
飛行機に乗ると、必ずキャビンアテンダントから酸素マスクの使い方のデモがあります。でも、まじめに聴いていない人がほとんどのようです。今回酸素マスクについて調べたら、知らなかったことが沢山ありました。近くフライトの予定がある人は必見です!
まずは知っておきたい機内の気圧

最初に、酸素マスクと切っても切り離せない気圧についてお話ししましょう。飛行機の中の気圧といえば、スナック菓子の袋がパンパンになっているのが思い出されますね。
旅客機は、通常33,000フィート(約10,000m)上空を飛んでいます。地上では1気圧のところ、上空10,000mでは0.2気圧になります。そのままでは人体が耐えられないので、気圧維持装置が作動し、客室内は0.8気圧くらいに調整されています。この気圧は標高2,000m地点にいるようなもの。0.8気圧でさえ、ちょっと酸素が薄いのがお分かりいただけたかと思います。
ちなみに機内を地上と同じ1気圧にするとしたら、機内の外と中の気圧差が大きくなり、飛行機が膨張して壊れてしまいます。それを防止するために壁を厚くすると、今度は機体が重くなってしまうという弊害があるので0.8気圧にしているそうです。
機内の気圧が急低下したらどうなる?

通常、機内の気圧が変化するのは、離陸時と着陸時の15~30分の間のこと。
先日、インドの航空会社であるジェット・エアウェイズの国内線フライトで、パイロットが気圧維持装置を作動し忘れるという事故がありました。どうなったかと言うと、乗客166人のうち30人が耳や鼻から出血したそう。その後、旅客機は空港に引き返したそうです。
キャビンの気圧が下がると、天井から酸素マスクが下りてきます。このときパイロットは、人体に安全な高度である10,000フィート(3,048m)以下まで機体が急降下するよう操作します。乗客側には、まるでジェットコースターに乗っているような動きで生きた心地がしないかと思いますが、コントロールを失ったわけではないので落ち着きましょう。ちなみに、飛行中に機体に穴が開くなどして気圧が急激に下がっても、それで墜落ってことはまずないということです。
もし上空40,000フィート(12,192m)にいるときに機外と同じ気圧にさらされたら、猛烈な酸素不足の状態になり、正常に意識を保てる時間(有効意識時間)は18秒ほど。それを過ぎると意識を失い、脳の損傷や死に至ることもあるんです。そのため、酸素マスクが作動している間に、機体を急降下させる必要があるんですね。
酸素マスクについて知っておきたいこと

そんな重要な酸素マスクですが、客室の酸素マスクから出てくる酸素はどのように保存されていると思いますか?
酸素のタンクは重くてかさ張るので、全員分の酸素を機体に載せられません。そのため、酸素はその場でつくられるんです。各座席のパネルの上に、化学物質の混合物が収められています。酸素マスクのコードを引っ張ると化学プロセスが起こります。物質が燃えて、酸素がつくられるということです。一旦出たら、最後まで出っぱなしになります。酸素が出てくるのは、12~15分程度と言われています。
さて、酸素マスクについてぜひ覚えておいていただきたいことが3点あります。
- 酸素マスクのバッグは膨らまないもの
- 酸素発生機が非常に熱くなるので触らない
- 燃えている臭いがしても、気にしなくてOK
酸素マスクのバッグが膨らまないので壊れていると早合点して、マスクを使わずに低酸素症(頭痛、吐き気等)になった人たちがいたそうです。さらに、酸素は燃やしてつくるものと知っておけば、熱くなるのに気を付けられるし、燃えている臭いがしても慌てないで済むでしょう。
また、酸素マスクの使い方を間違っている人が非常に多いそうなので、次回のフライトではしっかりデモをみて万一に備えましょう。
参考
[The Telegraph]
[JIJI.COM]
[Solaseed Air]
[JAL]

