魚群探知機で世界シェアNo.1
魚群探知機ってありますよね。岩波書店の『広辞苑』を読むと、
<超音波の反射から、魚の存否・種類・密度、海底の地形などを知る装置> (『広辞苑』より引用)
と書かれています。漁船に乗った経験のない人でも、魚群探知機を見つめる漁師の姿をテレビなどで見た経験はあるのではないでしょうか。
そこで質問ですが、魚群探知機のトップメーカーはどこだと思いますか? 魚群探知機が何かをなんとなく知っていても、そのトップメーカーがどこだか答えられる人は、ほとんどいないのではないかと思います。
今回は、この魚群探知機を世界で最初(1948年)に実用化し、業務用の魚群探知機の世界シェアでトップを誇る「古野電気」 を紹介します。
「魚群探知機」でイワシの大群を突き止める
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古野電気(旧・古野電気商会)はもともと、長崎県の島原半島(南島原市)で創業した企業で、漁船の電気工事を請け負っていたのだとか。
創業者の古野清孝さんは戦中から戦後にかけて、魚群探知機のアイデアを思いつき、実地試験を繰り返して開発にこぎつけます。
戦後の1948年(昭和23年)、改良型の魚群探知機を乗せた漁船でイワシの大群を突き止め 、その後の悪戦苦闘を経て、漁獲高が最低の漁船に記録的な大量を1949年(昭和24年)にもたらし、一躍その名を地元の浜に知らしめます。
1955年(昭和年)には古野電気を設立、1960年(昭和35年)には欧米11カ国の視察を行い、1964年(昭和39年)には長崎県から兵庫県の西宮市に本社を移します。その間に、魚群探知機だけでなく、漁業用の小型無線機や漁船向け小型レーダーの開発を通じて存在感を高めていきました。
続けて、ソナー・レーダー・気象観測システム・地盤変位計測システム・ETC(自動料金収受システム)・無線LAN(機内情報通信網)・魚群探知機の技術を応用した骨密度測定機など、事業の領域を拡大しながら販売拠点を海外にも増やしました。その数は80カ国以上に達します。
世界的な総合船舶電子機器メーカーとなった「FURUNO」は、商船向けの市場で世界シェア15%、漁業向けの市場で世界シェア49% を誇るとされています(2019年の情報)。世界トップのものすごい会社なのですね。
戦艦大和の発見にも生かされた
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これだけのインパクトを世界で残しながら、古野電気(またはFURUNO)の名前は、日本では一般的に広まっていないようです。
地元・兵庫県西宮市のプロバスケットボールチームのオフィシャルメインパートナーになるなど、地域密着で地元への貢献も繰り返してはいながら、扱う製品の多くが陸上で生活する人たちの暮らしと直結しているように見えないからでしょうか。
古野電気の事業内容が地元の人にも理解されていないことに、古野電気は問題意識を感じているのだとか。そこで、近年さまざまな広告キャンペーンを仕掛け、企業のリブランディングに励んでいるようです。
幅広い事業を細かく見ていけば、安全で楽しい旅や、旅先での歴史体験と無縁ではなさそうな分野でも活躍しています。
例えば、魚群探知機の技術は、沖縄戦に向かって出撃する途中で沈んだ戦艦・大和の発見にも生かされた と『日本の技術は世界一』(新潮社)や古野電気の公式サイトにも書かれています。
関西のみならず、関東の人も、あらためて古野電気の世界的な活躍に目を向けてみると、旅先での何気ない瞬間の見え方がちょっとだけ深くなるかもしれませんね。
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[参考]
※ 「インチキ」覆した魚群探知機 古野電気、世界初の心意気 – 日本経済新聞社
※ 「まさか、そうとは」 地元愛あふれるグローバル企業が放った広告 心にしみる意外な真意 – ラジオ関西トピックス ラジトピ
※ 2019年2月期 第3四半期 決算説明資料 – 古野電気株式会社
※ 毎日新聞経済部『日本の技術は世界一』(新潮社)
※ フルノの歩み
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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