東ドイツ屈指の観光都市、ドレスデン。かつてザクセン王国の都が置かれた華やかな宮廷都市は、「ドイツの京都」とも称されます。
ドレスデン観光といえば、バロック建築群に彩られた旧市街が注目されますが、実は新市街や近郊にも見どころがたくさんあります。ドレスデン観光を丸ごと楽しみたい人に向けて、ドレスデンの12の魅力をご紹介しましょう。
古都の情緒漂う重厚な街並み
「ドイツの京都」とも呼ばれる東ドイツの都市、ドレスデン。中世の時代から商業都市として発展し、16世紀にはザクセン王国の都が置かれ、さらなる繁栄を見せます。
ドレスデンの街並みを特徴づけているのが、壮麗なるバロック建築群。とりわけ、芸術を愛したアウグスト強王の時代には、宮殿をはじめ壮大な建造物が建てられました。
その美しさから「エルベ川のフィレンツェ」「百塔の都」とうたわれた通り、その街並みはドイツのなかでもひときわ重厚。旅人を別世界へといざなう、古都特有の情緒が漂っています。
バロックの傑作「ツヴィンガ―宮殿」
ドレスデンを代表する建造物のひとつが、アウグスト強王に仕えた建築家ペッペルマンの最高傑作とされるツヴィンガ―宮殿。広い中庭を囲む壮大な宮殿を目の前にすれば、ザクセン王国の栄光が肌で感じられます。
現在は複数のミュージアムとして利用されており、アルテ・マイスター絵画館と陶磁器コレクションは必見。
アルテ・マイスター絵画館は、ヨーロッパでも有数の美術館で、ラファエロやフェルメール、レンブラント、デューラーといった巨匠の名品が揃っています。なかでも、世界的に有名な2人の天使が描かれた、ラファエロの「システィーナのマドンナ」は絶対に見逃せません。
陶磁器コレクションは、マイセン磁器を中心に、東西の歴史的名品を展示。磁器製のユーモラスな動物たちなどのユニークな展示もあり、ファンならずとも楽しめます。
陶磁器コレクションの入口があるグロッケンシュピールパビリオンに設置されている、マイセン磁器のカリヨンもお見逃しなく。
美しくよみがえったフラウエン教会
ドレスデンのシンボルといっても過言ではないのが、ノイマルクト広場に建つフラウエン教会。優雅さと力強さをあわせもつ、美しいシルエットが印象的な教会には、壮絶なエピソードが・・・
ドイツ最大のプロテスタント教会として知られていたフラウエン教会でしたが、第二次世界大戦火のドレスデン爆撃により崩壊し、廃墟と化してしまいます。
その後旧東ドイツに属したドレスデンでは、教会の再建は重視されなかったため、長年放置された後、2005年にようやく再建が完了。戦後70年の時を経て、かつての美しい姿を取り戻したのです。
そんな歴史を知れば、訪れるものを包み込むような優美なたたずまいに、いっそう感激すること間違いなし。再建にあたってはできるだけオリジナルの資材が用いられたため、色味が均一ではない外観にも注目してみてください。
戦災を逃れた「君主の行列」
第二次世界大戦でがれきの山と化したドレスデンにあって、奇跡的に戦禍を逃れたのが、君主の行列。約2万5000枚のマイセン磁器のタイルに描かれた壁画で、長さ101mもの壮大なスケールは圧巻。
歴代のザクセン君主や時代を彩った芸術家らが描かれていて、360人もの実子をもうけたといわれるアウグスト強王は、ほぼ中央で誇らしげな姿を見せています。
音楽の殿堂「ゼンパーオペラ」
音楽の都としても名高いドレスデン。その名声を確かなものにしているのが、ドイツ屈指の歌劇場「ゼンパーオペラ」の存在です。1838~1841年にかけて建設された劇場で、建築家ゼンパーの名がつけられました。
世界で最も美しい歌劇場のひとつといわれ、ワーグナーの「さまよえるオランダ人」や「タンホイザー」が初演されたのもここ。夏季を除き、ほぼ毎日オペラやコンサートなどが上演されているほか、音楽シーズン中は館内のガイドツアーも開催されます。
「世界一美しい牛乳屋さん」
ドレスデン観光は、旧市街だけで終わりではありません。近年人気上昇中の、話題のスポットがある新市街にも足を運んでみましょう。
新市街の見どころの代表格が、「世界一美しい乳製品店」としてギネス認定されている、「ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント」。店名は「プフント兄弟のドレスデンの牛乳屋」という意味で、現在の場所に店舗を構えたのは1891年という、歴史あるお店です。
外観はどこにでもある食品店のようですが、ヴィレロイ&ボッホのタイルに埋め尽くされた店内は宮殿さながら。1階では新鮮な牛乳やバターミルクが飲めるほか、レトロな缶入りの牛乳石鹸やメタルカードなど、オリジナルのお土産の購入が可能。2階のカフェでは、ケーキや軽食も楽しめます。
※店内は、特別に許可を得て撮影しています。
Bautzner Str. 79, 01099 Dresden
