欧州編
オランダでは寒中水泳を新年から行う
(C) guruXOX / Shutterstock.com
オランダの冬を体験した経験がありますか?生まれて初めて筆者がオランダに滞在した時期は真冬で、アムステルダム中央駅で初めて屋外に出た時、残りの旅程が憂うつになりました。底冷えする寒さが、予想以上だったからです。
調べてみると、オランダの緯度は北海道の最北端、稚内よりも高いです。要するにオランダは北海道の北部くらいに寒い場所なのです。その前提を踏まえた上で、オランダの新年の「伝統行事」を考えると、その特異さがよくわかるかもしれません。
オランダでは新年に寒中水泳が行われ、健康に問題のない老若男女が、オランダのナショナルカラーの1つであるオレンジの帽子をかぶって、近場の海や湖に飛び込みに行くのです。長年の伝統というより、1965年から新しく始まった国民行事で、水泳クラブが始めた伝統を国民がまねしてやるようになった背景があるそう。
ちなみに湖でも泳ぐそうですが、筆者の記憶する限り、オランダの冬は川も流れの穏やかな部分は薄い氷が張っていました。恐らく薄氷をたたき割るように、泳ぐのかもしれませんね。
スコットランドでは火の玉を回す
次はスコットランドの年末の伝統です。富山でも「御招霊(おしょうらい)」といって、お盆にたいまつを燃やして夜にぐるぐると回し、祖先の霊を迎える習慣があります。その伝統に背景の部分では、つながっているのかもしれません。
スコットランドの一部の地域(Stoneheaven)では、段ボールなどをまとめて自作した火の球を大みそか(Hogmanay)に回して、まちを練り歩き、最終的に燃えたままの火の球を港から海に投げ込みます。御招霊も最後は川にたいまつを投げ入れますから、最後も似ていますよね。
スコットランドでは船のレプリカを燃やしたり、たいまつを持って行列をしたり、とにかく火を見ながら大みそかを過ごす伝統が多いみたいです。
南米編
コロンビアではスーツケースを引き回す
南米のコロンビアでは、旅行媒体のTABIZINEで紹介したくなる、きっと旅好きがにっこりするような年末の伝統が続いています。
コロンビアには年明けとともにスーツケースを引いたり、旅行かばんを手に持ったりして、家の周りを一周する伝統があるのだとか。その理由は、「新年にたくさん旅ができるように」という願いを意味しているみたいです。場合によっては、全速力で走る人たちもいるそうで、速く走れた人ほど、次の年に旅行に出られる可能性が高まるといわれているのだとか。
別に旅がそれほど好きな人でなくても、周りから見ているだけで楽しめそうです。筋金入りの旅好きの読者は、日本でもまねしたいところですね。
チリでは大みそかにお墓に行く
写真はイメージです。(C) Natalia Ramirez Roman / Shutterstock.com
最後はチリの恒例行事を紹介します。日本でお墓参りといえば、年明けかお盆が時期としてイメージできます。チリの一部の地域では、夕暮れ時から、その年に亡くなった大切な人のお墓で大みそかを過ごすのだとか。
ただ、チリといっても南北に国土は続いています。例えばフィヨルドの海岸線が続く、南米大陸最南端に近いプンタ・アレナスと、ペルーと国境線を共にした北端のアリカでは、文化はかなり違うはず。
大みそかをお墓で過ごすという恒例行事は、特にチリの中部、首都のサンティアゴから南に200kmほど行ったタルカというまちで色濃く伝わっているのだとか。
単なるお墓参りでは終わらず、食べ物や飲み物を持ち込み、小さな火をたいて亡くなった人と大みそかを過ごすといいます。実はこの行事、それほど古い伝統があるわけではなく、1995年に地元の家族が亡くなった父親と大みそかに過ごすために、墓地のフェンスを乗り越えたところから始まるのだとか。
タルカの墓地は、大みそかは閉鎖しなければいけない法律があったのですが、大みそかになってまで亡き父と会いたいとフェンスを乗り超えた家族の行動に現地の当局が感動し、法律を変え、大みそかに墓参りをできるようにしたのだそうです。
以上、世界のユニークな大みそかの過ごし方を紹介しました。ほかにもスペイン、コロンビア、エクアドル、フィリピンなどでは、年越しそばの代わりに12粒のブドウを食べる習慣があります。
挙げればきりがないほど、本当にユニークな年末年始の過ごし方が世界にはあるとわかります。ただ一方で、世界の人たちから見たら、正月におせち料理を食べたり、たこ揚げをしたり、お年玉をあげたりする日本の年末年始の過ごし方も、十分にユニークに見えるかもしれません。
[参考]
※ 新年寒中水泳 – NLオランダ ※ New Year Swim – I amsterdam ※ コロンビアの年越し – メテジン 日本クラブ ※ Colombian New Year’s Traditions – IMPULSE ※ The people of the city of Talca, Chile spend the New Year’s Eve at the local graveyards – The Vintage News ※ Spongebob in Flames: The New Year’s Eve Effigy Burning in Ecuador – Atlas Obscura ※ Top 10 Strangest and Most Interesting New Year’s Traditions – Youtube ※ Stonehaven Fireballs Stonehaven’s way to greet the new year ※ 7 AWESOME COLOMBIAN-NEW-YEARS TRADITIONS YOU WANT TO ADOPT THIS YEAR! – Culture curious
[All photos by Shutterstock.com]
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
