ドイツ最古の街トリーア
ドイツ中西部、ルクセンブルクとの国境付近に位置するトリーアは、2000年の歴史をもつドイツ最古の都市。
その歴史は、ローマ皇帝アウグストゥスが築いたローマの植民都市にはじまります。当時のトリーアは、「第二のローマ」ともいわれ、ローマ帝国にとってヨーロッパ進出の重要な足がかりでした。
トリーアの景観をユニークなものにしているのが、「ポルタ・ニグラ」をはじめとするローマ時代の遺跡の数々と、大聖堂に代表される中世の建造物の融合。これらは、「トリーアのローマ遺跡群、聖ペテロ大聖堂及び聖母マリア教会」として世界遺産に登録されています。
それらにフランス風のバロックやルネッサンス様式の建物の数々が加わり、この街にしかない、唯一無二の風景を造り上げているのです。
トリーアのシンボル「ポルタ・ニグラ」
トリーアのシンボルといえば、中心街を守るようにして建つ「ポルタ・ニグラ」。2世紀ごろにローマの市城門として造られたもので、ドイツにあるローマ時代の遺跡としては最も貴重なものです。
「黒い門」を意味するその名の通り、黒ずんだ砂岩を積み上げて造られていますが、「ポルタ・ニグラ」の名は、中世になってから付けられたといいます。市街地に突如として現れる高さ30mの巨大な門は、迫力満点。どこか異世界にワープしたかのような気にさせられます。
門の上にのぼることもでき、一時は教会として使われていたこともある、美しいレリーフが刻まれた二層部分が見られます。門の上から見下ろすトリーアの街並みは壮観。過去と現在が交錯する、不思議な感覚にとらわれるはずです。
荘重な大聖堂と聖母教会
トリーア観光のもうひとつのハイライトが、ローマ遺跡群とともに世界遺産に登録されている大聖堂と聖母教会です。4世紀創建のトリーア大聖堂(聖ペテロ大聖堂)は、ドイツ最古級の大聖堂。
長い歳月をかけて修復や増築がなされたために、初期ロマネスク様式をベースに、ゴシック様式のヴォールト天井やバロック様式の装飾などが加わり、さまざまな様式が混在する建造物に仕上がっています。
隣に建つ聖母教会と一体化しているため、いっそう大きく見せる外観は、「荘重」という表現がぴったり。大聖堂がくぐりぬけてきた時の重みを感じさせる、どっしりとしたたたずまいに圧倒されます。
迫力ある外観と比べると内部はやや簡素な印象ですが、化粧漆喰と木製象眼細工で装飾された西内陣の丸天井や、キリストがまとったとされる聖衣が納められている「聖衣の小聖堂」の、精緻な装飾は必見です。
一方、大聖堂と合体している聖母教会は、13世紀にゴシック様式で建てられたもの。高さのあるヴォールト天井に描かれた植物模様が印象的で、「聖母」の名にふさわしい優美なたたずまいに魅了されます。
アウラ・パラティーナ
大聖堂の南に建つアウラ・パラティーナは、おもに謁見の場として使われた建物。建築主のコンスタンティヌス帝の名前から、「コンスタンティヌスのバシリカ」とも呼ばれます。
長さ67m、幅27m、高さ33mという巨大なホール内は、柱が一本もないのが特徴。今は質素な印象ですが、往時は大理石やモザイク、彫像などできらびやかに彩られていたといいます。現在は、凛とした静けさが印象的な、プロテスタントの教会になっています。
カイザーテルメン
中心部の世界遺産を見学した後は、トリーア市内に点在するローマ遺跡めぐりを楽しみましょう。
宮殿公園の南に残されているのが、4世紀のコンスタンティヌス帝の時代に造られた皇帝の大浴場「カイザーテルメン」。やはり、ローマ人のいるところにお風呂あり、なのです。
当初は、温水浴室や冷水浴室だけでなくサウナやマッサージ、運動場まで備えた健康センターのようなものが計画されていましたが、皇帝がコンスタンティノープル(現イスタンブール)に新たな拠点を建設したことにより、完成することはなかったそう。
現在は、浴槽の一部と水路の跡などが残っており、地下に残された通路からは、ローマ人の技術力の高さがうかがい知れます。
古代円形劇場
カイザーテルメンの東に位置するのが、100年ごろに築かれた古代円形劇場。約2万人の観客を収容できる野外劇場で、ローマ時代の円形劇場のなかでも、10本の指に入るほどの規模を誇ります。
かつては剣闘士の決闘などが行われた劇場では、現在も古代ローマを題材にしたショーやコンサートが開かれています。
イタリア・ローマのコロッセオほどの迫力はありませんが、ここだけ時間が止まったかのような、ひっそりとしたたたずまいからは、壮大な歴史ロマンが感じられるはずです。
ライン州立博物館でトリーアの歴史を知る
トリーアの歴史をもっと知りたいなら、宮殿公園の一画にあるライン州立博物館へ。広々とした館内には、トリーアと周辺地域で発掘された古代の彫像や墓碑、モザイクをはじめ、さまざまな美術品や工芸品などが展示されています。
なかでも必見なのが、黄金色に輝くローマ時代のコイン。今もまばゆい輝きを放つ大量のコインに、ローマの繁栄ぶりをひしひしと感じます。
ローマ時代の遺跡が存在感を放つ、異色のドイツの都市トリーア。各時代の建造物が個性豊かに共存する風景を目にすれば、知らなかったドイツの魅力に出会えることでしょう。
取材協力:ドイツ観光局
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Haruna ライター
和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・コラムニスト・広報として活動中。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。半年間のアジア横断旅行と2年半のドイツ在住経験あり。現在はドイツ人夫とともに瀬戸内の島在住。
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