朝食の開始が最も早い都道府県民は?他の県民には譲れない意外な「日本一」

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Sep 15th, 2020

今年の夏、意外な土地が、歴代の最高気温No.1の記録に並びました。静岡県の浜松市です。この結果を受けて、並ばれた側の埼玉県の熊谷市民の中には、面白く思っていない人もいるはずです。本来は、それほどうれしくない記録であっても、日本一の座が自分たちだけのものでないと言われると、なんだか悔しくなってしまう人情も、きっとあるはずだからです。そこで今回は、他の土地の人たちに負けたくないと土地の人がひそかに誇っている(かもしれない)変わった“日本一”をいくつか集めてみました。

朝食の開始時刻が過去15年以上ずっと日本一早い都道府県は?

突然ですが、朝ご飯をだいたい何時ごろに食べますか?会社や学校が遠くにあれば、当然早く食べなければいけません。仕事によってはまだ暗いうちから起きて、朝ご飯なのか夜食なのかわからないような時間に、ご飯を食べなければいけない人もいるはずです。

そうしたさまざまな事情を混ぜこぜにして、県民の平均で朝食の開始時刻を調べたとき、実は一番早く朝ご飯を食べる県民は、静岡の人たちだとわかっています。

この調査は、総務省が平成18年、平成23年、平成28年と5年ごとに行う「社会生活基本調査」で明らかになっています。なんと過去3回の調査で、全て静岡県が1位を獲得しているとの話。実際に食事の開始時刻は、平成18年が朝7時2分、平成23年が6時58分、平成28年が6時55分と、ちょっとずつ早くなっています。

この静岡=朝食と聞いて、個人的に真っ先に思い浮かべる文化が、「朝ラーメン」です。静岡県藤枝市を中心に、朝から営業するラーメン屋の存在が知られています。藤枝市によれば、同市は静岡県内でも有数のお茶の産地で、早朝から仕事に従事する人が仕事帰りにラーメンを食べたところから、定着した文化だとの話。何かこうした文化も、根っこの部分で関係しているのかもしれませんね。

温泉や銭湯が大好きな人たちは?

次は、温泉や公衆浴場(銭湯)が好きな県民について。日本人であれば、温泉やお風呂は誰でも大好きなはず。その中でも根っからのお風呂好きといえる人たちは、どのあたりに暮らしているのでしょうか?

総務省の情報には、温泉・銭湯の入浴料に年間でいくらお金を使ったかを明らかにする調査があります。こちらは都道府県別ではなく、各都道府県庁の所在地、政令指定都市に暮らす人たちのお金の使い方を調べた調査です。同調査によると、2016~2018年に温泉や銭湯の入浴料を多く支払っている人たちは、青森市民だとわかっています。

青森といえば、人口10万人に対して公衆浴場の数が24.1カ所と、全国でNo.1の土地でもあります。2位は鹿児島、3位は大分、4位は富山、5位は大阪ですが、それぞれ18.0カ所、13.5カ所、8.8カ所、7.1カ所という数ですから、青森が突出して多いとわかります。

この理由について、毎日新聞が取材をしています。同紙には、青森は家庭用のお風呂の普及が遅かったから公衆浴場が多いのではないかとの仮説が提示されています。記事によれば、青森県民は「車に風呂道具を積んでいる」とまでいわれているのだとか。

もともと青森県は温泉王国です。ぱっと思い浮かべるだけでも、十和田八幡平国立公園内に酸ヶ湯温泉がありますし、黒石温泉郷、大鰐温泉もあります。源泉の数は全国で6位、温泉地の数は全国で5位、総湧出量は全国で4位、さらに温泉を利用した公衆浴場の数も全国で7位です。一般の家庭用風呂の普及の遅れと、こうした温泉地の充実が、家以外のお風呂に入る習慣を色濃く残しているとも考えられるとか。

さらに言えば、青森は寒いです。総務省の調査を見ても、全国的に寒い1月に温泉・銭湯入浴料が上がる傾向があります。外出先で冷え切った体を、温めたくなる青森の気候も影響しているかもしれませんね。

ボランティア活動を欠かさない県民は?

最後はボランティア活動に無償で取り組む人が多い都道府県の県民について。日本ではボランティアが盛んではない、根付かないという意見も聞きますが、この自治体は少なくとも例外に入るのかもしれません。

総務省の「平成28年社会生活基本調査」 によれば、ボランティア活動の年間行動者率(10歳以上)のランキングで、全国平均が26.0%のところ、33.9%と全国最多を誇る自治体があります。

どこだと思いますか?ずばり、滋賀県です。

どうして滋賀県ではボランティアの活動が盛んなのでしょうか?仮説としては、琵琶湖の存在が影響していると考えられるかもしれません(あくまでも個人の仮説です)。

琵琶湖は、滋賀県全体の面積の1/6に相当します。同県は県土の面積に対して自然公園の面積の割合も、全国で1位です。大津、近江八幡、彦根、長浜などの大きなまちは琵琶湖畔にあり、他県との県境近くは比良山地、伊吹山地、鈴鹿山脈、水口丘陵などに囲まれています。

何が言いたいのかといえば、人口の多くは琵琶湖畔に集中しており、その湖畔では毎年7月1日「びわ湖の日」に、一斉に清掃活動が行われているのです。滋賀県によれば、2020年(令和2年)7月までの39年間に合計で610万人が清掃活動、環境美化活動に参加したそうです。ちなみに滋賀県の人口は140万人程度。実際、滋賀県民の友人に聞き込みをしてみると、家が琵琶湖沿いになくても、会社が琵琶湖沿いにあれば、会社の清掃活動などに無償で駆り出されると教えてくれました。

琵琶湖1つを取り上げても、年に1回は必ずボランティア参加の機会があるのですから、自然とボランティアの参加率も高まるのかもしれませんね。さらに先の友人は会話の中で「琵琶湖を預かっているので」という言葉を口にしました。ちょっとしたプライドを感じられるせりふだと思いました。

以上、他県には譲れない、意外な日本一をいくつか紹介しましたが、いかがでしたか?調べれば、まだまだたくさん出てくる意外な日本一。今暮らしている自治体にはどのような日本一が隠れているのか、調べてみても面白いはずですよ。

[参考]
日本一早い朝食開始時刻 – 静岡県
朝ラーメン – 藤枝市
「温泉・銭湯入浴料」の支出 – 総務省
なるほど統計学園 – 総務省
青森県内の温泉について – 青森県
青森は人口比の公衆浴場数が日本一 多い理由と他県もうらやむ実情を探る – 毎日新聞
滋賀県の ええとこ – 総務省
びわ湖を美しくする運動について – 滋賀県

[All photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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