あなたが知りたかったことが、この記事で参考になりましたか?
Shio Narumi ライター
イタリアはフィレンツェとタオルミーナの料理留学、イギリスはウエストン・スーパー・メアとケンブリッジの花留学を経て、現在はロンドンと神奈川を行ったり来たり。飛行時間の大幅短縮が実現するよう、心から科学の進歩を願う水瓶座。
【世界三大奇虫】見た目がグロテスクでも大人気の虫とは?日本にもいた!
Jan 27th, 2023 | 坂本正敬
世界を代表するとされるものを3つ取り上げて、「世界三大〇〇」と呼ばれるさまざまなものがありますよね。そこで、どんな事物がそういわれているのか調べてみました。あなたはどれだけ知っているでしょうか? 今回は、ちょっと気持ち悪い(と少なくとも筆者は感じる)「世界三大奇虫」について紹介します。
「凡例」の正しい読み方と意味、知っていますか?【正しい日本語解説Vol.
Jan 26th, 2023 | 熊本沙織
社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らない頻出ワードを徹底解説! 今回は、読み方に迷う人が多い「凡例」ということばについて、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。
【実はこれが日本一】日本で最も「駅チカ」のお城は広島県に2つあった
Jan 24th, 2023 | 坂本正敬
日本一高い山は「富士山」、日本一大きな湖は「琵琶湖」、日本一高いタワーは「東京スカイツリー」など、有名な日本一はいろいろありますが、あまり知られていない、ちょっと意外な日本一を紹介するシリーズ「実はこれが日本一」。今回は、人気のテーマである鉄道とお城を組み合わせた日本一を紹介します。
【世界の立入禁止スポットvol.10】水銀の川が流れていた!? 謎のベー
Jan 22nd, 2023 | あやみ
かつて13の王朝が都を置き、都城としての歴史は通算1,100年以上にもおよぶ中国の「西安」。ここはシルクロードの起点でもあり、古代ロマンが息づいています。今回は、そんな西安の世界遺産「秦始皇帝陵」をクローズアップ! 発掘調査がなかなか進まず、立ち入ることができない地下宮殿の秘密にも迫ります。
【世界で最も平和な国ランキング】日本は何位?15年連続で首位を守り続けて
Jan 21st, 2023 | あやみ
オーストラリアのシドニーに本社がある国際シンクタンク「経済平和研究所(IEP)」が毎年、「世界平和度指数(GPI)」を発表しています。16回目となる2022年版では、日本が10位にランクイン! とはいえ、世界情勢が著しく変化した2021〜2022年。ロシアのウクライナ侵攻により、世界各国の平和指数にどのような変化があったのでしょうか?
【日本三大うどん】香川「讃岐」・秋田「稲庭」、もうひとつは?
Jan 20th, 2023 | あやみ
寒いシーズンは、温かいうどんが恋しくなりますね。また、気温が上昇し、暖かくなると冷たいうどんを食べてクールダウンしたくなるものです。そんなうどんは、日本のソウルフードのひとつ。トッピング次第でアレンジ無限大なのも魅力です。さて、「日本三大うどん」といわれているのは、香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」、あともうひとつは何でしょうか?
「早急」の正しい読み方と意味、知っていますか?【正しい日本語解説Vol.
Jan 19th, 2023 | 熊本沙織
社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らない頻出ワードを徹底解説! 今回は、読み方に迷う人が多い「早急」という言葉について、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。
【実は日本が世界一】1個1.849kg!最も重いリンゴのギネス記録は青森
Jan 18th, 2023 | 坂本正敬
日本にいながら、意外と知らない日本の「世界一」。いつも何気なく目にしているものから、知られざる自然の世界、そして努力や技術の賜物まで、日本には世界に誇れる「世界No.1」がたくさんあるんです。そんな「実は日本が世界一」、今回は、リンゴに関する世界一を紹介します。以前、世界で最も食べられているリンゴの品種として「ふじ」を紹介しましたが、世界一のポイントはそれだけじゃないようですね。
【台湾入国ルポ2023年1月編】羽田からANAで台北松山空港へ!コロナ前
Jan 17th, 2023 | Yui Imai
台湾は2022年10月13日より隔離なしでの観光目的の渡航が可能になっています。台湾で暮らす筆者は年末年始を日本で過ごし、2023年1月中旬に羽田空港からANAで台北松山空港へ移動したのですが、台湾滞在時は自主防疫が必要だったりと、コロナ前とは少し異なる点もあります。この記事では日本出国から飛行機内での様子、台湾入国までの一連の流れを紹介します。
【あの国はなぜ親日国なのか?】「ドイツ」が親日である政治的・外交的背景
Jan 16th, 2023 | アンダルシア
世界には「親日」といわれる国や地域がたくさんあります。海外旅行をするときも、親日国を訪れると、なんとなく過ごしやすかったり、現地の人とのコミュニケーションがスムーズだったり、なんてことがないでしょうか? そこで、比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者が、なぜその国や地域が親日なのか、政治や歴史の背景から解説します。