ザ・リッツ・カールトンと帝国ホテルは双璧をなすブランド
※ 写真はイメージです。
TABIZINEではかつて、2015年度「JCSI」調査結果を参考に、「日本最大級ランキング【2】みんなが満足した人気のシティホテルはどこ?」という記事を出しました。
その内容を振り返ると、2015年度に多くの利用者が満足したシティホテルは、次のようになっていました。
【人気のシティホテルランキング】
- 1位・・・帝国ホテル(80.9)
- 2位・・・日航ホテル(77.1)
- 2位・・・リーガロイヤルホテル(77.1)
- 4位・・・ホテルオークラ(76.5)
- 5位・・・ANAホテル(75.6)
(カッコ内は100点満点における顧客満足スコア)
そもそもシティホテルとは、和製英語で、
<都市の中心部にあるホテル>(小学館『大辞泉』より引用)
<都市部にある大きなホテル>(岩波書店『広辞苑』より引用)
といった説明が辞書には書かれています。比較的大きなまちのさらに中心部にある大きなホテルですから、維持管理のための経費も高く、必然的に高額=高級ブランドのイメージがあるホテルになります。
TABIZINEの記事では、顧客満足度調査の世界的な専門機関であるJ.Dパワーが発表した「2015年日本ホテル宿泊客満足度調査」のランキングも紹介しました。外資系ホテルを含めた1泊35,000円以上の部門で上位に輝いたブランドは、次のようなランキングとなっていました。
- 1位・・・ザ・リッツ・カールトン(786)
- 2位・・・帝国ホテル(778)
- 3位・・・ウェスティン(715)
- 4位・・・ホテル オークラ(711)
- 5位・・・ハイアットリージェンシー(707)
- (カッコ内は満足度のポイント。1000ポイント満点)
ザ・リッツ・カールトンは国内において帝国ホテルと双璧をなすブランドですが、これらの評価は2020年度にはどのような変化があったのでしょうか。
顧客満足スコアの算出の仕方
※ 写真はイメージです。
2020年度「JCSI」第1回調査では、27,107人からインターネットを通じて得た回答を基に、シティホテルのランキングをつくっています。
調査においては、ANA クラウンプラザホテル、京王プラザホテル、帝国ホテル、プリンスホテル、ホテルオークラ、ホテル日航、ホテルニューオータニ、リーガロイヤルホテルが、比較対象の企業となっています。
ザ・リッツ・カールトンなどは選考の対象外だと頭に入れておきたいですが、回答者の資格としては、2年以内に2回以上、対象のホテルを利用した人、および1 年以内に利用し、かつ発生した料金を見聞きした人とされています。
具体的な質問内容としては、
「過去1年間の利用経験を踏まえて、○○ホテルにどの程度満足していますか?」
「過去1年を振り返って、○○ホテルを利用したことは、あなたにとって良い選択だったと思いますか?」
「○○ホテルを利用することは、あなたの生活を豊かにすることに、どの程度役立っていると思いますか?」
などが問われます。この質問に対する回答を点数化し、100点満点で各ホテルの顧客満足スコアが算出されます。
では、同調査で、顧客満足スコアの高いシティーホテルはどこになったのでしょうか?
サービスアパートメントの予約を開始した話題のホテルが第1位
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順位は以下の通りでした。
【人気のシティホテルランキング】
- 1位・・・帝国ホテル(84.6)
- 2位・・・ANAクラウンプラザホテル(79.8)
- 3位・・・ホテルニューオータニ(79.7)
- 3位・・・リーガロイヤルホテル(79.7)
- (カッコ内は100点満点における顧客満足スコア)
最近、サービスアパートメント「帝国ホテル サービスアパートメント」の予約を開始して業界を驚かせた帝国ホテルが、変わらず第1位に輝いています。過去5年の結果を振り返っても、同調査において帝国ホテルはずっと第1位を維持してきました。
2位のANAクラウンプラザホテルは、1年前の調査(第4位)から大躍進を遂げ、ホテルニューオータニ、リーガロイヤルホテルを追い抜いて、第2位に浮上しています。
国内で言えば、北海道や新潟、富山、金沢、成田、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、米子、広島、宇部、松山、福岡、長崎、熊本などに展開しています。
どこもANA(全日本空輸)の飛行機が就航している都市にあるホテルで、最終便のフライト後に、空港からタクシーに乗って、ANAクラウンプラザホテルに宿泊するANAのフライトアテンダントの姿を目撃できます。
そのせいか、旅のにおいが余計に強い印象があって、筋金入りの旅人が多いTABIZINE読者からしても、気に入る可能性が高そうですね。
日本の「迎賓館」の歴史とプライドが現在の圧倒的な評価に
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あらためて帝国ホテルが第1位を守ったとわかりましたが、一体なぜここまで評価されるのでしょうか。その理由については、TABIZINEがホテル業界の同業者に取材した「9年連続顧客満足度No.1の帝国ホテル。何がすごいか業界人に聞いてみた」が参考になります。
この記事は、筆者が書いた記事でもありますが、取材時に話を聞いたホテル関係者たちは、
「帝国ホテルは日本で最初の迎賓館であり、日本で最初のグランドホテルだからすごいのだと思います。帝国ホテルの名前を背負って働くのとそうでないのでは、従業員のモチベーションも緊張感も変わると思います。そのモチベーションや緊張感がいざというとき、誰も見ていない一人のときに、ちょっとした違いを生み、その違いの積み重ねが結局、ホテル全体で大きな違いになって出てくるのだと思います」(鉄道会社系ホテル勤務)
といった言葉を口々に語ってくれました。
筆者は上述の記事を執筆する際、『帝国ホテル百年史』(帝国ホテル)という1,012ページの社史も読みました。社史によれば、帝国ホテルで働く=「民間の外務省」として国際交流の舞台を運営するといった意味になるらしく、その構図は明治23年(1890年)に創業してから、ずっと続いているようです。
いわば日本の「迎賓館」であり、ナショナルホテルとしてやってきた歴史とプライドが、従業員の行動を律し、高めて、現在の圧倒的な評価を生んでいるのですね。
その帝国ホテルがこのたび、サービスアパートメント「帝国ホテル サービスアパートメント」を開始しました。平たく言えば、帝国ホテルに住めるチャンスが、誰にでも開放されたわけです。この英断が今後の評価にどう左右するのか、引き続き旅を愛する日本人としては、注目していきたいですね。
[参考]
2020年度JCSI(日本版顧客満足度指数) 第 1 回調査結果発表 – 公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会
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