【東京ディズニーランド2024おすすめ土産はこれだ!】コスパ・可愛い・お
Mar 29th, 2024 | 山口彩
【2024年3月29日更新】東京ディズニーランドのおすすめ土産を現地ルポ。缶やパッケージが可愛いお菓子は? ばらまき土産用で一番コスパがいいのは? おいしいと評判のお土産は? 甘くないおすすめのフードは? 持ち歩きに便利なかさばらないお土産は? などなど、キャストさんに聞きながらまとめてみました! 実際に食べてみた実食ルポもあり。
【富士山の絶景スポット】太宰治の名作『カチカチ山』の舞台は「天上山」だっ
Mar 27th, 2024 | あやみ
太宰治の名作『カチカチ山』の舞台として知られる「天上山」は、展望台から富士山と河口湖の雄大な全景を拝めるスポットとして人気です。ロープウェイや絶景ブランコもあり、四季折々の大パノラマを楽しむこともできます。今回は、そんな天上山が舞台の『カチカチ山』のあらすじのほか、天上山はもちろん、河口湖の見どころについてもご紹介します。
神楽坂のAKHA AMA COFFEEから「いただく」ことの意味を考える
Mar 24th, 2024 | SaveurAmi
自分の口に入るものが、どのようにできたか考えてモノをいただくことは日常あまりないのではないでしょうか。コーヒー豆の生産から販売を一貫して行う「AKHA AMA COFFEE(アカアマコーヒー)」は、そんな食のルーツについて考える機会を与えてくれる場です。 本日はそんなAKHA AMA COFFEEがどのような背景のもとにでき、どういったお店なのかご紹介していきます。
【おしゃれで可愛いキャリーケースおすすめ5選】機能性もばっちり!国内・海
Mar 23rd, 2024 | TABIZINE編集部
旅行や出張に欠かせない相棒、スーツケースやキャリーケース。頻繁に買い替えるアイテムではないからこそ、いざ買うとなるとどれにするか悩みませんか? 機内持ち込みだけでなく飛行機への預け入れを想定すると、信頼できるブランドであることや、丈夫で使い勝手がよい点を重視したいところ。それでいておしゃれで可愛く、持っていてテンションが上がるようなデザインがいいですよね。そこで今回は、日本を代表する老舗スーツケースメーカーの「ACE(エース)」広報さんに、女性にぴったりなおしゃれで可愛いスーツケースのおすすめをお聞きしました。それぞれ機能性も抜群なものばかりなので、スーツケース選びの参考にしてみてくださいね。
【実録!日帰り韓国旅行で美容医療ツアー】アカスリ・アートメイク・皮膚科を
Mar 22nd, 2024 | もろたけいこ
コロナ禍も明け海外旅行熱が高まる中、注目を集めているのが韓国での美容医療。日本に比べて安価で美容医療を受けられることもあり、韓国旅行の行程に組まれたり、美容目的に渡韓する人も! そこで、忙しい人でも行ける「日帰りビューティーツアー」を自分で計画して実践してみました。順番さえ間違えなければアカスリ、眉毛のアートメイク、首のシワ取り、顔(リジュラン・ピコレーザー)とフルコースで体験可能! 人気の皮膚科やクリニック、日本語対応店情報も。さらに韓国の最新トレンドお土産や朝食・ランチ・ディナーのおすすめ店も紹介します。
【弁護士が回答】旅行を予約した旅行会社が出発前に倒産!支払ったお金は戻っ
Mar 22nd, 2024 | TABIZINE編集部
旅行中のトラブルは予期せぬ瞬間に楽しみを奪ってしまうもの。突然起こるさまざまな問題に対して、適切な対処法を知っておきたいですよね。経験豊富な弁護士が、あなたの旅を守る解決策をアドバイス。今回は、旅行会社の倒産に関するよくある質問「FAQ」に回答します。
【現地速報・史上最悪!】無料で楽しめる世の中の不快な音を集めた絶対行きた
Mar 21st, 2024 | わたなべ たい
2024年3月20日から5日間限定で原宿に誕生した「不快ミュージアム by nwm×NTT」。なんと! 世の中にある不快な音や嫌な音を集めたミュージアム。例えば、おならの音やゴキブリがうごめく音、黒板をひっかく音など、絶対聞きたくないけど興味をそそられる? 不快な音が大集合。オープン初日に、その不快音を思う存分体験してきました! いや~!!?
【実録体験談】新聞の占いは当たるのか?1ヶ月毎日占いを見て検証してみた
Mar 20th, 2024 | Kei
今も昔も根強い人気がある「占い」。12星座占いなどのなじみ深いものから、かつて流行した動物占いまで、あらゆるジャンルが存在します。時代と共にブームが去っていく中、昔から変わらず存在するのが新聞の占い。なぜ新聞の占いはなくならないのか? 実は的中率が高いのでは? 本記事では、新聞の占いがどれくらい当たるのか検証します。
【恋人の聖地】大切な人と歩きたい。香川県小豆島の人気観光スポット「エンジ
Mar 20th, 2024 | Yoko
【2024年3月20日更新】日本の数少ないオリーブオイルの生産地としても知られている、香川県小豆島。瀬戸内海では、淡路島に次いで2番目に大きい島です。そんな小豆島には、潮が引くと砂の道が現れて島がつながる不思議なスポットがあります。その名も「エンジェルロード」。潮見表で時間を確認して、ぜひエンジェルロード公園内を散策したいですね。
EVのハテナがワクワクに変わる!日産「STORY OF EV-ERYON
Mar 16th, 2024 | 小梅
旅先で感動の景色と巡り会えたことをきっかけに、環境問題について意識しはじめたことはありませんか? 地球のためにできることの一つとして、電気自動車(以下、EV)への乗り換えがあります。しかし、まだまだ未来の乗り物に感じる人も多いはず。日産自動車は、EVの理解促進を目指したWebムービー「STORY OF EV-ERYONE 電気自動車×満島真之介」を公開しました。日産グローバル本社ギャラリーで行われたWebムービー発表会に参加し、改めて「電気自動車」について考えてみました。