
(C) BGStock72 / Shutterstock.com
電子ピアノ業界に「革新的な新技術」を立て続けに持ち込んだ立役者

ピアノは習い事としていまも人気のようです。筆者の娘の1人もピアノを習っています。送迎のために教室までついていくと、たいていの場合、その前後の時間帯も別の生徒がレッスンを受けに来ています。多くの子どもたちがピアノを習っている様子がなんとなく伝わってきますよね。
レッスンでは毎回、自宅練習が宿題として課せられます。さすがに、グランドピアノは買えませんでしたが、自宅練習用のピアノとして、わが家でもカワイピアノの電子ピアノを買いました。今回は、この電子ピアノにおける世界一を紹介します。
ピアノのメーカーとして日本勢には有力な企業がいくつもあります。代表格はヤマハであり、先ほどのカワイ、今回の主題であるローランド(Roland)もそうです。
この文章を書くまで、てっきりローランドは海外メーカーかと思っていました。しかし、このローランドこそ、電子ピアノ業界に革新的な新技術を立て続けに持ち込んだ発展の立役者なのだとか。
鍵盤タッチで強弱を表現できるように

残念ながら、電子ピアノそのものの発明は日本ではありません。何をもって電子ピアノと称するかで始まりが変わってくるようですが、弦振動を生かした従来のアコースティックピアノがあり、その弦振動を電気的に増幅して遠くまで響かせる電気ピアノが生まれ、弦を持たず電子音の合成で人工的に音をつくる電子ピアノが生まれました。
例えば、最初期の電子ピアノといわれる、アメリカ生まれの「RMIエレクトラピアノ」は、1960年代にリリースされていますが、日本で初めてローランドが電子ピアノ(純電子発振式ピアノ)「EP-10」を出したのは1973年(昭和48年)で、少し後のことです。
しかし、このころの電子ピアノは国内外問わず、アコースティックの生ピアノのように、鍵盤を軽く押せば音が弱く、強く押せば音が強く出るといった構造になっていませんでした。
その電子ピアノに1974年(昭和49年)、世界初の革新をもたらしたメーカーがローランドなのです。タッチ・センス付き鍵盤が同年に発表され、鍵盤タッチで強弱を表現できるようになったのですね。
<電子ピアノの黎明期には、鍵盤で強弱が付けられるというのは大変画期的な技術でした>(Rolandの公式サイトより引用)
創業者の梯郁太郎さんは「電子楽器の父」に

(C) Alhim / Shutterstock.com
とはいえ、それらの電子ピアノも、まだまだ本物のピアノ(生ピアノ)のような音が出せない状況が続きました。
このあたりの歴史について書かれた毎日新聞経済部『増補版 日本の技術は世界一』(新潮文庫)によると、当時の電子ピアノは生ピアノの音を録音し、IC(集積回路)に取り込んで、その音源を楽器として出していたそうです。
しかし、1986年(昭和61年)にローランドが再び、世界初の技術(デジタル合成方式)を電子ピアノに持ち込みます。アコースティックのグランド・ピアノに迫るリアルな音を出せる電子ステージ・ピアノ「RD-1000」を発表し、高根の花だったピアノの普及を強力に後押ししたのだとか。
「EP-10」や「RD-1000」の開発にとどまらず、各メーカーの電子楽器間で演奏データのやり取りを可能にする世界標準規格「MIDI」を整備するなど、同社・創業者の梯(かけはし)郁太郎さんは音楽業界に多大な貢献をしました。
もともと梯さんは、大阪市内で電気店を営んでいた人。教会から1台の外国製オルガンの修理を頼まれ、「自分でもつくれるんじゃないか」と電子楽器の世界に入り込んでいったそうです。後に「電子楽器の父」と呼ばれるようになり、米ハリウッドの音楽界における殿堂「Hollywood’s RockWalk」にも手形を残すほどになりました。
こうして、現在のローランドは、世界トップレベルのメーカーとして知られ、多くのプロミュージシャンにも愛用されています。
少しは外出の自由が戻ってきたとはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響で、まだまだ家での過ごし方に工夫が求められる時代は続きそうです。
子どものころにピアノを習っていた人、あるいは大人になってからピアノを始めてみたい人はこの際、ローランドの電子ピアノを買って、生ピアノ同様の音色を楽しみながら、練習を開始してみてはいかがでしょうか?
電子ピアノは騒音も心配ありません。家での過ごし方が劇的に豊かになるかもしれませんね。
[参考]
※ 電子ピアノとは – Roland
※ 世界大百科事典 – 平凡社
※ 理想のピアノを求めて – Roland
※ 電子ピアノって何だろう – 千葉経済短大ダイアリー
※ RMI Keyboards [Retrozone] – SOS
※ 電子ピアノ RD-1000 – 国立科学博物館 産業技術史資料情報センター
※ ローランド株式会社 創業者 梯 郁太郎の退任について – Roland
※ 毎日新聞経済部『増補版 日本の技術は世界一』(新潮文庫)
【特集】世界に誇れる「1番」が日本にはたくさん!貴重な職人技や意外な絶景も

