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新幹線駅が最も多い自治体はどこ?
新幹線の歴史を振り返ると、1964年(昭和39年)の東京五輪の開会式直前に、東京⇔新大阪間で最初の新幹線(東海道新幹線)が開業しています。新大阪⇔岡山間で山陽新幹線が1972年(昭和47年)に開業し、1975年(昭和50年)に追って博多までが全線開業します。
西へ西へと東京から延びた新幹線は、逆方面の東北や北にも延びていきます。大宮⇔盛岡(岩手)間で東北新幹線が1982年(昭和57年)に開業すると、3年後の1985年(昭和60年)には上野⇔大宮が開業し、1991年(平成3年)には東京⇔上野間の乗り入れが実現しました。東京から新潟を目指す新幹線も同じ時期につくられて、東北新幹線の開業と同じ1982年に大宮⇔新潟間で上越新幹線が開業します。
2002年(平成14年)になると、先ほどの東北新幹線は、盛岡⇔八戸(青森)間でも開業し、2010年(平成22年)には八戸⇔新青森間が開業します。八戸は、青森県東部の太平洋に面した三陸北端の重要な港町です。TABIZINEらしく観光目線で言えば、種差海岸や蕪島が見どころとして挙げられるでしょうか。
さらに新幹線は津軽海峡を越えます。北海道の新函館北斗と新青森の間に北海道新幹線が2016年(平成28年)に開業しました。
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盛岡⇔八戸(青森)・八戸⇔新青森間の東北新幹線と先ほどの北海道新幹線については、全国新幹線鉄道整備法に基づいて1973年(昭和48年)に国が整備計画を決定した整備新幹線と呼ばれる路線です。整備新幹線は、ほかにもあり、1997年(平成9年)に高崎⇔長野間、2015年(平成27年)に長野⇔金沢間で開業した北陸新幹線が関東の人にはなじみ深いはず。
2004年(平成16年)と2011年(平成23年)に段階的に開業した博多⇔鹿児島中央間の九州新幹線(鹿児島ルート)も同じです。
プラスして、東北にはミニ新幹線も走っています。これらの新幹線が通る路線上には当然駅があるわけで、全47の都道府県の中で、この新幹線駅を最もたくさん持っている自治体はどこになるのでしょうか?
解釈によって答えは2通り
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「答えは静岡県?」と思う人も多いはず。詳しく調べる前は筆者も何となくそう思っていました。
東海道新幹線が静岡の県土を東から西まで奇麗に横断しています。新幹線駅が静岡県には現に6カ所あって全国的に見てもトップクラスです。しかし日本一は静岡ではないのです。
日本一の答えは2通りの解釈があります。ミニ新幹線を新幹線と考えるか考えないかで、ある自治体が単独で1位になるか、別の自治体と同数で日本一に輝くかが変わってきます。
単独にせよ同数にせよナンバーワンに輝く自治体は、まず岩手県です。岩手の広さは北海道を除けば日本一です。南の一関から北の二戸(にのへ)までその広大な県土を南北に貫く形で東北新幹線が走っています。
- 一ノ関駅
- 水沢江刺駅
- 北上駅
- 新花巻駅
- 盛岡駅
- いわて沼宮内駅
- 二戸駅
東北新幹線の駅を南から順に並べてみました。
さらにミニ新幹線として「秋田新幹線」が盛岡(岩手県の県庁所在地)から奥羽山脈を越えた秋田方面へ走っています。
- 雫石駅
路線上にあるこの駅を数えるかどうかで意見が分かれます。
<主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道>(全国新幹線鉄道整備法より引用)
が新幹線と法律上では定義されています。しかし「秋田新幹線」は200km以上の速度で走りません。
新幹線と在来線を乗り換えなしで結ぶ「新在直通運転(直通線)」に関する記述が同法の附則6項第2号にありますし、JR東日本の公式ホームページにも「秋田新幹線の駅」として雫石駅が一覧に含まれています。
秋田新幹線が開業した時には、秋田行きの飛行機の乗客と機長、客室乗務員が、離陸直前の飛行機を降りて新幹線に乗り換え秋田へ行く、今思えばかなり際どいテレビコマーシャルとともに「秋田新幹線開業」をJR東日本はアピールしていました。
東日本大震災から50日目に全線復旧した秋田新幹線「こまち」を手を振って迎え入れるプロジェクト「4.29さくらこまち115おかえりなさいプロジェクト」の動画などをあらためて見ても、開業の節目で催される各種のイベントの記録を見ても、「秋田新幹線」が地元の人たちから当たり前に「新幹線」と認知され愛されている様子がわかります。
しかし「秋田新幹線(盛岡⇔秋田間)」をそもそも新幹線と考えない見方も一方で確かにあるようです。
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岩手県に並ぶ(あるいは追随する)数の新幹線駅を持つ自治体が新潟県です。新潟県には上越新幹線が開業しており、長野から金沢まで北陸新幹線が開業した際に新しい駅も増えました。
- 越後湯沢駅
- 浦佐駅
- 長岡駅
- 燕三条駅
- 新潟駅
の5駅が上越新幹線の路線にあり、
- 上越妙高駅
- 糸魚川駅
の2駅が北陸新幹線の路線にあります。合計7駅ですね。
越後湯沢駅の近所に新幹線「臨時駅」ガーラ湯沢駅もあります。越後湯沢⇔ガーラ湯沢間は、新幹線用の線路が敷かれていて新幹線のみが走ります。しかし低速でしか走れない(200km以上の速度で走れない)ので表向きは在来線扱いされています。
肝心の新潟県は県の公式ホームページ上で新幹線駅数を「7駅」とうたい、その数を日本一だとアピールしているので、新潟の7駅は確定と見ていいのでしょうか。
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そうなると岩手県の雫石駅をどう考えるかがやはりポイントのようです。
新幹線の定義や法律上の解釈も判断に困るポイントですが、1997年(平成9年)の「秋田新幹線」開業とともに開館した雫石銀河ステーション(雫石駅)が、新幹線駅っぽい威容を見せて「いない」事実も旅行者の判断を迷わせます(※あくまでも主観です。関係者の皆さんごめんなさい)。
どちらかと言えば在来線の駅といった印象で(※繰り返しますがあくまでも主観です)、そのホームに立派な体つきをした「秋田新幹線」のE6系車両が入ってくる光景には驚きを覚えました。本気を出して走っていない(だろう)「こまち」に「なんか窮屈そう」と感じた思い出も筆者にはあります。
なんであれ、新潟県も県土は広く全国の都道府県で第5位です。岩手や新潟のように広い県土に新幹線が走れば、新幹線駅が当然の結果として、いくつも誕生するのです(請願駅のようなケースもありますが)。
新型コロナウイルス感染症が終息し、新幹線に乗って再び自由に旅に出られる時代が来たら、さすがに全駅に降りるわけにもいきませんが、沿線を通過する時に駅の多さをカウントしてみると、道中のちょっとした遊びになるかもしれません。
[参考]
※ 『誰もが驚く新幹線の大疑問』(河出書房新社)
※ 新幹線でつながる日本!北へ南へ旅しよう! – ゼンリンメールマガジン
※ 『日本大百科全書』(小学館)
※ 『ブリタニカ国際大百科事典』(ブリタニカ・ジャパン)
※ 行政視察研修 雫石銀河ステーション 資料 – 雫石町役場 観光商工課
※ 復旧した秋田新幹線を笑顔で迎えよう Twitterで広がった記念プロジェクト – 日本経済新聞
※ E6系 こまち/はやぶさ/やまびこ/なすの – JR東日本
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