでしょうか。この辺りは微妙なところですが、ある意味でホテルは公共の場所である以上、一定のマナーに基づいて行動が求められるはずです。そこで関係はDにしましょう。
迷惑度に関しては、隣の人の騒音の大きさ、時間帯によって変わってくると思います。クレームを言いたくなるほどの事態を想定していますから、それなりに不快で負担が大きいと解釈しましょう。同じDでも丁重さや慎重さを格下げしたD-、「慎重にクレームと要求」を「普通にクレームと要求」に落としても問題ないと考えられます。
ただ、相手は対等の立場にあります。頭ごなしに苦情を言ったり、直接的すぎる表現でののしったりすると、けんかになる恐れがあります。言葉を尽くし、状況を説明した上で、相手に分かってもらう工夫をしたいですね。本当はフロントを通して伝えた方が安心ですが、カジュアルな宿などでは自分で動かなければいけません。ノックをして、
「Excuse me.」
と声を掛けます。相手の返事が扉越しに聞こえたら、あるいは扉を開けてきたら、
「I’m staying in the next room. Sometimes I hear loud banging from your room. Can you please try to keep the noise down?」(隣に泊っている者です。ときどき、大きな物音があなたの部屋から聞こえます。物音を気にしてもらうことはできますか)
などと、前置きをして自分を名乗ってから、言葉を尽くして状況を説明してください。決して、相手を責めなじるような態度は取りたくないです。
シャワーでお湯が出ない場合は、どのように苦情を言う?
東南アジアなどの南国では、そもそもお湯が出る仕組みを持っていない宿泊所もあります。この手の宿泊所に泊った場合は仕方ありませんが、一応熱いシャワーが出ると考えられるホテルなのに、シャワーが出ない場合は、どのようにクレーム(complaint)を言えばいいのでしょうか。
苦情を言う相手は、ホテルのフロントスタッフ。初対面か、初対面に近い相手ですね。熱いシャワーが出ると当然期待できるグレードのホテルに泊まっている場合は、こちらの「熱いシャワーを浴びたい」という要求に、相手は応じる義務や責任があるはずです。よって関係はDですね。
熱いシャワーが出ないという状況は、どれほどの迷惑があるでしょうか。旅の疲れを癒したいところで熱いシャワーがでないと、意外にストレスですよね。特に女性の場合は大迷惑の場合もあるはずですから、負担は大きいと判断できます。よって同じDでもD-、「慎重にクレームと要求」を「普通にクレームと要求」に格下げしても問題ないと言えます。
ただ、熱いシャワーが出ないというトラブルは、苦情を受け付けるフロントスタッフの直接的なミスでもありません。自分の単純な操作ミスでお湯が出ないだけかもしれません。頭ごなしに怒鳴りつけるような態度は厳に慎み、一定の礼節を保ちながらこちらの要求を伝えたいです。フロントに電話を掛けて、相手が出たら、
「Hello.」
と呼びかけ、
「I cannot get a hot shower in my room. Can you please have someone take a look?」(熱いシャワーが私の部屋で出ません。誰かに見てもらえませんか?)
などと切り出したいですね。繰り返しますが、相手とは対等の関係にあります。頭ごなしに苦言を呈するようなスタンスは厳禁です。上述のように事実を伝え、建設的な対応をお願いしてみてください。必要に応じて、
「Can I change my room?」(部屋を交換できますか?)
などと切り出して、交渉してみてくださいね。
以上、クレーム上手のトラベル英会話、ホテル編を紹介しましたが、いかがでしたか? 旅行で使う英会話は、基本的に相手とこちらが対等の場面がほとんど。頭ごなしに苦情を伝えるのではなく言葉を尽くし、相手を責めなじるような態度は厳に慎みたいですね。
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