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なんで石と紙とはさみなの!?世界にも浸透した「じゃんけん」の歴史と由来

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Mar 21st, 2020.

どこに行こうか迷ったとき、あるいはご飯のお代を誰が支払うかを決めるとき、じゃんけんほどパワフルな解決法はないですよね。じゃんけんの強制力は、ある意味で法律や道徳の強制力にも匹敵する印象があります。ただ、このじゃんけん、一体いつごろに生まれて広まったのか、歴史をご存じでしょうか。その由来を知らない人は少なくないと思います。そこで今回は、じゃんけんの歴史について調べてみました。

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じゃんけんの先祖である石拳って何?


じゃんけんとは、そもそも何なのでしょうか。辞書を調べてみると、

<「石拳」から>(岩波書店『広辞苑』より引用>

とあります。石拳については、例えば稲葉茂勝著『じゃんけん学 起源から勝ち方・世界のじゃんけんまで』(今人舎)に説明が載っています。

石拳とは江戸時代の中ごろから後半にかけて流行した、手のひらの形を変えて行う子どもたちの手遊びだと書かれています。今で言う「グー」の握りが「石」を意味するところから、石拳と言われたそうですね。他には「はさみ」「紙」を表す手の形がありました。まさにじゃんけんの原型です。この石拳にもルーツがあって、

<虫拳を元にして考案された>(『じゃんけん学 起源から勝ち方・世界のじゃんけんまで』より引用)

とあります。


虫拳については、

<拳の一種。拇指(おやゆび)を蛙、人差し指を蛇、小指をなめくじに擬して勝負を決するもの>(『広辞苑』より引用)

とあります。加古里子著『伝承遊び考:4:じゃんけん遊び考』(小峰書店)によると、虫拳について最初に書かれた書物は、江戸時代の1756年(宝暦6年)が最初との話。中国が由来とされています。

いつ日本に来たのかは諸説があるものの、「カエル」「ヘビ」「ナメクジ」が握りこぶしで表現され、カエルがナメクジに勝ち、ヘビがカエルに勝ち、ナメクジがヘビに勝つ、全員がそろうと誰も勝者が居ない(三すくみ)というルールで遊ばれていたみたいですね。

数当てゲームがじゃんけんのもう1つのルーツ


一方で、虫拳とは異なる時期とルートで、手の形による数当てゲーム(数拳)も、中国から日本に伝わっていました。数を当てる手遊び自体は、『伝承遊び考:4:じゃんけん遊び考』によると、紀元前の中国で生まれていたと言います。

その数当て遊びの中に、本拳(数拳の一種)という手遊びがあります。江戸時代の書物『拳会角力図絵』には、中国から長崎に伝わり、遊郭で遊ばれるようになった(つまり、大人の遊び)と記録されています。


ゲームのルールは、2人で向かい合って座り、0~5の数字を表現した握りこぶしを、それぞれが片手で出し合います。その合計の数を、それぞれが予想して言い合うゲームです。

0の形は握りこぶし、1は親指を立てた形、2は親指と人差し指を立てた形、3は中指と薬指と小指を立てた形、4は親指以外を立てる形、5は全ての指を立てる形です。この中で0と2と5が、今で言う「グー」「チョキ」「パー」によく似ていると分かります。この本拳(数拳)が、先ほどの虫拳と結びついたと考えられるそう。

言い換えると、日本には大まかに言って、3つの何かを戦わせる手遊び(三すくみ拳)と、手の指を使った数遊び(数拳)が中国から伝わっていて、その両者が交じり合うなどしつつ、独自に発展を遂げてきたのですね。

子どもたちがじゃんけんの遊び方を改良・整理していった


本拳(数拳の一種)も虫拳も、元々は大人たち向けの遊びです。難しかったり、「ナメクジ」「カエル」「ヘビ」の関係性が分かりづらかったりしたため、大人のまねをしたい子どもたちにとっては改良が必要でした。

男女・幼長に関係なく、誰もが片手で簡単に示せる上に、優劣の関係を簡単に理解できるような手遊びを子どもたちが独自に考え、整理していったと考えられています。

<重要な鍵である石拳の記録の不詳なのを一大痛恨事と解していた。しかし何一つ文書にも記されず、何時誰ともわからぬまま、秘かに広がり支持されていった石拳のいきさつは、子どもの伝承遊びの性格を、これほど明確に示しているものはない>(『伝承遊び考:4:じゃんけん遊び考』より引用)

とあるように、確かな記録には残っていないものの、子どもたちの遊びの中で取捨選択が活発に行われ、自然と「石」「はさみ」「紙」のアイデアと、手の形が組み合わされていったのですね。

じゃんけんの語源は「リャンケン」?


では、石拳はいつ「じゃんけん」という呼び名になったのでしょうか。その点については諸説があって、まず「石拳」を「ジャクケン」と呼び、その「ジャクケン」が「じゃんけん」に変化したという説があります。

他には2人で遊ぶ、あるいは両方の拳を使うために「両拳(中国語風にリャンケン)」と呼び、その掛け声が「じゃんけん」に変化したという説があります。

いずれにせよ、じゃんけんは子どもたちの間で全国的な広がりを見せ、しかもその分かりやすさのために、世界にも広まっていった歴史があるのだとか。


『じゃんけん学 起源から勝ち方・世界のじゃんけんまで』によれば、明治時代に入ってからの欧米諸国との交流が始まり、昭和に入ってからの第2次世界大戦、戦後の高度成長期、現代のクールジャパンと、日本と海外の交流が増していくほどに、じゃんけんが世界に広まっていきます。

英語でじゃんけんを「Rock, paper, scissors」と言います。「偶然にも、石と紙とはさみで日本と同じなんだな」と筆者は昔、初めて英語のじゃんけんに触れたときに思いました。しかし、同じで当たり前。なぜなら日本のじゃんけんが英語圏に伝わり、浸透していったのですね。


以上の話をまとめると、中国から虫拳や本拳(数拳)が日本に入ってきて、大人の間で楽しまれていました。その大人の手遊びを子どもたちがまねする中で独自に改良が行われ、じゃんけんになりました。その分かりやすさゆえに、日本が明治維新以降、世界との関係を持ち始めると、世界にも広がっていきました。

世界への広がりで言えば、カナダには2002年に世界じゃんけん協会(WRPS)が誕生し、世界のじゃんけん大会が開催されたり、じゃんけんに勝つための必勝法などが公開されたりするほど。ある意味、世界の共通言語になりつつあるのですね。

[参考]
※ 稲葉茂勝著『じゃんけん学 起源から勝ち方・世界のじゃんけんまで』(今人舎)
※ 加古里子著『伝承遊び考:4:じゃんけん遊び考』(小峰書店)
※ 李御寧『ジャンケン文明論』(新潮社)
※ 稲葉茂勝著『じゃんけん必勝法 昔と今』(今人舎)
※ 赤穂敞也『再考じゃんけんぽん』(近代文藝社)

[All photos by Shutterstock.com]

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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