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「ほむら」と「ほのお」の違いは?話題の漢字の語源や由来4選

Posted by: 坂本正敬
掲載日: Jan 18th, 2021.

普段から何気なく使っている漢字、わざわざ意味や成り立ちについて振り返る時間もなく、日々は慌ただしく過ぎていきます。しかし、立ち止まって考えてみると、意外に知らない話が隠されているケースも少なくありません。そこで今回は、世間をにぎわす話題の漢字を取り上げ、その語源や由来を調べました。

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書道


炎(ほむら)

炎

最初は「炎」です。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が公開された始めたころ、筆者は知り合いの小学生と、映画の主題歌について会話を持ちました。その際に歌のタイトルを「ほのお」と言ったら、「ほむら、です」と突っ込まれました。その時点まで、「炎」の読みは「ほのお」であり、「ほむら」と読ませる訓読みがあると知りませんでした。

無知な筆者は造語かとも疑いましたが、各種の語源辞典を調べてみると、「炎」で「ほむら」と読ませる使い方が載っていました。漢字辞典『漢字源』(学研)で「炎」を調べると、「火+火」で盛んに燃えるさまを示す漢字だと紹介されています。

さらに別の語源辞典には、その「炎」が「群(むら)」になっているさまを、「炎(ほのお)の群(むら)」で「ほむら」と読むと書かれています。

炎はもともと盛んに燃えるさまを示す漢字なのですが、「ほむら」と読む場合は、さらに燃え盛る炎を意味するのですね。炎柱である煉獄杏寿郎が主要な役割を果たす映画の主題歌タイトルとして、ぴったりだと思いました。

鬼

鬼は昔から、日本人の暮らしに深く結びついてきた言葉です。例えば鬼の存在を信じた人たちが、鬼の暮らす場所に地名として鬼の名前を残しました。去年からは『鬼滅の刃』で再び、日本人に鬼の存在がぐっと近くなりましたね。

「おにの漢字を書いて」と言われたら、ほとんどの人が書けるのではないでしょうか?それくらいなじみの深い言葉ですし、漢字ではあると思うのですが、この言葉の語源を説明しろと言われたら、どうでしょうか?

まず、鬼の漢字をよく見てください。言われてみれば、大きな丸い頭をした生き物が、2本脚で左に向かって歩いている姿に見えてきませんか?

左に歩いていると解釈すれば、後ろ足の部分に「ム」という言葉も見えます。この「ム」は、足元が定かではない、漫画では人物の体がプルプルと震えている様子を描く役割を持つといいます。

つまり、鬼の見た目をそのまま漢字にした象形文字で、大きな丸い頭の亡霊が、足元のおぼつかない状態で歩いている様子を描いているのですね。

密

新型コロナウイルス感染症の影響で、日本漢字能力検定協会が発表する2020年の漢字は、「密」に決まりました。この「密」という漢字は、どのような成り立ちで生まれたのでしょうか?

まず、ウ冠(うかんむり)の部分は「家」を意味し、「必」の部分は真ん中で締め付けた棒を、周りからあて木でさらに固定する状態を意味するそう。ウ冠と併せて考えると、家の戸をすき間なくぎっちりと閉めた様子を描いているのですね。

一番下の「山」については、「深く閉ざされていて、人が容易に近付けない山」を意味するそうです。密教などで、修験者が山奥で修業するイメージは、この「山」からも来ているのですね。

「密」には「必」から生まれる密閉、密接、密集などの「ぴたりとくっつく」という意味があり、一方で「ウ」+「山」によって、山奥にある家の戸をぴたりと閉ざして外から見えない世界に隠れるといった意味もあるとわかります。

「3密」を避け、ステイホーム(山奥の家に閉じこもって隠れる)が求められた2020年にとって、まさにこれ以上ない漢字だったわけですね。

マスク

「コロナ禍」という言葉が世に出たとき、「コロナ禍の『禍』は、なんて読むの?」といった話題を耳にしました。答えは「コロナか」で、今では多くの人が知る言葉になりました。

先ほどの日本漢字能力検定協会が発表する、2020年の「今年の漢字」第2位にも選ばれていました。

この「禍」、もともとは一体どういう由来の漢字なのでしょうか。注目は「禍」の「ネ」ではない右のほうです。

「渦」などにも見かける文字ですが、『漢字源』によれば、「冎」は上下に並ぶ2本の骨の関節部分を意味するそう。「冎」のうち、上の骨に見られる穴に、下の骨を差し込むイメージです。

一方で左側の「ネ」は「しめす偏」と言われるように、「示」=祭壇を意味します。両者を組み合わせると、「神(祭壇)のたたりにより、思いがけない落とし穴にはまり込む」という意味になるのですね。

今でこそ、新型コロナウイルス感染症の原因はわかっていますが、100年前に流行したスペイン風邪のころは、「くわばら(桑原)、くわばら(桑原)」とお札に書き玄関飾って風邪を予防するなど、人智を超えた存在を、まだ少なくない人間が信じていたといいます。

こじつけて見れば、新型コロナウイルス感染症も神のたたりを受けて、思いがけない落とし穴に世界全体がはまり込んだと言えなくもありません。「コロナ禍」とは、よく考えられた言葉なのですね。

以上、このところ人々の話題に上りやすい漢字をチョイスし、語源や由来を紹介しました。全て話題の漢字ですから、何かの会話でさりげなく知識を披露すると、「すごーい」と褒めてもらえるかもしれませんよ。

【参考】
100年前のニュースに学ぶ。北陸3県の「スペイン風邪」365日。 – HOKUROKU
2020 年「今年の漢字®」第1位は 「密」~ 「密(ミツ/ひそかに)」が表す 2020 年とは ~ – 公益財団法人 日本漢字能力検定協会

[All photos by Shutterstock.com]

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。


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