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の媒体に日本語と英語で執筆を行う。北陸3県を舞台にしたウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長も務める。
https://hokuroku.media/
【地図記号クイズ】チクチク&ギザギザな葉っぱがヒント!「〇〇樹林」
May 26th, 2022 | TABIZINE編集部
旅好きの皆さんの中には、「1日中ずっと地図を眺めていられる」なんて言う人も多いかもしれません。遠い地の景色を思い描きながらの卓上トリップも素敵ですよね! そこでここでは、そんな地図好きさんのために「地図記号クイズ」を連載でお届けします。2万5千分の1の地形図には、全部で134種類の地図記号が設定されているそう。よく知っている記号から、「はじめて見たかも」なレア記号もあるかもしれませんね!
【実は日本が世界一】戦中に一番乗りの「海底鉄道トンネル」は未だ現役だった
May 25th, 2022 | 坂本正敬
意外な世界一を取り上げるTABIZINEの連載。今回は、世界で一番乗りに日本でつくられた、意外な土木遺産を紹介します。
【地図記号クイズ】小中学生が考えたデザインから作られた「○○ホーム」
May 25th, 2022 | TABIZINE編集部
旅好きの皆さんの中には、「1日中ずっと地図を眺めていられる」なんて言う人も多いかもしれません。遠い地の景色を思い描きながらの卓上トリップも素敵ですよね! そこでここでは、そんな地図好きさんのために「地図記号クイズ」を連載でお届けします。2万5千分の1の地形図には、全部で134種類の地図記号が設定されているそう。よく知っている記号から、「はじめて見たかも」なレア記号もあるかもしれませんね!
【日本一の○○連載】定期便復活が期待される「礼文島の最北端施設」とは?
May 24th, 2022 | 坂本正敬
意外な日本一を紹介するTABIZINEの連載。今回は、旅行にも大きく関係する日本最北端の空港の話です。
【地図記号クイズ】竹林にそっくり?パンダのごはんとしてもお馴染み「〇地」
May 23rd, 2022 | TABIZINE編集部
旅好きの皆さんの中には、「1日中ずっと地図を眺めていられる」なんて言う人も多いかもしれません。遠い地の景色を思い描きながらの卓上トリップも素敵ですよね! そこでここでは、そんな地図好きさんのために「地図記号クイズ」を連載でお届けします。2万5千分の1の地形図には、全部で134種類の地図記号が設定されているそう。よく知っている記号から、「はじめて見たかも」なレア記号もあるかもしれませんね!
【日本最古を探せ】武田信玄や徳川家康も訪れた!?山梨の秘湯「慶雲館」
May 22nd, 2022 | 内野 チエ
「日本最古」のスポットは史跡・名勝だけでなく、日常の意外なところにも潜んでいるものです。ホテルや遊園地、喫茶店など、数百年の時を重ねながら現在まで脈々と続く、歴史ある場所やコト、モノを発掘してみました。今回は日本最古の温泉宿「慶雲館」を紹介します。
知らないと損をする英会話術127「時代劇、朝ドラ、ネット配信」エンタメ関
May 22nd, 2022 | フレッチャー愛
ネット配信が普及している今、海外の人と好きなテレビ(ネット)番組について話すのも楽しいですよね。そこで今回は「朝ドラにはまっている」「時代劇が好き」など、テレビ番組やエンタメについての話題で使えるワードを解説します!
【地図記号クイズ】シラカバやケヤキなど幅の広い葉が特徴「〇〇樹林」
May 19th, 2022 | TABIZINE編集部
旅好きの皆さんの中には、「1日中ずっと地図を眺めていられる」なんて言う人も多いかもしれません。遠い地の景色を思い描きながらの卓上トリップも素敵ですよね! そこでここでは、そんな地図好きさんのために「地図記号クイズ」を連載でお届けします。2万5千分の1の地形図には、全部で134種類の地図記号が設定されているそう。よく知っている記号から、「はじめて見たかも」なレア記号もあるかもしれませんね!
【実は日本が世界一】世界最大のプラネタリウムは「名古屋」の街中にあった!
May 18th, 2022 | 坂本正敬
日本にある世界一をいろいろと取り上げてきました。今回は、名古屋にある世界一です。「名古屋=世界一」と言われて何を連想しますか? 知っている人はきっと知っている。でも、知らない人は知っておきたい、意外な世界一を紹介します。
【地図記号クイズ】全国に約2万4,000カ所!カタカナが転じた「〇〇局」
May 18th, 2022 | TABIZINE編集部
旅好きの皆さんの中には、「1日中ずっと地図を眺めていられる」なんて言う人も多いかもしれません。遠い地の景色を思い描きながらの卓上トリップも素敵ですよね! そこでここでは、そんな地図好きさんのために「地図記号クイズ」を連載でお届けします。2万5千分の1の地形図には、全部で134種類の地図記号が設定されているそう。よく知っている記号から、「はじめて見たかも」なレア記号もあるかもしれませんね!