https://www.pfunds.de/start.php?language=en
ヒップなアート村「クンストホーフ・パッサージュ」
ドレスデン新市街でひときわフォトジェニックな一画が、「クンストホーフ・パッサージュ」。生きたアートと化したアパートに囲まれるように中庭が配置され、個性豊かなレストランやカフェ、ショップなどが点在するヒップなアート村です。
5つのテーマが設けられた中庭は、それぞれ別のアーティストが装飾を担当。奇抜な装飾が施されたアパートも、実際に人が居住する現役というから驚きです。
散策しながら写真を撮るだけでもワクワクしますが、ひと味違うドイツ土産のショッピングやモダンドイツ料理のディナーなど、ショップやレストランを利用すれば、楽しみの幅が広がります。
ドイツ最古のクリスマスマーケット
ドレスデンといえば、ドイツ最古のクリスマスマーケットといわれる「シュトリーツェル・マルクト」。アルトマルクト広場をメイン会場として開かれる盛大なクリスマスマーケットで、その歴史は1434年にさかのぼります。
全国津々浦々で開催されるドイツのクリスマスマーケットのなかでも特に古いというだけあって、巨大なクリスマスピラミッドに彩られた会場は貫禄十分。古都ならではの味わい深いクリスマスマーケットが楽しめます。
クリスマスシーズンにドレスデンを訪れるなら、クリスマス菓子として知られる「シュトレン」も忘れずに。管理番号が入った金色のシールが貼られたものは、ドイツで最もおいしいといわれる、本物のドレスデンのシュトレンの証です。
レトロな蒸気船でエルベ川クルーズ
ドレスデンは、近郊にも見どころがいっぱい。ドレスデン周辺に広がるエルベ渓谷は、以前世界遺産に登録されていたほど風光明媚な場所。旧市街のブリュールのテラスの向かいからエルベ川の遊覧船が出ており、美しい城館などを眺めながらのクルーズが楽しめます。
ドレスデン発のエルベ川クルーズは、レトロな蒸気船が売り物。古い船は1870年代の建造で、テーマパークのアトラクションに乗っているような、非日常感が味わえるのです。船上では、食事も可能。
アウグスト強王が愛人に贈った離宮、ピルニッツ宮殿まで、ゆったりとしたエルベ川の流れに身を任せる船旅はいかがですか。
Sächsische Dampfschiffahrts-GmbH & Co
https://www.saechsische-dampfschiffahrt.de/
優雅な狩猟の館「モーリッツブルク城」
ドレスデンから日帰りで行ける人気観光スポットのひとつが、モーリッツブルク城。水上に浮かんでいるかのような優雅な姿が印象的な宮殿で、かつては狩猟の館として使われていました。
現在はバロック博物館として公開されており、数十万枚もの天然羽毛を使ったタペストリーや、世界最大といわれるものを含む、65もの赤鹿の角が展示されている食堂などが見どころです。
ドレスデン郊外のラーデボイル・オストからは、130年以上の歴史をもつSL「レスニッツグルント鉄道」も運行。ノスタルジックなSLで非日常感を味わえば、楽しさも倍増です。
体験型ワイナリー「シュロス・ヴァッカーバルト」
ドレスデン中心からトラムで行けるシュロス・ヴァッカーバルトは、ヨーロッパ初の体験型ワイナリー。ドイツで「ゼクト」と呼ばれるスパークリングワインの醸造所で、バロック様式の城館を中心に、広大なブドウ畑が広がります。
ワインとゼクトの生産工程のガイドツアーが人気で、巨大なタンクが並ぶ発酵の過程、ワイン樽が並ぶ赤ワインの熟成過程などをガイドとともに見学した後は、お楽しみのスパークリングワインのテイスティング。
敷地内にはワインをはじめとするオリジナル商品が購入できるショップやレストランもあり、のんびりと美食のひとときが過ごせます。
ドレスデン名物「アイアーシェッケ」
ドレスデンには、知られざる名物グルメがたくさんあります。そのひとつが、チーズケーキの一種であるアイアーシェッケ。
おもにカスタードクリームの層とクァルク(ドイツのフレッシュチーズ)の層、タルト生地またはスポンジ生地の3層からなるケーキで、日本のスフレチーズケーキに近い、フワフワした食感です。どっしりとしたケーキが多いドイツにあって、軽いアイアーシェッケは、日本人好みの味。
本記事中で紹介した、ドレスナー・モルケライ・ゲブリューダー・プフント2階のカフェでも食べられますよ。
ドイツ有数の美しい景観を誇る旧市街は、ドレスデンの魅力の一部にすぎません。重厚な旧市街と対照的なヒップな旧市街や近郊の観光スポットにも足を運び、ドレスデンを丸ごと味わってみませんか。
[All photos by Haruna]
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