世界企業番付トップ10で見ると？
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有名企業といっても、世界にはいろいろな意味で有名企業がたくさんあります。今回は米フォーチュン誌が毎年発表する世界の企業番付「フォーチュン・グローバル500」を参考に、番付で上位に入る企業を有名企業と定義してみました。
まずは同番付で、最も収入（revenue）が大きかった世界の企業トップ10の中に、本社機能を首都以外に持つ会社がどれだけ含まれているか、確かめてみます。
- ウォルマート（Walmart）・・・アメリカ、ベントンビル（アーカンソー州）
- サウジアラムコ（Saudi Aramco）・・・サウジアラビア、ダーラン（東部州）
- フォルクスワーゲン（Volkswagen）・・・ドイツ、ヴォルフスブルク（ニーダーザクセン州）
- アマゾンドットコム（Amazon.com）・・・アメリカ、シアトル（ワシントン州）
- トヨタ自動車（Toyota Motor）・・・日本、豊田市（愛知県）
10社中、5社が首都以外に本社機能を置いているとわかります。
（ちなみに残りの5社は、中国の北京にある企業が3社、オランダのハーグ、イギリスのロンドンにある企業です。どれもエネルギーや石油企業で、国策に関係する企業という特徴がありました）
トップ10の中でも第1位に輝いたウォルマート（スーパーマーケット）を持つアメリカは、世界の企業番付500の中に、なんと121社（その数は世界で中国に次いで2位）を送り込んでいます。
121社から得られる収入（revenue）の合計を都市別に見ると、経済の中心地であるニューヨークとその周辺が1番多い（1兆7,750億米ドル）ものの、第2位のダラスとその周辺が9,962億米ドル、シカゴとその周辺が8,422億米ドル、サンノゼとその周辺が8,109億米ドル、シアトルとその周辺が6,696億米ドルなど、全米各地に拠点がいくつも林立している様子がわかります。
ダラスとシカゴを足せばニューヨークに追いつけるくらいですから、アメリカの場合は、首都はおろか、経済の中心地であるニューヨークにすら、大企業が極端に一極集中している状況はないといえます。
テキサス州ダラスのまち並み
一方、世界企業番付に2020年版では53社、2019年版では52社を送り込んでいる日本の企業リストを見ると、約2/3が東京に本社を構えていると分かります。
2019年版で500社に入った日本の企業52社の収入（revenue）を合計してみると、3兆1,291億米ドル程度です。そのうち、東京に本社を置く企業の収入を合計すると2兆550億米ドルです。稼げる企業が東京に極端に集中している様子がわかります。
さらにアメリカとの違いは、東京以外の大都市、例えば大阪や愛知県（豊田市、名古屋市、刈谷市）に存在する大企業の数が、極端に少ないという現状があります。
例えばフォーチュン・グローバル500に入った、大阪市に本社を置く大企業の収入合計は3,796億米ドル、愛知県（豊田市、名古屋市、刈谷市）に本社を置く企業の収入合計は4,458億米ドルです。
大阪市と愛知県を足しても、東京にははるかに及びません。経済という面で考えると、日本は東京の一極集中が確実に存在しているのですね。
業界を代表する企業で言えば？
イリノイ州シカゴのまち並み
フォーブス・グローバル500の中では、業界別にナンバーワンの世界的な企業も明らかにされています。その中から、特に認知度の高い（と思われる）企業をピックアップし、首都以外に本社を置く企業を並べてみました。
- ボーイング（Boeing）・・・アメリカ、シカゴ（イリノイ州）
- ネスレ（Nestlé）・・・スイス、ヴヴェイ（ヴォー州）
- プロクター・アンド・ギャンブル（P&G）・・・アメリカ、シンシナティ（オハイオ州）
- ゼネラル・エレクトリック（GE）・・・アメリカ、ボストン（マサチューセッツ州）
- ディズニー（Disney）・・・アメリカ、バーバンク（カリフォルニア州）
- アップル（Apple）・・・アメリカ、クパチーノ（カリフォルニア州）
- エー・ティー・アンド・ティー（AT&T）・・・アメリカ、ダラス（テキサス州）
ネスレやP&Gは暮らしに密着するメーカーですので、日本人にもなじみ深いですよね。ディズニー、アップルは言うまでもなく、ボーイングは飛行機のメーカー、GEやAT&Tは電子機器や情報通信の会社です。
ちなみにネスレの本社があるヴヴェイは知名度がとても低いと思いますが、フランスとの国境にあるレマン湖畔にある小さなまちで、地理的にはローザンヌとモントルーの間にあります。
スイスのヴヴェイにあるネスレ本社 (C) Roman Babakin / Shutterstock.com
ちょうどこうして文章を書いている最中にも、部屋の窓の外をボーイングの飛行機が着陸のために高度を下げて横切っていきました。
世界の暮らしに大きな影響を与える大企業は、首都や経済の中心地ばかりあるわけではないとわかります。
少し前に総合人材サービス大手のパソナグループが淡路島（兵庫県）に移転するというニュースが報じられました。
このタイミングで他にも本社を東京とその周辺以外に移す大企業が出てきたら、経済的な効果は専門家でないのでわかりませんが、少なくとも「右へならえ」の日本で決断したその勇気に対して、拍手でも送ったほうがいいのかもしれませんね。
［参考］
※ Fortune 500 companies list: 1 out of 3 are located in just six major cities – USA TODAY
※ Visualize The Fortune 500 – FORTUNE
※ Global 500 – FORTUNE
※ Fortune Global 500 – Wikipedia
※ List of largest Japanese companies – Wikipedia
※ アメリカ合衆国（United States of America）基礎データ – 外務省
［All photos by Shutterstock］
PROFILE
Masayoshi Sakamoto 翻訳家／ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書（TABIZINEライターとの共著）に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸３県のWebマガジン〈HOKUROKU〉（https://hokuroku.media/）創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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