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性器の形をした象徴的な造形物

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男性器や女性器を祈りの対象とした祭りが全国には数多く見られます。例えば、福井県の「八朔祭り」、三重県の「ごんぼ祭り」、新潟県の「ほだれ祭」、愛知県の「豊年祭」、神奈川県の「かなまら祭」、徳島県の「姫神祭」など、さまざまですね。
性器や性器の形をした象徴的な造形物をみこしに担いだりして、多産や五穀豊穣などを願う祭りです。
欧米人旅行者が写真を撮っては、「日本はエキセントリックでミステリアスな国だ」と語る際の「証拠写真」のようにも扱われていますが、このような奇祭はどうして全国各地にあるのでしょうか。
農業文化が育った土地では当たり前!?

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そもそも、性器を象徴的に(あるいはリアルに)再現した造形物を崇拝する人の振る舞いを、性器崇拝・生殖器崇拝と呼ぶそうです。
<生殖器(性器)に対する崇拝で、生殖器のもつ神秘的な力、とくに生殖器により象徴される生産力、豊穣(ほうじょう)力に対する信仰>(小学館『日本大百科全書』より引用)
日本だけの独自の文化ではなく、一定の農業文化が育った土地では当たり前に見られる信仰の姿なのだとか。
例えば、インド、ネパールなどのヒンドゥー教が盛んな土地でも性器崇拝が盛んで、チベット、中国など、仏教系の性崇拝物が日本にやってきたルート上でも見られると言います。
エジプト、ギリシアなどの古代文明でも見られ、アフリカでも見られるみたいですね。
日本の場合は、仏教系の性器崇拝に加え、神道系の流れもあるらしく、いずれにせよ五穀豊穣(ほうじょう)の儀礼は世界各地で性と密接に関係してきたと知られています。
田んぼでの性行為が疑似的な豊年祭りへ

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ではどうして人は、性と豊かな実りを結び付けて考えてきたのでしょうか。例えば、日本の神道系の性器崇拝の場合、稲の実りを祈って農夫婦が田で性行為し、田の神を刺激した習慣がかつてあったといいます。
現代人にとってはびっくりな話ではありますが、疑似的な形としてそれが次第に豊年祭りにとって代わります。最終的には、祭に用いられる生殖器や類似物がご神体になった流れがあるみたいですね。

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ヒトの精子が発見されたのは1677年(延宝5年)です。受精卵の由来が明らかにされた時期は1876年(明治9年)。
それまで人類は、どうして子どもが生まれるのか、科学的には説明できなかったみたいです。しかし、性行為で不可欠の生殖器が生命の誕生に関係する器官だと人間は直感し、神聖視する感覚を同時に持ったのだとか。
その神聖視と、土壌・農作業が密接に絡み合い、田んぼでの行為、疑似的な豊年祭り、生殖器のご神体へと移り変わって、現代に受け継がれているのですね。
以上、全国で見られる生殖器崇拝の奇祭について紹介しました。
生殖器をあがめる奇祭=エキセントリックな祭りと面白がるだけでなく、その背後につながる人間の農耕の歴史に思いをはせると、見え方が深まってくるはずです。
皆さんの暮らす街の近くにもこの手の奇祭が残っていないか、調べてみると面白いかもしれませんよ。
[参考]
※ ブリタニカ国際大百科事典
※ 『日本大百科全書』(小学館)
※ 生命科学からみた生殖器崇拝 – 法政大学学術機関リポジトリ
※ 『世界大百科事典』(平凡社)
※ エチエチ過ぎる!全国の性の奇祭13選【会社で見ちゃダメ!】 – オマツリ ジャパン

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の媒体に日本語と英語で執筆を行う。北陸3県を舞台にしたウェブメディア『HOKUROKU』の創刊編集長も務める。
https://hokuroku.media/
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