
歴史と伝承を巡る街並み散策

山上川を挟んで、メイン通りの「行者さん通り」と山側の「寺前通り」に分かれ、10軒以上の旅館や民宿が軒を連ねる温泉街。大峯山の登山、観光、温泉に多くの人々が訪れています。洞川温泉バス停の近くの観光案内所にはパンフレットもたくさんあり、荷物も預かってくれるので(お預け料金300円)身軽に散策に出かけることができます。

行者宿として昔から多くの行者さんを引き受けてきた洞川の旅館。昔、わらじを脱ぎ、縁側で足を洗い、お部屋へと、一度に多くの方が早く利用できるように長い縁側が必要だったそうで、その名残が今も残っています。通りを歩いていると、旅館でなくとも縁側や軒先に地元の方々が集い、その懐かしさに時間の進みもゆっくりに感じます。

寺前通り沿いには、役行者により草創された日本遺産の「大峯山 龍泉寺」があります。修験道の根本道場で、八大龍王尊をお祀りする「八大龍王堂」の龍の彫刻と天井画は生きているかのような躍動感。

なで石の伝承、龍の口から今も絶えず湧き出る清水の伝説、その龍の口から流れる水をたたえた水行場、役行者と前鬼と後鬼の伝承など、境内は歴史と伝説にあふれています。秋は紅葉が見事で美しい景観に。

近くには、役小角が大峯山に入峰する際、守護と祈願成就のためお祀りしたと伝わる「洞川八幡宮」も。洞川の氏神様で、近くには樹齢千年を超える杉やヒノキの大木が生き、人々を見守っています。

稲荷神の祠も多く、寒の時期は小豆飯の三角むすびと油揚げを持って、夜、子どもたちが「センギョ、センギョ、オイナリサンノ、センギョ、センギョ」とお供えをしていたそうな(「センギョ」とは仏教の布施のこと)。
これら立て札を見ながら散策すると、神様をより身近に感じ、絵本の中に入り込んだような楽しい旅巡りに。
洞川地区の飲食店、カフェ、お土産
「五代松鍾乳洞」の下からから湧き出る「ごろごろ水」は、名水百選にも選ばれています。ミネラル分を適度に含んだ体に良いおいしい名水で淹れた「名水珈琲」をいただける喫茶店、名水で作る茶粥やお蕎麦の飲食店、手作りパン屋さん、自家狩猟の鹿料理の食堂など、温泉街を中心に飲食店やカフェは20軒以上。名水で仕込んだ自家製の豆腐は「名水とうふ」と呼ばれて有名です。

ごろごろ水を販売する「ごろごろショップ」(写真)や、名水と減農薬米を使い1枚ずつ手作りの米菓子「かき餅・きりこ」、吉野地酒「大峯山大吟醸」、奈良の素材で作った手作りコンフィチュール(ジャム)、採蜜にこだわった蜂蜜などを販売するお土産屋さんも多数。

特に、特産品の和漢胃腸薬「陀羅尼助(だらにすけ)」のお店は多く、定番土産です。

役行者がキハダの木の皮から作り、その製法を弟子の「後鬼」に伝授したことが「陀羅尼助」の起源だそう。
行者さん通りを離れて散策も
ちなみに、行者さん通りや寺前通りから離れた山のほう、大峯山(山上ヶ岳)や稲村ヶ岳に続く行者の道の先にも見どころが満載です。

修験道の修行のひとつ「蟷螂(とうろう)の窟」は、山伏が洞窟に座し本尊と対峙することで霊力を身につけ、仏として再生する胎内修行の場。聖法理源大師が大峯山再興の時、法力で大蛇を封じ込めたという伝説も・・・。

蟷螂の窟で身を清めた後、法螺貝を吹いて、地蔵尊に参って黒門を通り大峯参りに向かっていたそう。

洞川地区の東西の山に2つある「五代松鍾乳洞」と「面不動鍾乳洞」には、入口までモノレール(ドロッコ)で登って、地球の驚異に触れる神秘的な体験ができたり、

天川一長い吊橋「かりがね橋」からは、高さ50mの天空散歩を体験できたりします。

温泉街には、所々に洞川の伝承や昔話の立て札が所々に立てかけてあります。それらを見ながら、お店にも立ち寄って、地元の方々と交流しながら歴史と伝承巡りをしてみてはいかがでしょう。
洞川温泉街
住所:奈良県吉野郡天川村洞川222
(参考)
洞川温泉観光協会:http://www.dorogawaonsen.jp/
天川村公式サイト 観光ページ:http://www.vill.tenkawa.nara.jp/tourism/spot/benzaitensha/
[All photos by kurisencho]

kurisencho ライター
熊本県天草の凪いだ海と潮の香りの中で育ちました。東京に住むことで、新しいもの、昔からあるものの良さを再発見し、今まで見てきた世界が広がりました。デジタル化の中で生きるアナログの力を確信し、儚いけど美しい、人と風景の一瞬をとらえたいと思い写真を撮っています。
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