ドイツを訪れるなら、一度は体験してみたいのが、憧れのラインクルーズ。なかでも、リューデスハイム~コブレンツ間は、世界遺産にも登録されている絶景のオンパレードです。おすすめの乗船区間から、ライン川クルーズの乗船方法、必見の撮影スポットまで、事前に知っておきたい情報をたっぷりとお届けします。
世界遺産・ライン渓谷中流上部
ライン川は、スイスアルプスに端を発し、オランダのロッテルダムで北海へと注ぐ、全長約1230kmの国際河川。そのうち半分以上が流れるドイツでは、「父なる川」として親しまれています。
ライン川観光のハイライトは、なんといっても「ライン渓谷中流上部」として世界遺産に登録されているリューデスハイム / ビンゲン~コブレンツ間。約65kmのこの区間には、見ごたえのある古城が集中し、ドイツ観光のハイライトにふさわしい絶景が広がっています。
おすすめの乗船区間
そのなかでも、特におすすめの乗船区間が、リューデスハイム~ザンクト・ゴアール間。この区間は、KDライン観光船で、1時間40分ほど。
記載の所要時間は、リューデスハイムから北上する場合にかかる時間です。コブレンツ方面から南下する場合は、所要時間が長くなりますのでご注意を。
リューデスハイムからコブレンツまで、世界遺産に登録する区間を通しで乗船することもできますが、リューデスハイム~ザンクト・ゴアール間をおすすめするのには、理由があります。
それは、最も古城が集中するハイライトがこの区間であること。リューデスハイム~コブレンツまで通しで乗船した場合は、4時間ほどかかるため、時間をかけすぎずに、最もおいしいポイントを楽しめるのがリューデスハイム~ザンクト・ゴアール間なのです。
もう少し時間に余裕があれば、2時間35分かけて、リューデスハイム~ボッパルト間をのんびりクルーズするのもいいでしょう。ザンクト・ゴアールやボッパルトには鉄道が通っているので、船を降りた後は、鉄道で効率良く移動ができます。
ライン川クルーズの乗船方法
ライン川の観光船で、最も一般的なのがマインツ~ケルン間を運航する「KDライン観光船」。ハイシーズンは4月中旬~10月中旬ごろで、この時期は毎日最低5本の便があります。
乗船方法はとっても簡単。チケットは当日乗船前に船着き場で購入すればよく、事前予約の必要はありません。リューデスハイムの船着き場は、町の南西にあり、マルクト通りを南に進んだところにあります。町の中心から近く、つぐみ横丁からも歩いてすぐです。
Rheinstraße 22, 65385 Rüdesheim am Rhein
リューデスハイムに前泊するなら、乗船日の前日にチケットを購入しておくというのも手。始発になることが多いリューデスハイムでは、出発の15分前ごろから乗船が開始されます。
リューデスハイム~ロルヒ間の撮影ポイント
リューデスハイムを出発すると、ブドウ畑の丘陵が連なるのどかな風景が目に飛び込んできます。
ビンゲンを出発してまもなく見えてくるラインシュタイン城は、ライン川で最も美しいといわれる古城のひとつ。13世紀にライン川の通行税を徴収する目的で建てられ、現在は古城ホテルやレストランとして営業しています。
ラインシュタイン城の次に見えてくる大きなお城が、ライン川沿岸で最も古い城とされるライヒェンシュタイン城。この周辺の古城のなかでは最大規模というだけあって、遠目に見ても迫力満点です。
13世紀には盗賊の巣窟となっていた悪名高い城で、破壊や再建を繰り返したのち、現在はホテルや博物館として利用されています。
バッハラッハ~オーバーヴェーゼル間の撮影ポイント
バッハラッハの高台にそびえるのは、古城ユースホステルとして有名なシュターレック城。
12世紀にケルン大司教の拠点として築かれた由緒ある城で、20ユーロ代から宿泊できることから、古城ホテルに泊まる余裕のない若者に人気があります。
この先は、ライン川クルーズでも一、二を争う絶景の登場。
石造りの古城が多いなか、ひときわ目立つのがプファルツ城。船のような白とオレンジの外観が、ライン川の風景にアクセントを添えていますね。ライン川の通行税徴収のため、14世紀に建てられた城で、内部は博物館として公開されています。
このプファルツ城と、段々畑のような岩壁、高台にそびえるグーテンフェルス城のコラボレーションは壮観。
グーテンフェルス城は、もともとカウプ城と呼ばれていましたが、16世紀にプファルツ選帝侯ルートヴィヒ5世が、バイエルン・プファルツ継承戦争の勝利を記念してグーテンフェルス城に改名。現在はホテルになっています。
伝説の岩山ローレライ
オーバーヴェーゼルとザンクト・ゴアールのあいだには、かの伝説の岩山ローレライがあります。ライン川の難所で、船の転覆事故が絶えず、妖精や山の精が事故を引き起こすともいわれてきました。
そんなローレライの名が広く知られるようになったきっかけは、ハイネの詩に、ズィルヒャ―が曲を付けた「ローレライ」の歌。妖精の美しい歌声に誘われ、船乗りたちが波間に引き込まれてしまうと歌われています。
日本人所有の「ねこ城」
ザンクト・ゴアールで下船する場合、ローレライを過ぎれば残りの区間はあとわずか。最後のハイライトとでもいうべき存在が、ザンクト・ゴアールの船着き場の向かいに建つ「ねこ城」。
正式には、ノイカッツェンエルンボーゲン城といい、かつての所有者カッツェンエルンボーゲン伯爵の名が「猫の肘」を意味することから、「ねこ城」のあだ名が付きました。2本の尖塔が猫の耳のようでとってもキュート。驚くべきことに、現在の所有者は日本人なんです。
ねこ城と対面したら、ザンクト・ゴアールの船着き場に到着。いいとこ取りのライン川クルーズが終了です。
ドイツのライン川はずるいほどの絶景
筆者自身、今回初めてライン川クルーズを体験して、「こんな場所がほかにあるだろうか」と思いました。
数十キロにわたって流域一帯が世界遺産に登録されていて、古城やブドウ畑、歴史的な街並みが連なっている・・・。そんな場所は、日本はもとより世界でも唯一無二。自然と歴史が織り成す風景の数々があまりにも素晴らしく、「ドイツってずるい」と思ってしまったほどです。
しかしこうした風景が存在しているのは、数百年も前に美しい古城を建てた人々、そしてそれらを周囲の景観とともに守り続けてきた人々がいたからこそ。ライン川クルーズを楽しむ際は、そうした先人たちにも思いを馳せたいものです。
取材協力:ドイツ観光局
[All photos by Haruna]
Do not use images without permission