奈良市高畑町にある翠の庭園
奈良公園の南端、浮見堂と鷺池の南側に位置する「瑜伽山園地 旧山口氏南都別邸庭園」。JR奈良駅から徒歩約30分、近鉄奈良駅から徒歩約15分、さらに市内循環バス・奈良公園ルートのぐるっとバスの最寄り停留所もあるので、奈良公園の散策がてらに立ち寄りやすい庭園です。
敷地面積は1.3ヘクタールで散策するのにちょうどよい広さ。瑜伽山と鷺池(さぎいけ)などが一体となる絶景の地として、昭和2年に国指定文化財「名勝奈良公園」に指定されています。
明治期から昭和初期にかけ、志賀直哉をはじめ日本を代表する文人や画家が住居やアトリエを構えていた高畑町。小見寺八山などの画家や茶人等が、庭園や茶室で交流を深めていたという歴史が残っています。
そんな歴史ある町の一角に、明治期から大正期に大阪財界で活躍した山口吉郎兵衛氏の別荘があり、その別荘の庭園や茶室が復元整備され、2020年5月、「瑜伽山園地 旧山口氏南都別邸庭園」として公開されました。
耳を澄まして穏やかなひとときを
格子の戸を開けると手入れの行き届いた庭園。鮮やかな翠一色で清々しい心地です。
庭園の真ん中には山口吉郎兵衛氏が建てた茶室を復元した「䕪庵(たくあん)」が佇んでいます。奈良にゆかりのある志賀直哉ら文化人がお茶を通じて交流していたという茶室です。
小間(四畳半)、広間(六畳、八畳)といった部屋があり、一般の人もお茶会などに利用できます(予約制、9:00〜21:30まで使用時間によって料金が変わります)。䕪庵からの眺めに、自分も文豪になったような気分になりますね。
飛石、石段、石橋など、趣ある日本庭園は、迷路のように小道が続いて冒険をしていているよう。高低差もあって、狭いようで広く感じます。
石の灯籠は鎌倉時代のものと伝わっているものもあるそうで、灯籠の1つにはぐるりと干支が描かれ、奈良らしく鹿も描かれていました。
庭園の奥はなだらかな石の小道が上へと続き、竹林に囲まれて京都の嵐山のようです。少し登っただけでも良き眺め・・・ぜひ途中で立ち止まり見上げてください。
青々と空に伸びる竹林、そよ風に揺れる笹の音、生命力あふれる雄大な大木。日常のデジタルな音をさえぎって、心身をリフレッシュ。
静寂と非日常感を五感で感じて、文化人になった気持ちで、なんだが良きアイデアが降ってきそうです。
宿泊・飲食施設もある新しい奈良スポット
敷地内には宿泊施設「ふふ奈良」、飲食施設「滴翠(てきすい)」もあり、宿泊のお客さんが朝の散歩をされていました。とても雅でうらやましい光景です。
奈良公園の鹿も入ってこないので、ゆっくり散策できるのもうれしいポイント。タイムスリップをしたように、文豪たちの憩いの場の雰囲気にゆったりひたれる新しい奈良時間スポットです。古民家カフェも多くあるならまち散策ルートに加えて、文化的な大人の散歩道を楽しんでみてはいかがでしょう。
住所:奈良県奈良市高畑町1184-1
電話:0742-22-5911(9:00~17:00)
開園時間:9:00~22:00(入園は21:30まで)
休園期間(庭園・茶室):2月24日~2月末日
入園料:無料/茶室は有料(予約制)
交通:「JR奈良駅」から徒歩約30分、「近鉄奈良駅」から徒歩約15分/最寄りバス停:市内循環バス「破石町(わりいしちょう)」(毎日運行)、ぐるっとバス(奈良公園ルート)「高畑町駐車場・浮見堂」(土日祝)
HP:http://www.pref.nara.jp/39911.htm
[all photos by kurisencho]