新旧が美しく溶け合う、ノスタルジックな街並み
JR倉吉駅からバスに乗って約15分。バス停から少し歩くと、白い壁、黒い焼き杉板、赤い屋根瓦のコントラストが美しい土蔵が見えてきました。風流な土蔵が立ち並ぶこの町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、通称「白壁土蔵群」と呼ばれています。
倉吉は古くから交通の要所であり、室町時代には打吹城の城下町として形成され、江戸時代には陣屋町として栄えてきました。土産物店やカフェ、ギャラリーなどが入る蔵はかつて酒蔵や醤油蔵として使用されていたもの。古の趣を受け継ぎながら、モダンな空気が吹き込まれており、新旧が美しく調和する景観もまた魅力です。
往時に通用門として活用されていた石橋も今なお健在。緩やかな反りを持つ一枚石で作られていて、幅は狭いながらも独特の重厚感を醸しています。どのように運ばれ、川に架けられたのか、歴史に想いを馳せられずにはいられません。
「白壁土蔵群」は玉川沿いに土蔵が建ち並ぶ景観と、商家を主体とする景観に大きく分かれます。つまり、これらの土蔵は商家の裏側。それでは表側に行ってみましょう。
往時の繁栄を今に伝える商家
商家が軒を連ねる本町通り。道を挟むだけで雰囲気が一変するのも面白いところ。繊細な格子窓が印象的なこの建物は嘉永年間創業の老舗作り酒屋「元師酒造」。
江戸時代に陣屋町となった倉吉は、脱穀機「稲扱千歯(いなこきせんば)」や木綿織物「倉吉絣(くらよしがすり)」などの特産品で発展し、明治から大正時代にかけて商工業都市として栄えました。当時作られた建物も数多く残されており、往年の繁栄を色濃く伝えています。
レトロモダンな西洋建築
本町通りにはクラシカルな西洋建築も点在。こちらは日本産業貯蓄銀行倉吉支店として昭和6年(1931年)に建てられた、倉吉初の鉄筋コンクリート造りの建物。現在は弓道体験場として利用されています。
明治41年(1908年)建築の擬洋風建築が目を引く、旧国立第三銀行倉吉支店。旧街道「倉吉往来」に面した角地に佇み、周囲の古い商家とも美しく馴染んでいます。平成8年(1996年)に国の登録有形文化財に指定。
情緒あふれる空間で手作り豆腐に舌鼓
ランチは明治時代建築の町家をリノベーションした「夢倉(むそう)」へ。自家製豆腐や豆乳を使ったメニューを提供する和食料理店です。倉吉伝統の「はこた人形工房」も併設されており、製作の様子を見学することも可能。
温豆腐、揚げ出し豆腐などがセットになった「豆腐御前」(1,100円・税込)をいただくことに。作り立ての温豆腐は、やさしい甘みと風味が際立ち、大豆をストレートに感じる濃厚な味わいです。豆腐ハンバーグは豆腐と肉の旨味が見事に調和し、ご飯が進む至福の一品でした。
住所:鳥取県倉吉市魚町
電話:0858-47-1077
営業時間:10:00〜17:00
定休日:日曜日
URL:http://shirakabeclub.jp/publics/index/21/
街歩きの一休みにピッタリ!地産地消にこだわるパティスリー
食後のデザートは地元の人から絶大な支持を得ているという「ジョンヌ」にて。東京やパリで研鑽を積んだオーナーシェフが2017年にオープンしたパティスリーです。
ショーケースには近隣農園から届く卵を使ったプリンや、無農薬リンゴを用いたタルトタタンなど、地元産素材をふんだんに使用したスイーツがズラリと並びます。お土産に最適なマドレーヌやフィナンシェなどの焼き菓子も充実。
鳥取県大山町産の紅玉を使用した「りんごのショートケーキ」はりんごの甘酸っぱさと生クリームのコクが絶妙なハーモニーに。地元産・熊本産をミックスした小麦粉を用いた「シュークリーム」は、生地の風味が豊かでサクサクした食感。どちらも素材の良さが引き立った、贅沢な味わいです。湧水で淹れるというコーヒーはまろやかな口当たり。スイーツとの相性も抜群でした。
住所:鳥取県倉吉市新町1-2458
電話:0858-22-5233
営業時間:11:00~13:00、14:00~17:30
定休日:日・ 月・火曜日
URL:https://www.la-boutique-jaune.com
白黒のコントラストが美しい土蔵、情緒溢れる商家、土地の豊かさを知れる美食――。古の風情を今に伝える歴史地区で、往時を忍ぶ町歩きを楽しんでみてはいかがでしょうか。
住所:鳥取県倉吉市魚町、東仲町、西仲町、西町周辺(玉川沿い)
電話:0858-22-1200(倉吉白壁土蔵群観光案内所)
URL:https://www.kurayoshi-kankou.jp/shirakabe-walking/
[All photos by Nao]